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2024年5月20日付 2980号

コスト転嫁進む一方で規模間格差鮮明に 22年度決算版経営分析 全ト協

 全日本トラック協会が15日に公表した2021年10月~23年8月を対象期間とする22年度決算版経営分析では、経済活動の正常化によりコスト上昇分の運賃転嫁が進み、営業収益(貨物運送事業収入)が21年度比4.4%増加、営業損益率は0.0%で0.9ポイント改善、経常損益率も1.8%となり1.2ポイント改善している。

 一方で、51~100台保有する事業者では営業損益率が1.2%、101台以上では2.1%と業績回復基調がみられたが、20台以下ではマイナス圏を脱することができず、事業規模による運賃転嫁の進捗(しんちょく)率格差が浮き彫りとなった。

 全国2532者(有効数)から提出された22年度決算の「一般貨物自動車運送事業報告書」について決算内容を分析したところ、営業収益は1者平均2億5383万円で、前年度に比べ4.4%増加した。

 貨物運送事業における黒字事業者の割合は営業損益段階では42%、経常損益段階では57%となっているが、10台以下では64%が営業赤字、51%が経常赤字となっている。

 車両規模別分析では、101台以上の営業損益率が2.1%、51~100台が1.2%、21~50台が0.0%となっている一方、11~20台ではマイナス1.2%、10台以下ではマイナス3.6%とマイナス圏に沈んでいる。

 地域別分析では、営業損益率で北海道、関東、中部以外がマイナスとなっている。

24年度3月期は新中計に向けた布石に 髙田社長が決算会見で表明 トナミHD

髙田社長

 トナミホールディングスの髙田和夫社長は14日、富山県高岡市の同本社で開催した2024年3月期連結決算説明会で、微増収減益に終わった連結決算の内容について「24年度からの3ヵ年を期間とする新中期経営計画に向けた布石は打てた」とし、ある程度評価できるとの考えを示した。

 24年3月期連結決算は、平均単価が小口貨物で前期比2.0%増、貸切で2.1%増とそれぞれ上昇。

 反面、需要の落ち込みから、輸送量は小口で2.4%減、貸切で6.8%減となり、期中にグループ化したウインローダー、丸嶋運送、山一運輸倉庫、山昭運輸の4社を加えても、売上高は1億5200万円(0.1%)の微増収にとどまった。

 費用面では業務効率化や外注業務内製化などを図ったものの、外注費や燃油費の高騰、人件費の増加が重なったため、営業利益は16億600万円(21.8%)減少した。

 髙田社長は「コロナ禍収束で経済が活性化すると見ていたが、物量は逆に落ち込んだ。業績面で結果は出なかったものの、4社のM&Aやトナミ運輸の尼崎・あきる野の2支店開設など、新中計に向けた布石は打てた」と語り、ある程度評価できるとの考えを示した。前中計についても「1、2年目は最高益を更新できており、結果は残せた」と総括した。

 記事全文は電子版から。

今週掲載トピック一覧

  • ☆NX総研など3社、経産省委託事業で「物流施設の自動化に資するカゴ車のモデルケース創出」共同実証を実施
    ☆NXHD、デジタルフォワーディングサービス「e―NX Quote」の利用可能範囲を47ヵ国・地域に拡大
    ☆日本郵政が現中計を見直し2024~25年度の新経営計画「JPビジョン2025+(プラス)」を策定、ゆうパック売上高4千億円へ
    ☆セイノーHD決算説明会、田口社長「2025年3月期は増収増益の達成可能」との見通し示す
    ☆西濃運輸、労務費等のコスト上昇への対応で6月から5年ぶりに一般・宅配便の運賃値上げへ
    ☆JR貨物の犬飼社長が会見、2023年度はKGI・KPIの数値目標達成未達も「貨物駅の利便性向上に一定の手応え」との認識示す
    ☆JR貨物決算説明会、篠部常務が2024年度3月期決算結果とともにKGI・KPIの進捗状況を説明
    ☆福山通運が3ヵ年新中計を策定、最終年度の2026年度の営業利益目標は23年度比73%増の180億円
    ☆国交省の社整審と交政審の両環境部会が合同会議、鉄道モーダルシフトの取り組みは「D」評価
    ☆国交省、6月21日期限に「物流データの標準化促進に向けたオープンプラットフォーム構築支援事業」の公募開始
    ☆国交省、5月31日期限に「物流施設におけるDX推進実証事業費補助金」の2次公募始める
    ☆NXグローバルエンジニアリング、シンガポールの農園で農場ツアーとワークショップに参加
    ☆損保ジャパン、ETC2.0プローブデータを活用した「トラック滞留時間可視化サービス」の提供開始
    ☆センコーGHD、京都の老舗ディスプレイメーカー「七彩」の株式85%を取得しグループ化
    ☆山九、来年2月に横浜市本牧ふ頭にエネルギー消費削減率100%以上の次世代型4階建て倉庫「本牧ロジスティクスセンター」を新設
    ☆セイノーHD、グループ保有のアセットを活用し「プラスαの価値創出」を目指す取り組みで4社の共創アイデアを採択
    ☆国交省、労働力不足に対応するための「標準仕様パレットの利用促進支援事業」の公募期間を発表
    ☆国交省、6月13日期限に貨物運送事業者などを対象に「物流脱炭素化事業」の公募開始
    ☆国交省の自動物流道路に関する検討会、「実験線」の要件や中間とりまとめ構成案を審議
    ☆全流協総会、新会長にヤマト運輸の小菅泰治取締役会長を選任
    ☆第一貨物、山形県東根市にエリア内最大規模の物流施設「東根臨空物流センター」を竣工
    ☆エスライン、山口社長新設の買収目的会社「トモエ」のTOBにより上場廃止へ
    ☆物流各社の2024年3月期と2024年12月期第1四半期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省が「物流危機を救う切り札」と銘打つ自動物流道路の実現に向けた検討が加速している。
    ▼14日に開かれた第3回検討会では、夏の中間取りまとめに向けた構成案が示されたほか、実験線で技術やオペレーション等の検証を行う方針が示された。
    ▼「10年以内の実現」という高い目標から逆算すると、未知のシステムともいえる自動物流道路の実現にはスピード感を持った取り組みが求められる。
    ▼時間的制約がある中で、日進月歩の技術をにらみながら最適解を求める作業は相当な困難が予想されるが、国内だけでなく世界を支える物流インフラになる可能性を秘めているだけに、いいシステムに仕上げてほしい。

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