類似法令等参考に着荷主の物流改善へ 実効ある措置検討を 持続可能な物流検討会
国土交通省・農林水産省・経済産業省は7日、対面・オンライン併用で第4回「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催し、関係者ヒアリングを行うとともに、中間とりまとめに向けた骨子案について審議。骨子案では、着荷主に対して物流改善の取り組みを直接義務付ける法律が存在しないことを踏まえ、類似の法令を参考にした規制的措置など、実効性ある措置について検討すべきとの内容が盛り込まれた。
会合ではまず、佐川急便やヤマト運輸などからヒアリングを行い、佐川急便の笹森公彰取締役は、宅配での課題点や過疎地でのネットワーク確保の取り組みなどについて紹介。タワーマンションへの宅配では、高いセキュリティーにより、1個の配達に30分以上を要する場合があることや、台車禁止マンションも東京23区だけで325棟存在し、重量のある水の配達などでは1本ごとに配送車両と届け先を往復する必要があることから、生産性が著しく劣る現状を訴えた。
ヤマト運輸の上野公シニアマネージャーは、再配達削減のためのマンション内置き配利用の増加に対しスマートデジタルキーの導入をマンションデベロッパーに提案しているものの、思うように導入が進んでおらず、管理組合の規約も壁になっていることなどを報告した上で、ドライバーと車両を柔軟に配置できる環境整備や大型車の速度規制上限の引き上げなどを行政に要望した。
中間取りまとめの骨子については、「現状と課題」「課題を踏まえた政策の方向性」「今後の検討の進め方」などからなる事務局案を審議。「現状と課題」は①労働時間規制による物流への影響②物流の危機的状況に対する消費者や荷主企業の理解不十分③物流プロセスの課題(非効率な商習慣・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力の重要性)④物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備―で構成されており、「課題を踏まえた政策の方向性」では、類似の法令を参考にした規制的措置など、より実効性のある措置の検討や物流事業者が提供価値に応じた適正対価を収受するとともに、物流事業者と消費者を含む発着荷主がWin―Winの関係となるよう次のとおり検討を行うべき事項を示している。
【荷主企業や消費者の意識改革】
◎物流の関する広報推進◎物流改善の取り組みが評価されるような仕組みづくり◎経営者層の意識改革を促す措置◎消費者に求められる役割。
【物流プロセスの課題】
◎待機時間、荷役時間などの労働時間削減に資する措置および納品回数の減少、リードタイムの延長など物流の平準化を図る措置◎契約条件の明確化、多重下請構造の是正などの運賃の適正収受に資する措置◎物流コスト可視化◎貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけなど、および標準的な運賃に係る延長など所要の対応。
【物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備】
◎デジタル技術を活用した共同輸配送・帰り荷確保など◎官民連携による物流標準化の推進◎物流拠点ネットワークの形成の支援◎モーダルシフトの推進のための環境整備◎省エネ化・脱炭素化の推進に向けた環境整備◎その他生産性向上を図るための措置。
次回会合は1月に開催し、中間とりまとめに向けた最終的な議論を行う。