「生産空間」の維持を目的に北海道開発局と連携協力協定 ヤマト運輸
ヤマト運輸(長尾裕社長)と国土交通省北海道開発局は20日、北海道の戦略的産業である食と観光を担う地方部の「生産空間」を支えることを目的に、連携協力協定を締結した。
北海道開発局は、農業・漁業を通じて食料供給に大きく貢献するとともに、観光その他の多面的・公益的機能を提供する地域を生産空間と位置付け、発展に向けた支援を行っている。一方で、特に地方部の生産空間では人口の減少傾向が著しく、散居型集落が多いため公共交通の運営が困難なことなど、住み続けられる環境の整備が急務となっていることから◎所得・雇用の確保◎生活機能・集落機能の確保◎地域の魅力向上◎安全・安心な社会基盤の形成―に向けた取り組みを進めてきた。
今回の協定締結はこうしたことを背景に、北海道の地域社会への貢献という共通の目標の下、ヤマト運輸の強みである全国のラストワンマイルネットワーク、地域に密着したSD、あらゆる課題に対する輸送にとどまらないソリューション提案力を活用し、より効果的な取り組みを進めることを目的としている。
協定では①物流の確保に関する取り組み②道路交通の安全性の確保に関する取り組み③災害等に伴い広域的に影響がおよぶ国道の通行止め時の情報共有に関する取り組み④その他生産空間の維持・発展に向け両者が連携・協力することができる取り組み―の四つを連携する項目として掲げており、当面、次の内容に取り組むこととしている。
◎物流効率化の推進=物流サービスの維持に向けて、北海道開発局とヤマト運輸が連携して物流効率化を検討する。具体的には、道北の物流システムの効率化と道の駅の交通拠点機能の強化のため、道の駅「もち米の里なよろ」で、道の駅を拠点とした中継輸送の実証実験を実施する。
◎道路の異常等の情報共有=ヤマト運輸と協力企業のトラックドライバーが道路の異常や破損等を発見した際に「道路緊急ダイヤル」に通報する。
◎災害等に伴う広域的な国道の通行止め時の情報共有=災害等に伴う広域的な国道の通行止めが発生した場合に、物流を支えるヤマト運輸と道路インフラを管理する北海道開発局が情報共有することにより、地方部の生産空間の物流の円滑化に貢献する。
このうち物流効率化については、枝幸町~札幌市間の片道約300キロメートルの冷凍ホタテ・冷凍イクラ輸送の場合、現在ドライバーの拘束時間が往復約10時間半となっていることから、中間地点で枝幸町から約100キロメートルの名寄市内に所在する道の駅「もち米の里なよろ」を拠点とし、トレーラーヘッドを交換する中継輸送を行うことで、枝幸町発のドライバーの拘束時間を往復約5時間に、札幌市発のドライバーの拘束時間を往復約7時間に、それぞれ短縮させることを見込むなど、道北地域における道の駅の中継拠点化の可能性を探っていく。実験は11月上旬から中旬にかけて複数回行う予定としており、輸送品目などの詳細は決まり次第発表する予定。
実験はヤマト運輸と北海道開発局旭川開発建設部を主体として行われ、ヤマト運輸は実験に参加する物流事業者の調整や効果検証への協力などコンサルタント的な業務を担い、旭川開発建設は実験・調査計画の検討や実験スペース確保、とりまとめなどを担当する。
20日に札幌市内の合同庁舎で行われた協定書締結式には、ヤマト運輸の松井克弘執行役員北海道地域担当、北海道開発局の橋本幸局長らが出席した。