「PRE―EVトラック」の公道走行実証実験の出発式 サニックス・第一貨物ほか
山形市に本社を置き、車両整備や車体製作など総合自動車サービス業を展開するサニックス(佐藤啓社長)は12日、第一貨物(米田総一郎社長)などと共同して、山形市内にある第一貨物の新・山形支店で、「PRE―EVトラック」の公道走行実証実験の出発式を開催した。
「PRE―EVトラック」は、小型の発電機を搭載し、発電機から小型電池に充電した電力でモーターを回転させて走行する電動トラック。最大の特長は、車載コンピューターが発電機のオン・オフを制御する「計画発電蓄電制御技術(SGCCS)」を採用した点で、地形や車両の現在位置など各種情報を元に、現在地から目的地までの移動に必要な電力をコンピューターが計算し、現在の電池残量から不足する電力を算出した上で、適切な区間で発電・蓄電し、目的地に到着した時点で希望の電池残量とする技術。発電機はガソリン、ディーゼル、バイオディーゼルのほか、今後開発される水素エンジンなどの使用も可能となっており、外部からの充電を可能とすることで、完全EV化も実現できる。
車両に搭載する発電機と蓄電池の極小化を図り、車両の積載能力と航続距離の維持、災害時の外部への給電などを可能とし、政府目標である2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、実用化が困難と見られている大型車のEV化を目指していく。
サニックスは第一貨物、山形大学、エーシーテクノロジーズとコンソーシアムを組成。環境省の委託・補助事業として開発を進めてきたもの。実験はディーゼルエンジン発電機を搭載したいすゞ「フォワード」の改造車両で行い、山形県内や山形~宮城県間を走行することで、寒暖差や高低差の激しい道路状況など、さまざまなデータを収集するとともに、「SGCCS」の検証や電池搭載方法などを検討していく。来年度以降はコンソーシアムの拡大や小型・中型・大型トラック向けプラットフォームの検討を進め、2023年度ごろの事業化フェーズ移行を目標とする。
12日の出発式には、佐藤社長、米田社長のほか、山形県の吉村美栄子知事や国土交通省・環境省関係者らが出席。佐藤社長は「『SGCCS』は電動トラックのプラットフォームになる可能性を秘めた技術。事業化に向けた課題はあるが、情熱を持った行動で仲間を増やし、前進していきたい」と抱負を述べた。
米田社長は「バッテリーの極小化により、実用的なトラックのEV化が可能になると大いに期待している。トラックのEV化によるCO2の削減と、(災害時の外部給電による)トラックの防災機能向上も実現されるよう祈念している」と述べ、吉村知事は「今回の取り組みは、地域産業の振興に大きく寄与するものと期待している。県としても役割を果たしていきたい」とエールを送った。