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2021年9月20日付 2856号

貨客混載の全面解禁で効率的輸送実現へ 21年度規制改革要望 経団連

 日本経済団体連合会(十倉雅和会長)は14日、「2021年度規制改革要望~DXと規制改革の循環を確立する」を公表、「貨客混載輸送の全面解禁」を要望事項に盛り込んでいる。

 持続可能な成長を実現していくためにはDXの加速が不可欠であり、DXと規制改革の好循環を確立することが重要とした上で①with/postコロナの積み残し②DX等による社会課題解決―を中心に規制・制度改革要望75項目を取りまとめたもので、新規の要望となる「DX等による社会課題の解決」の中で、貨客混載輸送の全面解禁を求めている。

 要望内容は次のとおり。

 新型コロナウイルスの影響でEコマースの利用が急増する中、宅配事業者の人手不足や長時間労働、運送車両の増加に伴うCO2排出量増加等の問題が懸念されている。

 他方、交通機関においては、人口減少や外出抑制等による利用者減少によって経営が悪化し、住民のニーズに応じたサービス提供の維持が困難となっているケースがある。

 これらを解決する方法として、旅客運送事業者、貨物運送事業者が従来の縦割りを超えて協業し、旅客と貨物の掛け合わせによってより効率的な輸送を実現する「貨客混載輸送」が期待されている。

 しかし、現在は過疎地域等の限定的な区域でのみ解禁されており、原則は禁止となっている。20年度にタクシーによる食料・飲料の運送が容認されたものの、「旅客及び貨物の同時運送(混載)を行わないこと」が求められている。

 物流の逼迫や交通機関が抱える課題は過疎地域に限った話ではなく、国土交通省の指定自治体以外の地域や都市部においても貨客混載輸送による解決は有効である。特に高齢化に伴い、買い物等でのスムーズな移動に支障のある住民が増加すると、宅配サービス・交通機関双方の充実はますます重要な課題となる。

 そこで、貨客混載輸送を全国的に解禁すべきである。これにより、物流面ではラストワンマイル輸送における多様かつ柔軟な手段の利用、交通面では新たな事業展開による経営の維持・拡大を期待できる。

ポスト投函や保冷配送で両社が相互に補完 基本合意書締結 日本郵便・佐川急便

衣川社長(右)と本村社長(左)

 日本郵便(衣川和秀社長)と佐川急便(本村正秀社長)は10日、物流サービスの共創に向けた両社の事業成長を目的とした協業の基本合意書を締結。同日行われた記者会見で両社長は、両社の″強み″と″弱み″を補完し合う協業からスタートさせ、順次関係を深めていくことで、持続可能な社会の実現や脱炭素社会への貢献など、新たなソリューション開発に取り組んでいく姿勢を示した。

 今回発表された具体的な協業の内容は、次の3点。

 ①小型宅配便荷物の輸送(2021年11月以降準備出来次第)=日本郵便が取り扱っているポスト投函型の小型宅配便「ゆうパケット」を活用したサービスを佐川急便で取り扱う。佐川急便が荷送人から荷物を預かり、差出人として郵便局に持ち込み、日本郵便の配送網で配達する。

 ②国際荷物輸送(2021年10月以降準備出来次第)=日本郵便が取り扱っている世界120以上の国・地域へ配達可能な国際郵便サービス「EMS」を活用したサービスを佐川急便で取り扱う。佐川急便が荷送人から荷物を預かり日本郵便が集荷、「EMS」の配送網で各国の事業体を通じて配達する。

 ③クール宅配便(2022年1月以降準備出来次第)=日本郵便が取り扱っているゆうパックの保冷品配送サービスの一部を佐川急便が取り扱う。日本郵便が荷送人と契約した保冷品の一部の配達を佐川急便に委託し、佐川急便が配達する。

 日本郵便は保冷品への対応、佐川急便はポスト投函型サービスと越境ECへの対応という、両社が課題と捉えていた″弱み″について、互いの″強み″で補完し合うことで、顧客対応力の強化と利便性の向上を狙う。

 両社は今後、役員以下の実務者で構成されるワーキングチームを組成し、地方都市における共同配送や幹線輸送の共同運行など、顧客利便性と輸送の効率性を高めるサービス開発やインフラ構築に向けた協議を開始。CO2排出量の抑制による脱炭素社会の実現への寄与など、さまざまな社会課題解決による持続可能な社会構築に向けた、新たなソリューション開発に積極的に取り組んでいくとしている。

 衣川社長は会見で「佐川急便とはこれまでも、ゆうメールの分野でパートナーとして協力関係を築いてきたが、未来に向けて関係をより発展させていくための合意ができたことは感慨深い」とした上で「互いの″強み″と″弱み″を相互に補完することで、持続的なサービスの向上や安定した物流の維持を目指す、かつてない取り組み。物流業界のパラダイムシフトを目指したい」と意義を強調した。

 一方、本村社長は「今回の協業は、両社にとってさまざまな効果をもたらすものと大いに期待している。両社が抱える課題を解決するために、非常に重要な役割を担うと考えており、日本郵便の全国2万4千局の郵便局を中心とした配送網と、SGホールディングスグループの約10万人のリソースを補完し合うことで、社会課題解決を図っていく」と力を込めた。

 衣川社長はまた、以前から大口法人顧客の対応で、常温品と保冷品を一元的に取り扱うことが難しく、営業活動に制約を受けていたことから、本年の年初に佐川急便に保冷品配送の委託を打診したと経緯を説明。本村社長も、EC顧客からポスト投函型サービスや越境EC対応に関する要望を受けていたことを踏まえ、協議の過程でこれらの案件を盛り込んだことを明らかにした。

 今回の3件の協業による売上高等の効果については、衣川社長が「『ゆうパケット』と『EMS』を合わせて売上高で十数億円、利益で数億円程度と見込んでいる」と答え、本村社長は「保冷品の取扱個数は、当社のリソースの中で、品質を落とさず対応できる規模になると思う」と語り、金額に関する回答は避けた。

 両社長はさらに、現段階での資本面での提携は考えていないことも明言した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集・秋の全国交通安全運動
     インタビュー―国交省自動車局安全政策課長・石田勝利氏

  • ☆ヤマト運輸労組が定期大会開催、森下委員長が「労働環境と引き換えの低料金の競争終わりに」と訴える
    ☆日通が10月1日付で組織改正、日本事業本部にロジスティクス部を新設
    ☆JR貨物、8月の豪雨災害で発生した山陽線・中央線などの不通は代行で輸送力10%カバー
    ☆日通商事大阪支店・損保ジャパン、大型トラックの巻き込み事故防止について業務提携し新サービス発売
    ☆JR貨物が日本山村硝子と業務提携し植物工場事業へ進出、合弁会社を設立
    ☆ヤマトHDが東京オリ・パラ大会期間中の輸送の完遂を報告、特設サイト更新
    ☆千葉適正化実施機関、Gマークの認定進み会員取得率9割超え
    ☆日貨協連がWebKIT2を来年5月機能拡充へ、標準的運賃連係など新機能追加へ
    ☆物流連が環境対策委員会を開催し「物流分野における低炭素・脱炭素化推進に向けた情報交換会」の立ち上げ承認

今週のユソー編集室

  • ▼秋の交通安全運動が、明日から全国で始まるが、日本損害保険協会はこのほど、2020年の全国交通事故多発交差点マップを公表した。
    ▼全国の地方新聞社の協力を得て同協会がまとめたもので、人身事故件数が最も多かった交差点は、大阪市中央区の法円坂交差点と、福岡県筑紫野市の針摺交差点で、どちらも22件発生したという。
    ▼また、20年の都道府県別飲酒運転事故(原付以上の第1当事者による事故)の状況では、運転免許保有者10万人当たりの飲酒運転事故件数ワースト1は徳島県となっている。
    ▼こうしたデータも活用して、トラック運送業界にとっても悲願と言える、事故ゼロの達成を目指したい。

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