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2021年8月30日付 2853号

22年度予算概算要求で大幅な増額を要求 物流の自動化など後押し 国交省

 国土交通省は26日、2022年度予算概算要求・税制要望の内容を公表。物流関係では、21年度を初年度とする総合物流施策大綱に盛り込まれた物流標準化や過疎地での持続可能なラストワンマイル配送を実現するため、関連予算の拡充要望を行うとともに、見直しを迎える倉庫税制について特定流通業務施設の要件に物流DX関連機器を追加するなど、物流の自動化・省人化を後押しする内容となっている。

 国土交通省の概算要求一般会計は6兆9349億円で21年度予算に対し18%の増額要求。①三大都市圏環状道路等の整備推進②トラック輸送と空港・港湾等の主要な物流拠点との接続強化③ダブル連結トラックによる省人化―をはじめとする効率的な物流ネットワークの強化では4369億円(21年度予算比22%増)、国際コンテナ戦略港湾等の機能強化では625億円(20%増)など、物流関連の社会資本整備も20%以上の増額要求となっている。

 公共交通・物流政策審議官部門では、物流生産性向上で73%増の1億2800万円を要求し、物流DXや標準化の促進を加速させる。このうち、継続事業となるモーダルシフト等推進事業費等補助金の計画策定経費補助では、省人化・自動化機器の導入を計画に位置付けた場合には補助額を引き上げ、中小企業が協議会の主体である場合には、さらに補助額を引き上げる。

 計画策定経費の上限は20年度200万円だったが、最大で1千万円(要求ベース)まで引き上げられる可能性がある。

 運行経費補助についても、省人化・自動化機器を導入する場合には補助率を上乗せする。さらに、過疎地での共同輸配送や貨客混載などの取り組みについても運行経費補助の対象に加える。

 新規では、EC拡大に伴う倉庫需要増加に対応するため、「倉庫内遊休スペースの効率的利用の推進」として1500万円を要求し、伝票・パレットの標準化と連携した倉庫内スペースの規格標準化に向けた調査・実験を行い、ガイドライン作成・周知を通じて、倉庫業者による遊休スペースの効率的利用を促進する。

 国際物流では、日中韓物流大臣会合の合意事項に基づき、RORO船を活用した調査や「かご車」を利用したリターナブル輸送に関する実証などを行うことなどを盛り込んだ「アジアを中心とした質の高い物流システムの構築・国際標準化の推進」として92%増の3千万円を要求。このほか、シベリア鉄道の貨物輸送促進に向けた実証実験などを行う「パイロット輸送や政策対話による物流産業の海外展開支援」で22億4800万円の内数(21年度は18億5900万円の内数)を要求している。

 5ヵ年計画の最終年度となるSIPスマート物流サービスは、280億円の内数を要求し、日用消費財、ドラッグストア・コンビニエンスストア、医薬品医療機器、地域物流の4分野を対象にしたプロトタイプ基盤の構築・高度化と社会実装に向けた検討などを行う。

 エネルギー対策特別会計(エネ特)では、「過疎地等における無人航空機を活用した物流の実用化」と「自立型ゼロエネルギー倉庫モデルの導入支援」で14億9千万円の内数(21年度は8億円の内数)、新技術を用いたサプライチェーン全体の輸送効率化推進で62億円の内数(21年度も62億円の内数)、「冷凍冷蔵倉庫への省エネ型自然冷媒機器の導入支援で73億円の内数(21年度も73億円の内数)を他省庁との連携で要求している。

 税制改正では、倉庫税制の2年間延長を要望するとともに、特定流通業務施設の要件に無人フォークリフトや無人搬送機、ピッキングロボットをはじめとする物流DX関連機器を追加。これまで要件とされていたトラックバース予約システムに加え、物流DX関連機器の導入が要件となる。要件を満たし物流効率化法の認定計画に基づき取得した事業用資産について、「所得税・法人税の割増償却5年間10%」「固定資産税・都市計画計画税の課税標準5年間2分の1」「附属機械設備に係る固定資産税の課税標準を5年間4分の3」の特例措置の対象とする。

尼崎支店を移転更新し同社最大の拠点を新設すると発表 3PL大幅に増強 トナミ運輸

尼崎支店(仮)の完成イメージ図

 トナミ運輸(綿貫勝介社長)は26日、兵庫県尼崎市に同社最大の拠点を新設すると発表した。

 尼崎市北初島町の現尼崎支店が老朽化・狭あい化したことから移転更新するもので、3PL事業を含めた関西地区の物流機能の充実強化を図る。

 新施設の名称は、旧施設と同じく尼崎支店を予定しており、大阪市中心街から10キロメートル圏内で、阪神高速湾岸線尼崎東海岸インターチェンジから約1キロメートルの尼崎市東海岸町20の10に所在。日鉄興和不動産が開発する「LOGIFRONT 尼崎Ⅲ」に専用施設として入居。関西圏全体をカバーする広域配送拠点と位置付ける。

 敷地面積は2万3382平方メートル、建物は鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)事務所棟6階建て・倉庫棟4階建て、延べ床面積4万9066平方メートルの規模。倉庫棟は1階を貨物自動車運送事業の拠点とし、2~4階を3PL事業の新拠点として機能を大幅に増強するほか、危険物倉庫と屋外貯蔵施設も併設する。

 1階は南北の両面にバースを設置し、スロープは3PL倉庫に直結、防火区画の全面シャッター対応なども行い物流効率化を図るほか、津波や高潮を想定した受変電設備のかさ上げ設置などのBCP対応、全館LED照明の採用や自家消費型太陽光発電システムの導入などの環境・脱炭素化にも配慮した施設としている。

 竣工は2023年1月末を、供用開始は23年2月の予定。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ヤマト運輸がEC商品返品時の利便性向上へ「デジタル返品・発送サービス」開発、第1弾としてギャップジャパンで提供
    ☆日通が第1四半期の国際事業実績発表、売上高2桁増確保
    ☆三菱倉庫がライフサイエンス米国企業と複数年にわたる戦略的パートナーシップを締結、再生医療分野強化
    ☆三井倉庫HD・日新など、DX目的に貿易情報プラットフォーム運営会社に共同で出資を決定
    ☆ヤマトオートワークス、さらなる品質向上へ整備士の教育強化
    ☆セイノーHDが低温物流など手掛ける丸久運輸をグループ化、コールドチェーン拡充を加速
    ☆第8回日中韓物流大臣会合、強靭な物流ネットワーク構築など共同宣言を採択
    ☆日本郵便が万国郵便連合の開発協力プロジェクトに初参加、カンボジア郵便のEコマース対応に向けた郵便業務の改善など支援
    ☆ヤマト運輸がサステナブルレター第1回配信、ヤマト福祉財団の障がい者支援の取り組みなど紹介
    ☆JR貨物が豪雨災害の対応まとめる、山陽線で各種代行輸送を展開
    ☆佐川急便・JR東日本など5社、中央線の駅などで千趣会のEC荷物受け取りのトライアル開始
    ☆SGリアルティ・三井不動産が福岡県で初の共同事業となる賃貸用物流施設の起工式を開催、日立物流九州に一棟貸し
    ☆ヤマト運輸・ヤフー、フルタイムシステムと連携し来年1月から自宅マンションの宅配ロッカーで非対面発送できるサービス開始へ
    ☆規制改革推進会議が自家用車による有償運送の利用可能期間に「春期」を追加、9月中に施行予定
    ☆国交省自動車局の概算要求、トラックのDXで働き方改革実現へ
    ☆JADMAが20年通販売上高調査発表、初の20%超伸長で10兆6千億円市場に
    ☆下総運輸が本社に大型ビジョン設置、ドライバー採用の広報にも利用
    ☆エコレールマーク運営・審査委員会が取り組み企業3社や認定商品1件など新規認定
    ☆JALPAが10月14日にセミナー「グレート・リセット後の物流不動産」を開催

今週のユソー編集室

  • ▼上欄記事のとおり、2022年度予算概算要求で国土交通省は、物流の標準化・DX実現のため意欲的な要求を複数盛り込んでいる。本年度に閣議決定され、5ヵ年の計画がスタートした総合物流施策大綱で掲げられたメニューの実現を具体的に後押しするものとして期待したい。
    ▼来年度に5ヵ年計画の最終年度を迎える「SIPスマート物流」に関しても、内閣府科学技術イノベーション創造推進費として、280億円の内数で要求している。
    ▼これまでの研究成果を来年度、物流・商流データ基盤構築などの形で、いよいよ社会実装することになる。物流関係者にとって、使いやすいデータ基盤となることを期待したい。

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