高速道路料金の大口・多頻度割引は拡充と縮小の両面で検討を 社整審国幹部会が中間答申
国土交通省は4日、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会(朝倉康夫部会長)の中間答申を公表。高速道路の将来像や費用負担のあり方、料金制度の見直しの方向性などを盛り込んだ中間答申では、大口・多頻度割引の割引率について、「現下の経済状況を踏まえた拡充」と、「原因者負担の公平性の観点からの縮小」の両面について、引き続き検討する必要があると指摘している。
中間答申は、冒頭で現行の有料道路制度はネットワーク拡大期の財源確保に貢献したが、高速道路の更新や進化の取り組みを将来にわたり継続的に実施するためには、制度の見直しに着手すべき時期を迎えていることなどに触れた上で①維持管理・修繕・更新への取り組み②高速道路の将来像③高速道路を持続的に利用する枠組み④速やかに実現すべき料金制度のあり方―を柱に構成している。
維持管理・修繕・更新への取り組みでは、「大型車利用の適正化による構造物の長寿命化」として、適正利用者への特殊車両通行許可手続きの簡素化や違反者への指導の強化をはじめとする従来の取り組みに加えて、大型車が構造物に与える影響について、データ分析の深掘りを進め分かりやすい形で国民へ情報発信すべきと指摘。また、整備が進められている新たな特殊車両通行許可システムやETC2.0を活用した取り締まり強化などを通じて、老朽化した橋などを避けた経路への誘導を進め、適正な利用を促進することで構造物の長寿命化を図るべきとしている。
料金制度のあり方については、深夜割引の現状について、「首都圏や近畿圏の本線料金所などで、深夜割引適用待ちの車両の滞留が見られ、荷主に対して立場の弱い運送事業者等は割引が適用される深夜に走行せざるを得ないとの意見があることなどを踏まえれば、深夜割引がトラック運転者等の労働環境の悪化につながっているとも捉えられる」とした上で、割引が適用される時間帯に少しでも高速道路を利用していれば出入口間の全体に対して割引が適用されることが主な要因となっていることから、「割引が適用される時間帯の走行分の料金を対象として割り引くような見直しについて、民営化後の料金徴収技術の進展も踏まえ検討するとともに、交通容量に余裕のある高速道路の夜間利用の促進やトラック運転者などの負担軽減を目的として、割引適用時間帯の拡大について検討する必要がある」としている。
大口・多頻度割引については、「深夜割引との重複適用により、大口・多頻度割引が適用される大型車の料金が、割引が適用されない普通車の料金を下回ることもあり、構造物に与える影響等に応じた公平な負担の観点から割引率が高すぎるとの指摘もある」とする一方、利用者団体からは、感染症の影響から経済が回復するまでの間、割引率を拡充すべきとの意見があることを説明。加えて、契約単位割引については、感染症の影響により1台当たりの月間利用額が低下した結果、割引が適用されないケースが散見されるなど、利用者にとって不安定な割引だとし、割引率については、「現下の経済状況を踏まえた拡充」と、「原因者負担の公平性の観点からの縮小」の両面について、引き続き検討する必要があるとしている。
また、より安定的な割引を目指す観点から、協同組合をはじめとする利用者団体の意見も踏まえ、外的要因に大きな影響を受けやすい契約単位割引と、相対的に小さい影響しか受けない車両単位割引のバランスの見直しについても検討することが望ましいとしている。