「官民物流標準化懇談会」を設置 標準化の取り組みまずパレットから 国交省
国土交通省は、デジタル技術の社会実装が急速に進む中、集中的に物流産業での標準化を推進するため、「官民物流標準化懇談会」を設置。17日にウェブ会議形式で初会合を開き、幅広い標準化課題の中からパレットでの取り組みを優先することとし、分科会の設置を決めた。
わが国の物流をめぐる環境は、労働力不足の深刻化、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う社会・経済環境の変化、AI・IoTをはじめとする最新技術の進化など、さまざまな変化が生じている。こうした中、15日に閣議決定された総合物流施策大綱(2021~25年度)でも、取り組むべき施策として「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)」が挙げられている。
懇談会は、物流に対する関係者の危機感や機運の高まりを踏まえ、集中的に物流産業での標準化を推進するため、現状や今後の対応の方向性について議論・検討する場として設けられたもので、ハード・ソフトを含む物流各項目の規格の標準化を目的に年1~2回程度開催。懇談会の下には特定の項目に関する方向性について議論・検討を行うため分科会を設置する。
懇談会の設置期間は定めていないが、24年4月のトラックドライバーへの時間外労働上限規制への罰則適用や、現行の総合物流施策大綱の対象期間等をにらみながら、着手できる項目から分科会を設置し、必要に応じ実験などを行いながら標準化につなげていく。
行政の構成員は、久保田雅晴国土交通省総合政策局公共交通・物流政策審議官、秡川直也国土交通省自動車局長、太田豊彦農林水産省食料産業局長、畠山陽二郎経済産業省商務・サービスグループ審議官、民間・有識者からは、次の各氏が委員に選ばれている(50音順)。
荒木毅日本商工会議所社会資本整備専門委員会委員長(富良野商工会議所会頭)、荒木秀夫SGホールディングス社長、栗島聡経済同友会幹事、内田富雄日本規格協会業務執行理事、金子千久全国農業協同組合連合会参事、神宮司孝日立物流副社長、高岡美佳立教大経営学部教授、長尾裕ヤマトホールディングス社長、根本勝則経団連専務理事、根本敏則敬愛大経済学部教授(座長)、橋爪茂久日本ロジスティクスシステム協会専務理事、二村真理子東京女子大現代教養学部教授、堀切智日本通運副社長、馬渡雅敏人全日本トラック協会副会長、味水佑毅流通経済大流通情報学部教授、米田浩日本倉庫協会理事長、渡邉健二日本物流団体連合会会長。
初会合の冒頭あいさつした赤羽国土交通大臣は、「物流での標準化の必要性が指摘されてきたが実現に至っておらず、物流がかつてない危機に直面している中、関係者の理解を得て実現しなければならない。こうした中、関係省庁や経済団体の関係者が参加し、強いリーダーシップの下、ハイレベルの検討体制が整えられたのは初めての試みだ。懇談会で(課題解決に向けた取り組みの)方向性が収れんしたら、国交省として後押しする」と述べ、懇談会での議論・検討を通じた標準化実現への期待を示すとともに、取りまとめられた標準化の方向性に対し、バックアップしていく姿勢を強調した。
初会合では、全構成員(一部代理出席)が意見を述べ、以下のような指摘がなされた。
◎早晩物流クライシスに陥ることを危惧している。特に地方での人手不足は深刻だ◎標準化の議論に当たっては、現実的な視点と大局的な視点の両面を持つことが重要◎標準化を進める場合、ゼロから取り組むものと、すでに仕組みの出来上がっているものがあり、パレットは後者の代表なので比較的早く成果が期待できる◎標準化には投資が伴うので助成金など行政による支援が必要◎データ活用に向けた標準化の議論も行うべき◎テーマの絞り込みを進めるとともに、グローバルとの整合性を意識すべき◎パレットと併せて車両の標準化についての検討も必要◎手作業をなくすには、まずパレット化に取り組むべき◎パレットの運用のあり方や国際標準の現状などについても配慮すべき―。
これらの意見を踏まえ、パレット分科会の設置を決め、今後メンバーや実施内容を固める。