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2021年4月19日付 2836号

宅配特化の電気軽自動車のプロトタイプ車公開、30年までに7200台の軽自動車全てEV化 佐川急便・ASF

プロトタイプ車両を前に記念撮影する本村(左)、飯塚(右)の両社長

 佐川急便(本村正秀社長)と電気自動車のファブレス(自社工場を持たず生産を外注化する)メーカーASF(飯塚裕恭社長)は13日、神奈川県綾瀬市の佐川急便研修センターで、宅配業務に特化した電気軽自動車(EV)のプロトタイプ車両見学会を開催した。

 佐川急便は全集配車両のカーボンニュートラルを目指しており、その第一歩として全国約7200台の軽自動車を、2030年までに全てEV化する方針を打ち出している。両社は昨年6月に宅配用EVの共同開発に合意し、今回のプロタイプ完成に至った。

 開発に当たって佐川急便は、ドライバーの使いやすい車両とするため、軽自動車に乗務する約7200人のドライバーにアンケートを実施し、結果をプロトタイプに反映させている。

 プロトタイプはASFがデザインやシステム設計等を手掛け、中国の上汽通用五菱汽車が中心となって製造。全長3.39メートル、全幅1.47メートル、全高1.95メートルで、最大積載量は350キログラム。荷室容量は現状の軽自動車とほぼ同じで、80〜100個の荷物が積載できる。最高時速100キロメートル、1充電当たりの航続距離は200キロメートル以上となっている。

 使いやすさのポイントは◎運転席が助手席より10センチメートル広い◎助手席にテーブルを設置◎センターボックスにUSB差し込み口とコンセントを設置◎各所に収納スぺースを設け1リットルサイズの紙パックやカタログ、パソコン、化粧ポーチ等の収納が可能◎4本のLED照明を設置し荷室の明るさを確保するとともに、荷室の凹凸をなくす―などで、このほかUV除菌装置やソーラーパネルも設置している。

 センターコンソール部のタブレットには、クラウドによる車両管理データ、GPS情報管理データ、運行管理データ、自動で最適ルートを生成するナビゲーションシステム、車両故障時などのサポートサービスシステムを搭載。このほかデジタルタコグラフやAIドライブレコーダー、AI棄権検知システム、ドライバーの健康管理データの搭載を検討している。安全関係では、衝突被害軽減ブレーキ、後退時被害軽減ブレーキ、バックソナー・バックアイカメラ、自走事故防止装置を装備した。

 両社は今後、プロトタイプで実証実験に取り組み、本年8月中に外装・内装の仕様を決定、9月中に量産を開始し、来年9月から佐川急便営業所へ順次納車していく。

 見学会で本村社長は、約7200台の軽自動車を全て電気自動車化することで、同社が保有する車両全体の約1割に当たる、2万8千トンのCO2を削減できるとしたほか、将来的にはパートナー企業の軽自動車約2万1500台についても、導入を呼び掛けていく考えを示した。

 一方、ASFの飯塚社長は価格について、最終仕様に左右されるとしながらも、現状を下回る価格で提供したいとの考えを示した。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入の推進 本年3月までに労働時間72万時間削減達成 日通

 日本通運(齋藤充社長)は14日、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入の推進で労働時間を72万時間削減したと発表した。

 日本国内の事業所で、本年3月までに定型業務にかかる作業時間を年間72万8721時間削減した。

 同社では「新しい働き方」を実現するため、2018年3月にRPA推進の取り組みを開始し、21年度末までに年間100万時間削減を目標に掲げて活動してきた。

 主なプロジェクト方針は◎多くの部署が利用できることを優先して導入方針や案件選定基準を策定し、RPA利用対象案件を選定◎業務内容に応じて、集約型ロボット(業務を統括する部門にロボットを導入し業務自体を1ヵ所に集約して行うことで各支店の業務量を縮小させる)と横展開型ロボット(一つのロボットをコピーして複数の課所に導入することで効率よく簡単に社内全体にRPAを導入)という2種類のロボットを使い分けながら、導入・展開◎1万8千人を超える事務系社員へのRPA基礎講習(eラーニング)、全国に配置するRPAマスターに対して養成講習(集合教育)を開催するなど、積極的な教育・啓蒙活動を実施―。

 その結果、本年3月までに目標の70万時間を超え、21年度末までの目標にあと27万時間となった。

 同社は今後、この取り組みを継続・拡大するとともに、ペーパレス化推進に対するRPAの活用やAI―OCRAI(人工知能技術を取り入れた光学文字認識機能)×RPAパッケージ導入など、新しい取り組みを加えるとともに、あらゆる先端技術を駆使して、さらなる事務処理の自動化・効率化を目指すとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(119) 『「海洋時代」において欧亜大陸を走る「中欧班列」の深耕』
    ☆人物ウィークリー、国土交通省自動車局・阿部雄介総務課企画室長

  • ☆センコーが高速をバスを使った「貨客混載」幹線輸送を東名阪間で開始、小ロット・低コスト
    ☆JR貨物の真貝社長、6月に総合物流部を設置し提案営業を強化する考え示す
    ☆全ト協特別委、新型コロナ影響下での小規模トラック運送事業者への経営支援策など答申
    ☆第一貨物、「東京プロジェクト」の一環となる埼玉整備工場と八潮社宅を竣工
    ☆流経大が30日から5月14日まで『災害発生時、物流はどのように対応するか』をテーマとしたシンポジウムをオンデマンド配信
    ☆損保ジャパンが後続無人隊列走行特有のリスクを保証する新たな自動車保険プラン開発、実証実験を行う事業者等を対象に
    ☆国交省等、社会資本整備重点計画と交通政策基本計画素案へのパブリックコメントを26日まで募集
    ☆加工食品外装サイズ標準化協議会がガイドライン策定
    ☆物流連が懇談会を開催、入谷新日本フェリー社長が長距離フェリーの現状を講演
    ☆JR東日本ら3社が新幹線で鮮魚等の定期輸送スタート、新函館北斗駅~東京駅間
    ☆物流連が青学大と都立大で春学期の寄附講座開始
    ☆センコーGHDが上海に低温物流センターを稼働、冷凍・冷蔵物流を強化

今週のユソー編集室

  • ▼先月に茨城県の半導体工場で発生した火災は、過電流が原因とされているものの、過電流発生の原因は現在も特定できていない。
    ▼ネットではサイバーテロの可能性もささやかれているが、一方では陰謀説を否定する冷静な声も上がっている。ただ、原因が何であろうと、サイバーテロで何ができるかを認識しておくことは重要だ。
    ▼物流がサイバーテロで機能不全に陥れば、国民生活と国家経済は多大な被害を受ける。国土交通省は昨年4月に道路運送車両の保安基準を改正し、サイバーセキュリティの観点を盛り込んだが、DXが進む今、車両を含めたサプライチェーン全体のサイバーセキュリティ強化が求められている。

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