宅配特化の電気軽自動車のプロトタイプ車公開、30年までに7200台の軽自動車全てEV化 佐川急便・ASF
佐川急便(本村正秀社長)と電気自動車のファブレス(自社工場を持たず生産を外注化する)メーカーASF(飯塚裕恭社長)は13日、神奈川県綾瀬市の佐川急便研修センターで、宅配業務に特化した電気軽自動車(EV)のプロトタイプ車両見学会を開催した。
佐川急便は全集配車両のカーボンニュートラルを目指しており、その第一歩として全国約7200台の軽自動車を、2030年までに全てEV化する方針を打ち出している。両社は昨年6月に宅配用EVの共同開発に合意し、今回のプロタイプ完成に至った。
開発に当たって佐川急便は、ドライバーの使いやすい車両とするため、軽自動車に乗務する約7200人のドライバーにアンケートを実施し、結果をプロトタイプに反映させている。
プロトタイプはASFがデザインやシステム設計等を手掛け、中国の上汽通用五菱汽車が中心となって製造。全長3.39メートル、全幅1.47メートル、全高1.95メートルで、最大積載量は350キログラム。荷室容量は現状の軽自動車とほぼ同じで、80〜100個の荷物が積載できる。最高時速100キロメートル、1充電当たりの航続距離は200キロメートル以上となっている。
使いやすさのポイントは◎運転席が助手席より10センチメートル広い◎助手席にテーブルを設置◎センターボックスにUSB差し込み口とコンセントを設置◎各所に収納スぺースを設け1リットルサイズの紙パックやカタログ、パソコン、化粧ポーチ等の収納が可能◎4本のLED照明を設置し荷室の明るさを確保するとともに、荷室の凹凸をなくす―などで、このほかUV除菌装置やソーラーパネルも設置している。
センターコンソール部のタブレットには、クラウドによる車両管理データ、GPS情報管理データ、運行管理データ、自動で最適ルートを生成するナビゲーションシステム、車両故障時などのサポートサービスシステムを搭載。このほかデジタルタコグラフやAIドライブレコーダー、AI棄権検知システム、ドライバーの健康管理データの搭載を検討している。安全関係では、衝突被害軽減ブレーキ、後退時被害軽減ブレーキ、バックソナー・バックアイカメラ、自走事故防止装置を装備した。
両社は今後、プロトタイプで実証実験に取り組み、本年8月中に外装・内装の仕様を決定、9月中に量産を開始し、来年9月から佐川急便営業所へ順次納車していく。
見学会で本村社長は、約7200台の軽自動車を全て電気自動車化することで、同社が保有する車両全体の約1割に当たる、2万8千トンのCO2を削減できるとしたほか、将来的にはパートナー企業の軽自動車約2万1500台についても、導入を呼び掛けていく考えを示した。
一方、ASFの飯塚社長は価格について、最終仕様に左右されるとしながらも、現状を下回る価格で提供したいとの考えを示した。