運転者の脳健診受診、費用負担が課題に 健康起因事故対策協議会 国交省
国土交通省は5日、ウェブ会議形式で、2020年度事業用自動車健康起因事故対策協議会(酒井一博委員長)を開き、2018~22年度を期間として実施している脳健診受診モデル事業について、19年度に受診した4068人のうち「異常所見あり(緊急性あり)」が13人だったことや、アンケートに回答した33%の事業者が「脳健診の費用負担が大きい」を挙げたことなどを報告した。
モデル事業では、18年度に1209人、19年度に4068人が脳健診を受診し、20年度については約4800人の受診を見込んでいる。
受診者に対しては、追跡調査を行っており、18年度の受診者で1年目に脳血管疾患を発症したのは3人、2年目に発症したのは1人となっており、1年目の発症者はいずれも健診では「正常」とされていた。これは、健診で用いられるMRIなどの機器で診断できる疾患が限られることなどが関連しているとみられる。
18年度の受診者のうち、トラック運転者は384人で、このうち「異常所見あり(緊急性あり)」はゼロ、「異常所見あり(緊急性なし)」は29人、「異常所見の疑いあり」が47人、「正常」が308人だった。
19年度の受診者のうち、トラックは1012人で、このうち「異常所見あり(緊急性あり)」は4人、「異常所見あり(緊急性なし)」は94人、「異常所見の疑いあり」が180人、「正常」が734人だった。
事業者に対するアンケートでは、好事例(複数回答、以下同じ)として、「運転者自身の意識向上につながった」との回答が48%で最も多く、以下「会社全体で健康起因事故防止の取り組み増進につながった」30%、「早期発見につながったことが良かった」17%などとなっている。
一方、課題については「脳健診の費用負担が大きい」33%、「閉所恐怖症などのMRI不適格者への対応に苦慮」23%、「受診医療機関が少ない」12%などとなっている。2~3万円とされる健診費用は、モデル事業関連経費として5千円を国が補助する。トラック協会などによる支援もあるが、事業者には、まだ負担感が大きいことが見て取れる。
協議会ではこのほか、マニュアル・ガイドラインの認知度やSAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニング検査に関するアンケート結果も報告。
健康管理マニュアルについては、回答したトラック事業者のうち94%が認知しており、19年度に比べて5ポイント増加している。
SASスクリーニング検査の受診率は、トラックでは31%にとどまり、バスの71%に比べ低いが、受診させていないトラック事業者の91%が検査の必要性を感じている。