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2021年2月15日付 2828号

運転者の脳健診受診、費用負担が課題に 健康起因事故対策協議会  国交省

 国土交通省は5日、ウェブ会議形式で、2020年度事業用自動車健康起因事故対策協議会(酒井一博委員長)を開き、2018~22年度を期間として実施している脳健診受診モデル事業について、19年度に受診した4068人のうち「異常所見あり(緊急性あり)」が13人だったことや、アンケートに回答した33%の事業者が「脳健診の費用負担が大きい」を挙げたことなどを報告した。

 モデル事業では、18年度に1209人、19年度に4068人が脳健診を受診し、20年度については約4800人の受診を見込んでいる。

 受診者に対しては、追跡調査を行っており、18年度の受診者で1年目に脳血管疾患を発症したのは3人、2年目に発症したのは1人となっており、1年目の発症者はいずれも健診では「正常」とされていた。これは、健診で用いられるMRIなどの機器で診断できる疾患が限られることなどが関連しているとみられる。

 18年度の受診者のうち、トラック運転者は384人で、このうち「異常所見あり(緊急性あり)」はゼロ、「異常所見あり(緊急性なし)」は29人、「異常所見の疑いあり」が47人、「正常」が308人だった。

 19年度の受診者のうち、トラックは1012人で、このうち「異常所見あり(緊急性あり)」は4人、「異常所見あり(緊急性なし)」は94人、「異常所見の疑いあり」が180人、「正常」が734人だった。

 事業者に対するアンケートでは、好事例(複数回答、以下同じ)として、「運転者自身の意識向上につながった」との回答が48%で最も多く、以下「会社全体で健康起因事故防止の取り組み増進につながった」30%、「早期発見につながったことが良かった」17%などとなっている。

 一方、課題については「脳健診の費用負担が大きい」33%、「閉所恐怖症などのMRI不適格者への対応に苦慮」23%、「受診医療機関が少ない」12%などとなっている。2~3万円とされる健診費用は、モデル事業関連経費として5千円を国が補助する。トラック協会などによる支援もあるが、事業者には、まだ負担感が大きいことが見て取れる。

 協議会ではこのほか、マニュアル・ガイドラインの認知度やSAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニング検査に関するアンケート結果も報告。

 健康管理マニュアルについては、回答したトラック事業者のうち94%が認知しており、19年度に比べて5ポイント増加している。

 SASスクリーニング検査の受診率は、トラックでは31%にとどまり、バスの71%に比べ低いが、受診させていないトラック事業者の91%が検査の必要性を感じている。

第5次中計発表、配送・構内作業等の自社化で売上高3200億円目指す  福山通運

 福山通運(小丸成洋社長)は5日の取締役会で2021~23年第5次中期経営計画(Challenge,Change 2023)を策定。最終年度の経営目標として売上高3200億円、営業利益率7%以上、自己資本利益率7%、7日連続休暇取得、CO2の削減を盛り込んだ。

 第4次中計において、CNGの活用でCO2削減量は17年度比67.3%向上しているほか、福山レールエクスプレス号による効果は同12.7%削減となっており、第5次ではさらなる取り組みの推進を目指していく。

 第5次中計は第4次と同様に、持続可能な成長およびESG経営+社員満足に取り組むとしているほか、今回はSDGsの達成に貢献すると明記した。

 第4次中計では、目標としていた営業利益率5%以上と自己資本利益率5%は達成できる見込みであるのに対して、7日連続休暇取得は一部で困難なほか、売上高は企業間物流の貨物量が落ち込んだことなどから、主力の運送事業が振るわず、目標としていた3千億円を下回ると予想しているが、第5次中計では第4次を200億円上回る売上高3200億円を目標としている。

 目標達成には収益力の向上が求められるが、同社は昨年8月に新運賃「2020運賃」の届け出を行い、運賃体系の見える化など業務改革を進めているほか、運送事業では、配送ルートや構内作業の見直しによる一層の自社化を推進し、生産性向上に引き続き取り組んでいく。実際19年3月期第3四半期の運行便自社化率は87.2%、20年同期88.3%、21年同期91.1%と年々増加している。

 今回新たに「CO2の削減」を経営目標に盛り込んだが、「環境」への対策として①太陽光発電など再生可能なエネルギーの導入②モーダルシフトと輸送生産性の向上―の二つを掲げ、脱炭素社会の実現を目指す。

 「従業員満足」では労働力の確保で組織力を強化するとしており、第4次中計でも実施してきた若年層雇用の充実・長期的に安心して働ける待遇の整備等によって、7.81%だった18年12月の離職率は、20年12月は5.14%まで減少する見込みとなっている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(117) 『脱炭素社会に向けた中国物流の環境施策を考察』
    ☆四文字 『3分類「発展段階」』

  • ☆社整審・交政審計画部会が次期社会資本整備重点計画の概要案など審議、サプライチェーン強靭化目指す
    ☆全日通が春闘方針等を決定、賃上げ1万800円および一時金は本年4月以降基準内賃金の5か月分を年間一括要求
    ☆物流連が新型コロナウイルスの対応動向調査最終報告書まとめる、今後求められる対応など公表
    ☆政府が「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律案」を閣議決定、荷主勧告制度を創設
    ☆国交省が国際港湾周辺の物流拠点高度化に関する補助事業の公募を開始
    ☆社整審国幹部会が大口・多頻度割引の拡充などを盛り込んだ首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針骨子案等を審議
    ☆運輸労連、新型コロナウイルスのワクチン優先接種など来月に交運労協を通じ再度要請へ
    ☆物流連が大阪でセミナー開催し学生約150人が参加、ウェブでは約800人
    ☆アートが在留外国人向けメディアと業務提携しサポート、物件・引越ワンストップで提供へ
    ☆愛知県で初の国際物流総合展、3月に開催
    ☆SBSHDが20年12月期連結決算発表、売上高・営業利益ともに3期連続過去最高に
    ☆トナミHDが情報システム事業を連結子会社のKSRに集約、併せて4月に「トナミシステムソリューションズ」に社名変更
    ☆SBSHDがグループ事業所のGマーク取得割合87.9%に、2020年度新規に7事業所
    ☆センコーGHD、グループ会社のランテックが中部地区の新配送拠点「名港支店」開設と発表

今週のユソー編集室

  • ▼物流連が学生を対象に毎年開催している業界研究セミナーが、本年も東京と大阪で行われた。本年はコロナ禍を踏まえウェブでも開催するなど、新しい試みも取り入れられた。
    ▼東京と大阪の両会場には合計で約300人の学生が訪れ、ウェブを加えると延べ千人を超える参加者があったようだ。特に遠隔地の学生にとっては、ウェブ開催はありがたかったに違いない。
    ▼一方で、対面開催のエントリーに対する参加率は、前年と変わらなかったともいう。あらためて対面の重要性を感じた学生も多かったのだろう。採用環境の変化も予想される中、より多くの学生が物流業界の門をたたき、定着してくれることを望みたい。

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