新型コロナの影響調査の概要速報版を公表、BCPの検査必要 物流連
日本物流団体連合会(渡邉健二会長)は8日、会員企業に対して行った「物流企業における新型コロナウイルス感染症への対応動向調査」の概要速報版を公表し、多くの企業が既存BCP(事業継続計画)の検証・改善に加え、今後の荷姿標準化や商慣行見直しなど、物流の生産性向上への取り組みの加速化が必要と感じていることが明らかになった。
調査は、新型コロナウイルス感染症への対応について、感染拡大期から今秋までの問題点や課題を把握し、今後の対応に資することを目的に、本年9月から11月にかけて実施。会員企業81社に対してアンケートとヒアリングを行い、29社のアンケート回答および10社のヒアリング結果をまとめた。
感染拡大期の課題では、現場系がドライバー・庫内作業者の集団感染リスク対策や、移動制限下の業務遂行体制維持、貨物量の急増減による応援・自宅待機指示を挙げ、事務系が紙ベース作業や押印手続き、ノートPC等のツール不足、個別システムのアクセスを挙げた。
新型コロナ対策では、全てのアンケート回答企業が「マスク着用の徹底」「手洗い・アルコール消毒の徹底」「ウェブ会議システムの導入」を実施しており、8割以上の企業が、出張制限、テレワーク、時差出勤、ビニールシート等による飛沫対策なども行っていた。
一方で、これら各対策を既存のBCPマニュアルに従って指示した企業はおおむね10%台にとどまるなど、既存BCPの内容不足が明らかになったことから、すでに見直しの作業に着手している企業や、改定済みの企業が見られたほか、多くの企業で未知の感染症も視野に入れたBCPの早急な策定の必要性を感じていることが分かった。
また、BCP以外の対策の反省点としては◎現場系における衛生用品等の確保・定期的な棚卸◎事務系におけるテレワーク体制整備不足―が挙げられた。
現段階の物流に対する影響では◎輸送単価の下落◎車両等の固定費負担◎低稼働率―などの影響が長期化しており、これに対して一部では◎月末・月初納品等の分散化◎時間指定の緩和◎専用車両等の固定費の補填要求◎助成金活用などで対応している。
今後の国内BtoB物流については、2019年度と比較して20年度に輸送量・取扱量・収入・利益が減少するとの回答が約7割に達する一方、21年度には回答企業の3分の1が、いずれも増加に転じると見ており、国内BtoC物流や倉庫部門でも、21年度には状況が改善すると見ている企業が多かった。
ウィズコロナ・アフターコロナ下の物流経営に必要な対応としては、半数以上の回答企業が「非接触型・省人化・自動化など物流システムの見直し」「事務系従業員の出勤体制やテレワークの見直し」が必要と回答。「運賃・料金水準の見直し」「荷主企業に対する取引条件見直しの要求」「サプライチェーン全体での商慣習の見直し」を挙げる企業も3割に上った。
調査ではまた、テレワークやウェブ会議システムの導入についても言及しており、テレワークに向く仕事と向かない仕事の整理に課題が見られた。メリットは◎電話対応の減少◎全国規模の社内会議の経費節減◎個人のやるべき仕事が定義されていれば生産性の確保が可能―などが挙がっており、デメリットでは◎会議の数・時間が増えた◎指示・進捗管理・評価が難しい◎仕事にそぐわないーなどが指摘された。
物流連では今後も分析作業を進め、年明けを目途に最終報告書をとりまとめる予定としている。