引越市場で協業へ 経営資源とノウハウ活用、運送業務や新事業も今後具体策を検討 ヤマトHD・アートGHD
ヤマトホールディングス(長尾裕社長)とアートグループホールディングス(寺田千代乃社長)は21日、両社グループが保有する経営資源やノウハウ・サービスを活用し、引越市場の顧客に対するさらなる利便性向上に向けた協業の検討を開始することで合意したと発表した。
ヤマトHD傘下で引越事業を展開するヤマトホームコンビニエンス(YHC)が、アートGHD傘下で高いブランド力、技術力を持ち引越業界をリードするアートコーポレーションの協力を得ながら、既存サービス価値の向上や新たなサービスの提供について検討を進めるとともに、両社グループが保有する経営資源やノウハウを相互に活用することで、それぞれの顧客にさらなる利便性を提供できる可能性が高いとの共通認識から、協業の検討を開始することで合意したとしている。
発表した協業の主な内容は次の2点、
①引越市場等の運送業務における協力=引越市場等の運送業務において協力し、両社グループそれぞれの顧客の一層の利便性向上の検討。
②経営資源の活用による効率化=両社グループの経営資源やノウハウを活用した輸送等の業務効率化の検討。
このほか、両社グループが有する経営資源を積極的に活用し、引越市場における新たな事業の共創も目指していく。
一方で、両社は、検討期間や協業する具体的な事業の内容、資本提携の可能性などについて、全て未定としている。
ヤマトHDグループは、2018年に発覚した法人顧客向けの引越サービスにおけるYHCの不適切請求事案を受け、同年9月から全ての引越サービスの提供を中止。再発防止策を講じて商品を再設計した上で、約1年後の19年9月28日から個人客向けの単身引越サービスについて、提供エリアを限定して再開した。
本年2月にはサービス名称を「わたしの引越」として、2月、6月、7月と段階的に提供エリアを拡大。9月1日からは、契約法人向けにも提供を開始している。
反面、家族向け引越サービスについては、現在も提供を中止しており、中止期間が長期にわたっていることから、協力会社によるネットワークの一部が失われていると見られている。このため本年1月に行われたグループ経営構造改革プラン「YAMATO NEXT 100」の発表時の記者会見で、長尾社長は「今のYHCの体制では、家族向け引越の再開は難しい」との見解を示す一方、「家族向け引越は品ぞろえとして必要。早期に要望を受けられる形を示したい」とも語っており、今回の合意は、そうした動きの一環と見られる。