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2020年7月13日付 2800号

「令和2年7月豪雨」 プッシュ輸送実施 支援物資が早期に到着

 「令和2年7月豪雨」では、3日からの大雨により、九州~中部をはじめとする広い範囲で河川の氾濫や土砂崩れなどが多発し、住宅の損壊や集落の孤立、住民への避難指示・勧告などが各地で発生した。

 こうした状況に対し、政府は5日、「令和2年7月豪雨非常災害対策本部」を設置し、情報収集や被災者支援を展開。安倍晋三総理は、各省横断の「被災者生活・生業再建支援チーム」設置を命じ、被害の迅速な把握や政府一体となった災害応急対策に全力で取り組むことなどを指示した。

 支援物資のプッシュ型輸送も早期に開始され、内閣府から国土交通省を通じて、指定公共機関である日本通運、ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、福山通運に対しプッシュ型緊急物資輸送を要請。段ボールベッド1500台、非接触型体温計100個を内閣府立川基地から、布パーテーション200セットを東京都世田谷区から、送風機300台を福岡市内から、パックご飯(180グラム)1万5024セットを新潟県小千谷市から、それぞれ熊本県益城町のグランメッセ熊本に輸送している(8日正午現在)。また、このほか自家用車両による輸送などで、水(500ミリリットル)2万本が5日にはグランメッセ熊本に到着。このほかの主要な生活必需品についても、7日までにはグランメッセ熊本から市町村への配布が実施されている。

 さらに、サカイ引越センターは7日、近畿地方整備局の要請を受け、同局近畿圏臨海防災センター(堺市)から中継所の博多港湾・空港整備事務所に、緊急支援物資輸送(発電機、飲料水、保存食、テント、毛布、コードリール、ブルーシート)を実施したと発表。4日午後2時に近畿圏臨海防災センターを出発し、同日午後11時に博多港湾・空港整備事務所に到着、積替作業の後、5日午前8時半に熊本県八代市に届けられた。

 道路や河川、自動車交通などを受け持つ国土交通省も4日に第1回災害対策本部会議を開き、翌5日には第1回非常災害対策本部を開催。

 所管施設の被害情報の収集・発表を行うとともに、インフラ関連の専門家「TEC―FORCE」の派遣や、自治体への技術的助言・指導、海上保安庁による救助活動などを進めてきた。

 高速道路は、9日午前10時時点で、大分自動車道玖珠IC(インターチェンジ)~湯布院ICをはじめ2路線2区間で被害が出ており、国道では31路線67区間で通行止めなどの措置が取られている。

 また国交省では、福岡・熊本・大分・鹿児島・長野・岐阜の各県の一部地域の自動車について、自動車検査証の有効期間が7月4日(熊本県・鹿児島県の一部地域)・6日(福岡県・大分県の一部地域)・8日(長野県・岐阜県の一部地域)~8月3日のものについて、期間を8月4日まで延長するとともに、自賠責保険についても車検(継続検査)を受けるまで継続契約の締結手続きを8月4日まで猶予する特例措置を講じている。

 全日本トラック協会では、4日に坂本克己会長を本部長とする「令和2年7月九州豪雨対策本部」を設置して指定公共機関である会員大手5社とともに、緊急物資輸送体制を構築し、プッシュ型輸送を実施している。

 九州では、福岡・熊本・長崎・大分・鹿児島の各県に災害対策本部が設置され、各県トラック協会は県との防災協定に基づき、物資輸送体制を確立して対応を進めている。

AIと電力データで不在配送の解消へ 9月から実証実験  佐川急便

記念撮影の様子、中央が本村社長

 佐川急便(本村正秀社長)は9日、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に向け、9月を目途に横須賀市内で実証実験を開始すると発表した。

 同社は昨年10月、日本データサイエンス研究所、東京大学大学院越塚登研究室・田中謙司研究室と共同研究を開始、新たに住民サービスへの検討を行う意向の横須賀市と、電力会社が設置するスマートメーターの電力データを活用し社会実装に向けたユースケース実証や政策提言を行うグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合を加えた5者で、横須賀市の池田町・吉井地域100~200世帯を対象にフィールド実証を行う計画。

 環境負荷軽減・労働環境改善・交通事故防止・安定的な輸送・電力データの活用効果の検証―を目的に、AIがスマートメーターの電力使用データから各家庭等の在不在を予測し、配送の最適ルートを組み立てる「不在配送回避システム」の構築を目指す。

 2018年に東京大学本郷キャンパスで行った試験では、配送成功率98%、不在配送91%減少、移動総距離5%減少との結果が示されている。

 実証実験は年末までを目途に実施し、総括を行った上で、来年度からシステム構築に着手、22年度からの実運用展開を想定している。

 同日、東京都江東区の佐川急便東京本社で行われた記者会見・共同研究合意調印式には5者の代表が登壇。その席で本村社長は「新型コロナウイルス感染防止対策で在宅勤務の増加に伴い、年末同等の取扱件数に増加し、配達率も向上したものの、徐々に不在再配達の増加が懸念される状況にある」と述べた上で、「不在配送問題の解消により、高い輸送サービス・品質の提供を通じて、交通渋滞の緩和、環境保護に貢献していきたい」と語った。

 東京大学の越塚教授は「スマートメーターの高い設置率、宅配便の高度・高水準なサービスというベースを活用した世界最高レベルの実証実験」と語り、日本だけにしかできない取り組みと強調した。

 記者団との質疑応答では、再配達問題に対し、相対の配送にこだわる理由について本村社長は、コロナ禍の中で押印・サインを行わない非接触の配達を実施していることを説明した上で、置き配も選択肢の一つではあるが、同社のサービスでは、事前に置く場所を指定してもらうなど、あらかじめ了承を得た場合に限っており、紛失・物損を含め保険の問題が完全にクリアされている認識にはないとして、あくまでも相対の配送を基本とし、今回のシステムの効果を期待している旨語った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(150) 『新型コロナの感染拡大が駄目押し(その8)』
    ☆四文字『飛躍への道「高速道路」』
    ☆物流応援歌(28)『新型コロナウイルスの物流業界への影響=ラストワンマイルの重要性を考える=』
    ☆ウォッチ(110) 『2020年上半期のベトナムの経済と貿易』
    ☆人物ウィークリー、北王流通・黒田英則社長

  • ☆JR貨物の真貝社長がグループ社長会議であいさつ、「企業体力は打たれながらも強くなっている」
    ☆全ト協・日貨協連、6月のWebKIT成約運賃指数は2013年7月以来の110以下に
    ☆「令和2年7月豪雨」は物流企業にも影響、広域にわたり遅延など
    ☆押入れ産業が経営戦略室を新設、ネットワーク拡充では全国200店舗に拡充へ
    ☆BtoBコールドチェーン物流サービスのJSA規格が発行、国交省がアジア諸国へ普及図る
    ☆三井倉庫がカムバック制度導入、新しい働き方へ
    ☆全ト協が常任理事会・理事会合同会議開く、退任の3副会長に代わり庄司・楠木・秋田の3氏が就任
    ☆JILSが新型コロナに関するアンケート結果発表、緊急事態宣言以降にサプライチェーンでの混乱が拡大
    ☆ヤマトHDがビッグデータの分析を手掛ける米スタートアップ企業と連携、デジタルトランスフォーメーションの加速化へ
    ☆物流連がウェブ併用し「ロジスティクスクスPRグループ2020~物流いいとこみつけ隊」全体会合、インターンシップの内容検討
    ☆物流博物館がシキ800ミニ企画展と映画上映会

今週のユソー編集室

  • ▼またしても、日本列島を大雨が襲った。被害の大きかった熊本県に対しては、早期にプッシュ型支援物資輸送が行われ、ここ数年の災害で積み重ねてきた教訓とスキルが反映されている。
    ▼これまでと違うのは、「感染症対策」として非接触型体温計やビニール手袋などがリストに加わっていることだろう。新型コロナウイルスへの不安の中で、救助活動や避難所の運営、物資輸送に携わる方々の苦労を思うと、手を合わさずにはいられない。
    ▼コロナ拡大の局面では、トラックドライバーに心ない偏見が投げかけられることもあったが、広い地域から支援物資輸送に当たるトラックに温かいまなざしが注がれることを願いたい。

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