運審が公聴会を開催、馬渡全ト協副会長がドライバーの待遇改善に向け早期の告示求める
運輸審議会(原田尚志会長)は2日、東京都千代田区の中央合同庁舎で、一般貨物自動車事業の標準的な運賃の告示に関する公聴会を開催し、公述人として選定された馬渡雅敏全日本トラック協会副会長から意見を聞くとともに、国土交通省自動車局の伊地知英己貨物課長から標準的な運賃の内容や申請の理由などについて説明を受けた。公聴会後に会見した原田会長は、公述人の意見などを踏まえた上で、今後も慎重な検討を行っていくとの考えを示す一方、委員の質問に対する国交省の回答などを通じて、標準的な運賃の内容や考え方などについて審議会内での理解が「だいたい煮詰まってきている」とし、現段階で答申に向けた大きな課題はないとの認識を示した。
馬渡副会長は、トラック運送事業の現状について、規制緩和による競争激化などを理由に、十分な運賃・料金が収受できていないことで、トラックドライバーの低賃金、長時間労働を招いていると指摘。トラックドライバーの人手不足が顕著になっており、このままでは国民生活と経済の重要なライフラインであるトラック運送事業が役割を果たせなくなることが懸念されるとして、2018年12月に標準的な運賃の告示制度導入などを盛り込んだ改正貨物自動車運送事業法が成立したことを説明した。
その上で、国土交通省が適正な原価と利潤に基づき算定した標準的な運賃案は、トラックドライバーの賃金を全産業の標準的な水準に是正し、コンプライアンスを確保できることを前提にしているという考え方であり「全面的に賛成する」と表明。告示制度が23年度末までの時限措置であることから、新型コロナウイルス感染が拡大する中、リスクと闘いながら物資を輸送しているドライバーのためにも早急な告示を要望した。
馬渡副会長の意見陳述の後、委員からの質問に伊地知課長が回答した。
標準的な運賃を構成する原価の主要な費用項目については、人件費と車両費が全体の約半分を占めると説明。人件費については全産業の平均値を用いることでドライバーの労働条件の改善につなげるとともに、車両費については融資やリース、ASV(先進安全自動車)の技術基準見直しなどの期間が約5年であることなどから、5年での償却を想定しているとした。
時間制運賃の基礎走行距離が1990年運賃に比べ長くなっている理由については、車両性能の向上や道路整備の進展、高速道路利用の促進などにより、時速が向上していることが主な理由であるとした。
標準的な運賃案に対するトラック事業者以外からの受け止めについては、「労働組合からも期待する旨の意見を頂戴しており、荷主関係への説明でも一定の理解が得られたと考えている」と回答。
実効性確保策については、告示内容についての詳細や考え方を通達を通じて広く周知するとともに、告示後に運賃・賃金がどのように推移しているかをフォローアップしていく考えを明らかにした。
また、不当に安い運賃での契約が、法令違反につながった場合には、荷主勧告制度や下請法、独占禁止法などの枠組みを活用して、関係省庁と連携した対応を行っていくと述べた。