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2020年4月6日付 2788号

運審が公聴会を開催、馬渡全ト協副会長がドライバーの待遇改善に向け早期の告示求める

公聴会の模様

 運輸審議会(原田尚志会長)は2日、東京都千代田区の中央合同庁舎で、一般貨物自動車事業の標準的な運賃の告示に関する公聴会を開催し、公述人として選定された馬渡雅敏全日本トラック協会副会長から意見を聞くとともに、国土交通省自動車局の伊地知英己貨物課長から標準的な運賃の内容や申請の理由などについて説明を受けた。公聴会後に会見した原田会長は、公述人の意見などを踏まえた上で、今後も慎重な検討を行っていくとの考えを示す一方、委員の質問に対する国交省の回答などを通じて、標準的な運賃の内容や考え方などについて審議会内での理解が「だいたい煮詰まってきている」とし、現段階で答申に向けた大きな課題はないとの認識を示した。

 馬渡副会長は、トラック運送事業の現状について、規制緩和による競争激化などを理由に、十分な運賃・料金が収受できていないことで、トラックドライバーの低賃金、長時間労働を招いていると指摘。トラックドライバーの人手不足が顕著になっており、このままでは国民生活と経済の重要なライフラインであるトラック運送事業が役割を果たせなくなることが懸念されるとして、2018年12月に標準的な運賃の告示制度導入などを盛り込んだ改正貨物自動車運送事業法が成立したことを説明した。

 その上で、国土交通省が適正な原価と利潤に基づき算定した標準的な運賃案は、トラックドライバーの賃金を全産業の標準的な水準に是正し、コンプライアンスを確保できることを前提にしているという考え方であり「全面的に賛成する」と表明。告示制度が23年度末までの時限措置であることから、新型コロナウイルス感染が拡大する中、リスクと闘いながら物資を輸送しているドライバーのためにも早急な告示を要望した。

 馬渡副会長の意見陳述の後、委員からの質問に伊地知課長が回答した。

 標準的な運賃を構成する原価の主要な費用項目については、人件費と車両費が全体の約半分を占めると説明。人件費については全産業の平均値を用いることでドライバーの労働条件の改善につなげるとともに、車両費については融資やリース、ASV(先進安全自動車)の技術基準見直しなどの期間が約5年であることなどから、5年での償却を想定しているとした。

 時間制運賃の基礎走行距離が1990年運賃に比べ長くなっている理由については、車両性能の向上や道路整備の進展、高速道路利用の促進などにより、時速が向上していることが主な理由であるとした。

 標準的な運賃案に対するトラック事業者以外からの受け止めについては、「労働組合からも期待する旨の意見を頂戴しており、荷主関係への説明でも一定の理解が得られたと考えている」と回答。

 実効性確保策については、告示内容についての詳細や考え方を通達を通じて広く周知するとともに、告示後に運賃・賃金がどのように推移しているかをフォローアップしていく考えを明らかにした。

 また、不当に安い運賃での契約が、法令違反につながった場合には、荷主勧告制度や下請法、独占禁止法などの枠組みを活用して、関係省庁と連携した対応を行っていくと述べた。

アロー便新サービス、新器材プロテクトBOX 今月1日から開始  日通

プロテクトBOX

 日本通運(齋藤充社長)は1日、アロー便と新器材「プロテクトBOX」を組み合わせた新しい国内輸送サービスを開始した。東京・横浜・名古屋・大阪で提供を開始し、札幌・仙台・広島・福岡など利用可能エリアを順次拡大していく予定。

 サービスの特長は◎約1立方メートルの空間(最大積載重量350キログラム)を自由に使用して貨物を輸送◎都道府県別にパッケージ料金とリードタイムを分かりやすく設定◎上積みや積み重ねが困難な貨物についても、2段積載が可能なため、積載効率が向上◎器材は1人でも簡単に組み立てや折りたたみが可能◎封印環の使用により施錠が可能で、輸送中のセキュリティを確保◎耐久性が高く、繰り返し使用できるため、養生・梱包資材の使用や廃棄物の発生を軽減し、環境に配慮した輸送を実現―など。

 今後、国内の陸・海・空各輸送モードで「プロテクトBOX」を組み合わせた新商品の開発を進めていく。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流企業各社の入社式でのトップ訓示要旨
     日本通運・齋藤充社長 過去に学び未来創る
     ヤマトHD・長尾裕社長 関心・行動・振り返り
     西濃運輸・小寺康久社長 今こそ気概持って
     トナミ運輸・綿貫勝介社長 協調性と積極性で
     JR貨物・真貝康一社長 顧客と現場を軸に
     丸運・荒木康次社長 グローバル元年に
     近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長 志持って能動的に
     第一貨物・武藤幸規社長 一致団結して
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(144) 『新型コロナの感染拡大が駄目押し(その2)』
    ☆物流応援歌(25)『宅配再配達問題の現状と今後(1)=宅配便利用者の意識変革の重要性=』

  • ☆経団連が緊急提言、新型コロナ対策として物流ロボ導入補助など
    ☆エコモ財団が「グリーン経営認証取得による効果2018年版」発表、トラックの平均燃費が取得2年後に3.2%改善
    ☆JR貨物が20年度事業計画発表、鉄道事業の収支改善見込むも新型コロナで下振れを示唆
    ☆日通総研が20年度の見通し改定版、国内貨物輸送は3年連続減少へ
    ☆ヤマトHDが1日に50億円規模のCVCファンド設立、デジタル中心に投資
    ☆SGLがXフロンティア内に通販事業者向けのシームレスECプラットフォームのサービス開始
    ☆ヤマト運輸が南大阪主管支店新設とともに京阪主管支店の名称変更、主管支店数89に
    ☆NTTロジスコが千葉物流センターE棟を竣工、延べ床面積は新棟を含め14万平方メートルに
    ☆山九がアフリカ向け輸出サポート業務開始、決済の低コスト化等

今週のユソー編集室

  • ▼上欄記事のとおりトラックの標準的運賃の告示に向けて運輸審議会が公聴会を開き、委員の理解も進んだことから、ゴールデンウィーク前の告示が現実味を帯びてきた。
    ▼告示後、トラック事業者が一斉に荷主交渉を開始して、トラックドライバーの待遇改善につながれば、告示制度の目的が早期に達成されるのだが、折しも新型コロナウイルスの感染拡大で、経済活動は停滞、物量も減少している。
    ▼もっと早い段階で告示がなされなかったことが悔やまれるが、今後数ヵ月間はウイルス終息後の回復期を見据えて、標準的運賃をベースにした理論武装をしっかり行い、荷主交渉の下地を整えていく重要な時期となるだろう。

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