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2019年4月8日付 2743号

中期経営計画2023発表、経常利益140億円以上へ 「挑戦と変革」強調  JR貨物

 JR貨物(真貝康一社長)は3月29日、中期経営計画2021(17~21年度)のローリングとなる中期経営計画2023(19~23年度)を発表した。鉄道を基軸とした総合物流企業グループなど、旧計画で掲げた目指す姿は維持した上で、災害対応や技術革新といった2年間の環境変化を反映させ、最終年度に経常利益140億円以上の達成を目指す。

 重点戦略には①総合物流企業への進化②新規事業・新技術へのチャレンジ③鉄道貨物輸送の役割発揮とさらなる収益性の向上④新たな成長へ向かう不動産事業の展開⑤経営基盤の強化―を掲げた。

 ①では、レールゲート(RG)の全国展開に加え、駅構内におけるトラックとコンテナの積替施設(積替ステーション)や駅構内・駅付近(駅ナカ・駅チカ)倉庫など、駅附帯施設を整備し、一般のトラックでも利用できる、鉄道コンテナ輸送のプラットフォームを確立する。

 ②では、鉄道ロジスティクス、不動産に次ぐ第3の柱の構築を目指し、JR貨物の強みを発揮できる社会課題解決型事業に積極的に挑戦することとし、事業のアイデア例として保有する土地を活用した農産品生産・販売事業などを挙げた。

 また、構内トラックの無人化やフォークリフト操作の遠隔化・自動化など、貨物駅作業の大幅な省力化に取り組んでいく。

 ③では、専用列車の新設や定温輸送コンテナの導入、スマホアプリによるコンテナ持ち込み時刻の事前予約機能導入、コンテナ予約システムへのキャンセル待ち機能追加など、商品力の充実化を図っていくほか、積合せ貨物・食料工業品・静脈物流などへ戦略的な営業を展開。災害対応として、代行輸送力手配・情報発信・輸送機材や要員の確保・大型コンテナの輸送承認フローの見直しなどに取り組む。

 設備投資は5年間で2080億円を計画。うち東京RGを含む成長・戦略投資分として980億円を掲げた。最終年度の目標数値は左上表のとおり。

 真貝社長は新中計について、新たに制定したグループ経営理念のブランドメッセージとして掲げた『挑戦と変革』によって、「顧客の期待に応え、鉄道を基軸とした総合物流企業グループを目指す」と強調。また、利益を生むための投資を重視する姿勢も示した。

 ◆JR貨物の19年度事業計画 売上高1656億円の18年度見込み比109億円増、営業利益112億円の88億円増、経常利益97億円の88億円増、当期純利益68億円の95億円改善を計画。鉄道事業は売上高1478億円の133億円増、営業利益は7億円の87億円改善。

 鉄道事業では九州向けの輸送力増強、定温輸送など新たな取り組み拡充や収支改善策を実施するほか、駅業務のシステム化による効率化などに取り組む。

名古屋~仙台間をフェリーで貨客混載、鉄道・内航対応コンテナ  日通

 日本通運(齋藤充社長)は3日、名古屋港と仙台港を結ぶ旅客フェリーを利用した貨客混載サービスSea&Rail新シリーズ「Seaライン名古屋⇔仙台」を発売した。同社が開発したRSVコンテナ(鉄道・内航双方の輸送に対応した12フィートハイブリッドコンテナ)で運ぶ。

 貨客混載による海上輸送で、トラックドライバー不足に対応し、環境にもやさしく、災害等による列車輸送障害時のBCP(事業継続計画)対策としても有効。鉄道輸送と組み合わせれば輸送範囲が広がり、名古屋発は北東北全域、仙台発は中部圏や近畿圏も視野に入れた輸送が可能。

 同社の「NEX―NET」シリーズ第3弾となるサービスで、太平洋フェリーを利用する。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流企業各社の入社式でのトップ訓示要旨
     日本通運・齋藤充社長 持続可能な社会に貢献
     ヤマトHD・長尾裕社長 次の100年も成長を
     SGHD・栗和田榮一会長 失敗恐れず挑戦を
     西濃運輸・神谷正博社長 困難にもくじけず
     トナミHD・綿貫勝介社長 変化恐れず挑戦を
     日立物流・中谷康夫社長 視野広く現場理解
     第一貨物・武藤幸規社長 真面目にひたむきに
     JR貨物・真貝康一社長 「挑戦そして変革」
     SBSHD・鎌田正彦社長 本質を見抜く力を
     丸運・荒木康次社長 「利他自利」大切に
     近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長 「体力、気力、努力」
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(121)『足元の日本経済は堅調なのか(その2)』
    ☆四文字 『バイクを使う「急便事業」』

  • ☆全ト協・日貨協連、WebKIT成約運賃指数は22ヵ月連続の増加で3月最高値記録
    ☆国交省等、ホワイト物流推進に向けて上場企業と各都道府県の主要企業6300社に推進運動への参加要請
    ☆SGHDグローバルがベトナムの事業会社2社を経営統合、一貫輸送体制を構築
    ☆日通総研が19年度の経済と貨物輸送の見通し発表、18年度に引き続きマイナスで推移
    ☆日立物流が医薬品向け物流施設「富山Ⅳ期物流センター」の既存棟隣接地に自動倉庫棟を増築、自動化・省人化で導入した「次世代モデルセンター」
    ☆国交省・全ト協が「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方」を公表、情報の共有化図る
    ☆石井国交大臣がマレーシアでのコールドチェーン物流運営事業JOINの出資認可、出資額約36億円
    ☆国交省が港湾のコンテナターミナルでのゲート前待機23年度中解消へ「AIターミナル」実現に向けた目標と工程を作成
    ☆国交省が荷役作業の地点など乗務記録の対象に盛り込んだ貨物自動車運送事業安全規則の一部改正案についてパブコメ募集
    ☆国交省が合計3万5118キロメートルの重要物流道路の第1次指定、40フィート背高国際海上コンテナ車の特車通行許可を不要とする措置の詳細は5月下旬公表
    ☆国交省が支援物資ラストマイル輸送のハンドブック策定、自治体担当者向け

今週のユソー編集室

  • ▼5月1日から始まる新元号が「令和」に決まった。英語で意訳すると「beautiful harmony」、つまり「美しき調和」を意味するそうだ。
    ▼広辞苑によれば、調和とは「うまくつり合い、全体がととのっていること」を指す。意味合いはやや異なるかもしれないが、全体最適とも考えられる。ただ、単なる全体最適ではなく、「美しき」全体最適である点に注目したい。
    ▼労働力不足の中で課題解決に取り組み、国民生活と経済の血液の役割を担い続けようとする物流業界にとって、「美しき全体最適」は非常に重要だ。すなわち他者の理解と協力を必要とする物流業界にこそ、「令和」の言葉はふさわしい。

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