中欧鉄道利活用でシンポジウム開催、第3のモードとしてPR 日通
日本通運(齋藤充社長)は12日、東京都港区のWTCコンファレンスセンターで「中国欧州間鉄道利活用促進に向けたシンポジウム」を開催、アジアと欧州をつなぐ航空・海運に続く第3の輸送モード『クロスボーダー鉄道輸送サービス』のメリットを荷主企業等に紹介した。
日中両政府が昨年5月に締結した「日中第三国市場協力」の具体的施策に掲げた「中国と欧州を結ぶ鉄道を活用し、物流事業を拡大」を受け、経済産業省から日通が受けた委託事業「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(チャイナ・ランド・ブリッジの利活用推進に向けたハード・ソフト面の改善のための調査)」の結果報告を主体に、現状の課題や今後の利用動向について、経産省、日本貿易振興機構、日通が主催し約150人が参加。開会冒頭、経産省の安藤晴彦審議官、日本貿易振興機構の水井修理事、日通の橋本浩平執行役員が主催者あいさつし、中国駐日大使館の宗耀明公使の来賓あいさつを受けた。このうち、橋本執行役員は中国欧州間鉄道輸送の列車本数は、昨年6396本の前年比74%増と目覚ましい成長を遂げ、中国政府の当初計画年間5千本を2年前倒しで達成するなど、第3の輸送モードとして定着しつつあるとの認識を示し、同社社名にある「通運」は礎業の一つであり、鉄道サービスを通じて日系企業のビジネス拡大をサポートしていきたいと語った。
シンポジウムは第1部として経産省、日通・日通総研、損害保険ジャパン日本興亜の担当者が中欧鉄道事業に対する日系企業のニーズ、制度、実証実験の結果を報告。航空の輸送コスト、海運の輸送日数の約半分で運べる利点があり、自動車関連、電気機器、木材・パルプ、医薬品、医療機器の業種で利用ニーズが高いことなどが紹介されるとともに、破損、盗難なども少なく安全性は高く、振動も輸送中は重力加速度(G)2以下と品質面でも高いレベルにあることがデータで示された。また、冬場の気温がマイナス30度を超えるエリアもあるが、耐熱マット等の利用で貨物の凍結を防ぐ対策案などが披露された。
第2部は日通の犬井健人グローバルフォワーディング企画部長、日新の桜井正応国際営業第一部部長、損保ジャパン日本興亜の末松一也物流開発部長らがパネリストとして参加しパネルディスカッションが行われた。
犬井部長は実証実験で行った14輸送の結果、航空よりも安価で、海運よりもリードタイムが短縮されるなど、荷主にとってもう一つ選択肢が加わることをメリットにあげ、昨年12月に西安駅からドイツ・デュイスブルグ駅までを貨物専用列車1編成で41個のコンテナを輸送した「ブロックトレイン」試験運行について、計画日数の15日で完了し、安定性・安全性が確認できたと述べた。一方で、現状2対1となっている中国発・欧州発の貨物量のアンバランス解消に向け、今後、フォワーダーとして欧州発の貨物獲得に尽力したいと語り、現在主体となっている工業製品や雑貨等の消費財に加え、一次産品の取り扱いニーズを捉えていくことも一考とした。
桜井部長は中欧鉄道のメリットとして、航空のように季節波動によって運賃が大きく上下することがなく、海運の船積みスペース確保難の問題もない点をあげ、将来的には新作をまず航空で送り、追加商品を鉄道で運ぶなどの利用が見込まれるアパレル業界へのアプローチを考えたいと述べた。
末松部長は同社が提供する保険サービスを紹介するとともに、貨物事故・盗難による保険支払いはほぼなく、遅延リスクに対しては特約を設定していることを説明。海運と同等の低い保険料率となっており、リスクを恐れて鉄道利用を控えていた企業に、保険による安心がハードルを下げるきっかけになればとの考えを示した。