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2019年1月14日付 2731号

トラック運行のコスト等、ガイドライン公表 荷主の理解促進図る  国交省

 国土交通省は12月27日、トラックの運行に必要なコストの構成概要や、コンプライアンス違反防止につながる効率的な運行事例などをまとめた「トラック運送サービスを持続的に提供可能とするためのガイドライン」を公表した。

 国交省では、2016年7月から18年5月にかけて、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」を合計7回開催してきたが、ガイドラインは同検討会での「仕上げ」として、荷主・運送事業者間の共通理解促進を目的に、適正で必要な運賃・料金のコスト構成や、コンプライアンス確保に必要な項目などを取りまとめたもの。

 昨年末に成立した改正貨物自動車運送事業法では、標準的運賃の国土交通大臣による告示制度の導入が盛り込まれているが、今般公表されたガイドラインは、荷主と運送事業者が適正な運賃・料金体系を導入する前段階での交渉における「基礎資料」としての意味合いが強い。また、交渉をガイドラインのレベルから一歩前進させるには、すでに策定されている「トラック事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック」などを活用してほしいと国交省では呼び掛けている。

 ガイドラインは、経済産業省・厚生労働省・農林水産省との連名で発出され、冒頭、コンプライアンスは安全確保の観点から重要であることを説明した上で、トラックドライバーは改善基準告示で定められた拘束時間や運転時間などを遵守する義務があることを太字を用いて強調。告示で定める「拘束時間」では、点検・回送・運転・荷待ち・休憩などの時間を含むことなどを表を交えて解説し、コンプライアンス違反防止には高速道路利用による運転時間短縮や荷役の長時間化抑制など、荷主側の理解・協力が重要であると指摘している。

 運行事例では、一般道経由で拘束時間が16時間を超え違反状態となっていた運行の一部を高速道路利用に置き換えることで、拘束時間を10時間半としてコンプライアンスを確保した例や、受付予約システム・機械荷役の活用により拘束時間を短縮した例を掲載し、いずれも荷主の理解・協力が不可欠であることを示している。

 コストについては、直接費と間接費に分けて説明。直接費は、「運行費」「車両費」「人件費」「自動車関連諸税・保険料等」、間接費は「一般管理費」「施設費」「事故処理費」「租税公課等」から構成されていると説明した上で、直接費と間接費の割合は「100対約32+α」であるとしている。

 直接費のうち、運行費は距離に比例し、「燃料費」「油脂費」「修理費」「タイヤ・チューブ費」「尿素水費」などで構成。自動車関連諸税・保険料については、「自動車取得税」「自動車重量税」「自動車税」「自賠責保険」「任意保険」で構成されているとしている。

 人件費は、時間に比例し、ドライバーや運行管理者の賃金・退職金のほか、福利厚生費が必要不可欠であるとし、内訳については、直接的な福利厚生費のほか、雇用・労災・健康・厚生年金介護の各保険や子供・子育て拠出金などがあると説明している。また、人件費・退職金と福利厚生費の割合は「100対約18」であるとしている。

 燃料費については、車種や距離に応じて変動するが、必要不可欠なコストであり、燃料価格が大きく変動することから、燃料サーチャージ制の導入が重要であると指摘している。

 ガイドラインではこのほか、国交省が違反トラック事業者に対する処分強化を行っていることや、トラック事業者の処分に加えて荷主勧告制度による荷主社名公表が行われる可能性があることなどを説明している。

専用4拠点を新設し医薬品サプライ網構築へ  日通

拠点完成イメージ

 日本通運(齋藤充社長)は8日、新たな医薬品サプライネットワークを構築するため、核となる国内4拠点の倉庫建設に順次着手すると発表した。

 医薬品業界では、日本が加盟する「PIC/S」(医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム)がGDP(医薬品の適正な流通基準)を採用し、日本国内も2018年12月に日本版GDPのガイドラインが発出され、医薬品の物流についても、ガイドラインにのっとった取り扱いが要求されている。同社はこの動きを踏まえ、GDPに基づく品質管理に加え、医薬品供給のBCP(事業継続計画)対応、共同物流や車両のラウンドユースを担う機能など、ドライバー不足への対応を含め医薬品物流の全体最適を実現する医薬品サプライネットワークを構築する。具体的には、従来からの原材料・製品の輸出入拠点である成田・関空メディカルハブに加え、東日本(埼玉県久喜市、延べ床面積6万6千平方メートル)・西日本(大阪府寝屋川市、同6万6千平方メートル)・九州(北九州市、同1万6500平方メートル)・富山(富山市、990平方メートル)に、医薬品に特化した4拠点を新設する。稼働は東日本・西日本・九州が20年8月、富山が同年12月予定で、建設費用は400~500億円を見込んでいる。

 これにより、国内の医薬品サプライチェーン「調達」「製造」「販売」に伴う保管・輸送等の物流プロセス全体を一貫して品質管理し、温度逸脱等のリスクを軽減するとともに、保管や輸送の共同化、医薬品サプライチェーン上における輸配送車両のラウンドユースなど、新たなスキームを採用し、業務効率化と経済性を追求していく。

 新設倉庫の特長として◎規範として日本版GDPガイドラインをクリア◎安全・確実なオペレーションを確保するため、入荷・保管・出荷エリアを明確に区分し、入荷用と出荷用の専用エレベーターをそれぞれ設置(東日本・西日本)◎入出荷作業の際の防虫管理とセキュリティーのために、トラックドック・前室・大型エアシャワーを配置(東日本・西日本)◎定温、保冷の温度管理に加え、輸出入用の保税エリア、特殊医薬品エリアなどサプライチェーンのあらゆるニーズに対応◎保管エリアは温度と湿度を三次元マッピング映像で総合監視◎災害等に備えた、免震構造(一部除く)および非常用発電設備の設置―をあげている。

 10日に開いた記者説明会で野田健司ロジスティクス事業支店長は、温度逸脱・三次元マッピング管理、専用車両での輸送など製薬メーカーに高品質サービスの提供で寄与していく方針を強調し、併せて共同物流等によりコストパフォーマンスの面でも貢献できるとの考えを示した。製品カテゴリーは新薬をターゲットとし、21年1月から本格的に事業をスタートさせる計画で、製薬10社程度に提案をすでに終え、計画目標として年間売上高150億円に設定していると語った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆各界年頭あいさつ
    ☆物流業界の新年会
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(115)『消費税増税はアベノミクス終焉の引き金に(その3)』
    ☆四文字『小型業界の反乱「積合免許」

  • ☆全ト協・日貨協連、12月のWebKIT成約運賃指数は過去最高の137に
    ☆日通、中国からドイツへ自社仕立て専用列車「ブロックトレイン」試験運行開始
    ☆日通、4月から新社員制度導入し賃金・労働条件統一
    ☆国交省・経産省が後続無人システムの隊列走行の実験開始、22日から新東名で
    ☆JILSの遠藤会長、新年記者発表会でデータ共有のプラットフォーム構築が不可欠と強調
    ☆西濃運輸野球部・空手道部、今年の初練習を前に日本一奪還を誓う
    ☆日立物流、日立キャピタルと業務提携契約締結し金流×商流×物流×情流の新イノベーション実現へ
    ☆JR貨物労使共催の新春フォーラム開催

今週のユソー編集室

  • ▼2019年がスタートした。本年は米中貿易摩擦への懸念や、消費増税への不安など、明るい展望を描きづらい1年になりそうだ。
    ▼トラック運送業界をみると、昨年末に成立した改正貨物自動車運送事業法に「魂を入れる」1年となるだろう。改正法で掲げる標準的運賃の行方など、引き続き注視するべき事柄もあるが、肝心なのは個々の事業者の労働環境改善に対する本気度ではないだろうか。
    ▼間もなく始まる春闘では、運輸・交通両労連の統一要求額として、昨年と同額の1万1千円中心が検討されている。長時間労働をしなくても賃金水準が下がらない環境を構築し、人手不足解消への転機となる年にしたい。

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