トラック運行のコスト等、ガイドライン公表 荷主の理解促進図る 国交省
国土交通省は12月27日、トラックの運行に必要なコストの構成概要や、コンプライアンス違反防止につながる効率的な運行事例などをまとめた「トラック運送サービスを持続的に提供可能とするためのガイドライン」を公表した。
国交省では、2016年7月から18年5月にかけて、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」を合計7回開催してきたが、ガイドラインは同検討会での「仕上げ」として、荷主・運送事業者間の共通理解促進を目的に、適正で必要な運賃・料金のコスト構成や、コンプライアンス確保に必要な項目などを取りまとめたもの。
昨年末に成立した改正貨物自動車運送事業法では、標準的運賃の国土交通大臣による告示制度の導入が盛り込まれているが、今般公表されたガイドラインは、荷主と運送事業者が適正な運賃・料金体系を導入する前段階での交渉における「基礎資料」としての意味合いが強い。また、交渉をガイドラインのレベルから一歩前進させるには、すでに策定されている「トラック事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック」などを活用してほしいと国交省では呼び掛けている。
ガイドラインは、経済産業省・厚生労働省・農林水産省との連名で発出され、冒頭、コンプライアンスは安全確保の観点から重要であることを説明した上で、トラックドライバーは改善基準告示で定められた拘束時間や運転時間などを遵守する義務があることを太字を用いて強調。告示で定める「拘束時間」では、点検・回送・運転・荷待ち・休憩などの時間を含むことなどを表を交えて解説し、コンプライアンス違反防止には高速道路利用による運転時間短縮や荷役の長時間化抑制など、荷主側の理解・協力が重要であると指摘している。
運行事例では、一般道経由で拘束時間が16時間を超え違反状態となっていた運行の一部を高速道路利用に置き換えることで、拘束時間を10時間半としてコンプライアンスを確保した例や、受付予約システム・機械荷役の活用により拘束時間を短縮した例を掲載し、いずれも荷主の理解・協力が不可欠であることを示している。
コストについては、直接費と間接費に分けて説明。直接費は、「運行費」「車両費」「人件費」「自動車関連諸税・保険料等」、間接費は「一般管理費」「施設費」「事故処理費」「租税公課等」から構成されていると説明した上で、直接費と間接費の割合は「100対約32+α」であるとしている。
直接費のうち、運行費は距離に比例し、「燃料費」「油脂費」「修理費」「タイヤ・チューブ費」「尿素水費」などで構成。自動車関連諸税・保険料については、「自動車取得税」「自動車重量税」「自動車税」「自賠責保険」「任意保険」で構成されているとしている。
人件費は、時間に比例し、ドライバーや運行管理者の賃金・退職金のほか、福利厚生費が必要不可欠であるとし、内訳については、直接的な福利厚生費のほか、雇用・労災・健康・厚生年金介護の各保険や子供・子育て拠出金などがあると説明している。また、人件費・退職金と福利厚生費の割合は「100対約18」であるとしている。
燃料費については、車種や距離に応じて変動するが、必要不可欠なコストであり、燃料価格が大きく変動することから、燃料サーチャージ制の導入が重要であると指摘している。
ガイドラインではこのほか、国交省が違反トラック事業者に対する処分強化を行っていることや、トラック事業者の処分に加えて荷主勧告制度による荷主社名公表が行われる可能性があることなどを説明している。