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2018年9月10日付 2716号

事業法の改正目指す、トラックドライバーの待遇改善が主目的 プロジェクトの意義強調  全ト協 坂本会長

会見する坂本会長

 全日本トラック協会の坂本克己会長は4日、東京都新宿区の全国トラック総合会館で会見を開き、6月にスタートさせた貨物自動車運送事業法の一部改正に向けたプロジェクトの目的はドライバーをはじめとする労働者の待遇改善であることをあらためて強調するとともに、2021年に法制化から10年を迎える運輸事業振興助成交付金について、「再点検」を行う考えを示した。

 会見で坂本会長は、トラック運送業界で喫緊の課題となっている労働条件の改善には原資が必要であるが、トラック運送業界内では「“悪貨が良貨を駆逐する”状況が続いており、限界にきている」と、依然として不公正競争が発生・継続している現状を指摘。その上で、「“悪貨”のトラック事業者に退出してもらい、“悪徳”な荷主にどう制裁を加えるかを考えねばならない」と述べ、貨物自動車運送事業法の一部改正を通じた事業環境の健全化によって、労働条件の改善につなげていくことがプロジェクトの最大の目的であることをあらためて強調した。

 また、坂本会長は、事業法の一部改正によって、「20年先、30年先の業界のあるべき姿を示したい」とし、その実現に向けて10月10日に高松市で開かれる第23回全国トラック事業者大会などを通じて、業界が「心を一つに」していくことの重要性を訴えた。

 事業法の一部改正に向けては、運輸事業振興助成交付金などで“実績”のある議員立法を念頭に置き、全国の事業者・ドライバーの「思い」をしっかりと取りまとめていくことが重要であるとの考えを示す一方、運賃・料金などの経済的規制については、「どの程度、文章(条文)に落とし込めるか(現段階では)わからない」と述べるにとどまった。

 改正に向けたスケジュールについては、自民党総裁選や国会の運営状況などを勘案しつつ、年明けの通常国会での審議を念頭に、国会議員への働きかけや監督官庁との調整、業界内での意見集約などを進めていくとのイメージを示した。

 運輸事業振興助成交付金については、法の趣旨に基づき有効に活用され、各都道府県の知事や議会からも信頼を得ていると認識を示す一方で、21年に法制化から10年を迎えることや、法律上「当分の間」の制度と位置付けられていることなどを踏まえ、「再点検」を行う必要があるとし、中央出捐金についても、支出項目ごとに必要性の精査などを行っていく予定であることを明らかにした。

台風21号と北海道地震で荷受停止や配達遅延発生 災害相次ぎ物流混乱

 先週の日本は、北海道胆振地方を震源とする大地震と、非常に強い勢力の台風21号に襲われ、物流も大きく混乱した。

 6日に発生した「平成30年北海道胆振東部地震」では、土砂崩れなどによる多数の死者・行方不明者や道内全域での停電など大きな被害が発生したが、道内の交通・物流にも影響が出ている。

 国土交通省によると、国際拠点港湾である苫小牧港では、東地区のコンテナ埠頭背後が液状化したほか、西地区でも岸壁背後用地が沈下し、入港予定の船舶が「沖待ち」する状況が発生。

 道内各空港については電力会社からの送電がストップしたが、いずれの空港も発電機での電源確保を実施している。新千歳・札幌丘珠・函館の各空港については滑走路や空港施設に異常は報告されていない。

 道内高速道路も、道央道や札樽道などの主要ルートが一時通行止めとなったが、その後解除され、7日午前5時現在で通行止めとなっているのは、日高道苫東中央インターチェンジ(IC)~日高厚賀IC間48.7キロメートルのみとなっている。

 鉄道については、脱線などは発生していないが、施設被害についての調査を進めている。また、JR貨物の列車に7本の駅間停車が発生した。

 物流関連施設については、7日午前5時現在、被害情報はないとしている。

 日本通運では6日午後3時現在、人的被害はない。同日、本社と北海道地域ブロック総括に災害対策本部を立ち上げ情報収集等に当たっている。国内航空貨物は同日9時現在、道内全域で停電のため、国内航空便の集配店所は全店電話が不通となっており、停電による信号機稼働停止などの影響により、安全の確認がとれるまでは北海道内の集配を停止しているとアナウンスしている。日通航空コンタクトセンター0120(97)2259の受け付けも停電復旧まで停止する。

 アロー便についても同日午後3時現在、道内全域で集配業務を見合わせ、道全域宛てのすべての荷物の預かりを停止している。

 ヤマト運輸では、施設の大きな被害はなかったものの、北海道の発送荷物および北海道着のクール宅急便・宅急便タイムサービスの荷受を停止。佐川急便も北海道全域で荷物の集配を停止した。このほかトナミ運輸、第一貨物などの各社も、当面の間北海道向け貨物の取り扱いを停止している。

 JR貨物は、社員および貨物列車の運行に支障が出るような施設・設備の被害はなかったものの、北海道全域で運行見合わせの状態となっている。

 日本郵便では6日午前11時現在、北海道宛て・道内でのゆうパック・ゆうパケット・ゆうメールの引き受けを停止している。北海道での引き受け・配達は大幅な遅れが発生しているとし、停電等の影響により、一部の郵便局の窓口業務を休止している。また、お客様サービス相談センターの問い合わせ業務を中止している。

 西濃運輸では、7日午前10時現在、道内全域での集荷・配達を見合わせているほか、北海道宛ての荷受を中止している。

 台風21号については、猛烈な風により各地で道路の通行止めやトラックの横転などの被害が発生したほか、阪神港や関西国際空港の機能が停止するなど、7日朝現在も影響が残っている。

 特に関西国際空港は、大規模な浸水により貨物上屋も被害を受け、日本航空、ANA CARGOともに同空港を発着する全ての国際・国内貨物の取り扱いを停止した。

 日本通運では5日午後3時現在、人的被害はないことを確認。空港内の同社施設で一部破損・浸水が発生している。国内航空貨物の関西国際空港宛ての受託を中止し、大阪・京都府、滋賀・奈良・兵庫・和歌山県の一部で集配を停止。アロー便についても6日午前11時現在、関西国際空港島内、京都市右京区・南丹市の一部で集配不能、神戸市の六甲アイランド・ポートアイランド周辺、大阪府、滋賀・奈良・和歌山県全域、徳島県の一部で遅延が発生している。

 近鉄エクスプレスや郵船ロジスティクスも同様に荷受を停止しており、国際貨物は中部国際空港または成田空港に代替輸送を行っている。

 トラックでは、交通規制等により各社ともホームページ上で関西地区への配達遅延をアナウンスしており、宅配便もヤマト運輸が京都府と大阪府の一部地域で荷受を停止、佐川急便も大阪府の一部で荷受を中止、日本郵便も全国的に遅延が発生しており、国際郵便物も配達の遅れが生じる可能性があるとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字 『規制緩和へ「行政刷新」』
    ☆ウォッチ(88) 『ベイブリッジ「港珠澳大橋」の開通にあたって』
    ☆人物ウィークリー、(公社)全国通運連盟・川勝敏弘理事長

  • ☆日通が中部空港支店上屋増築工事を竣工、貨物増大に対応
    ☆国交省がASEANでのコールドチェーン構築へガイドライン最終案を了承、11月の大臣会合に提出
    ☆全ト協・日貨協連、8月のWebKIT成約運賃指数は130で過去最高値に
    ☆日本郵船・三菱倉庫が共同持ち株式会社設立、港運4社を経営統合へ
    ☆JR貨物、西日本豪雨に伴う代行輸送の増強や山陽線の一部運転再開等でカバー率26%に
    ☆国交省が自動運転ビジネスモデル検討会、実験結果踏まえ中間とりまとめの骨子案を審議
    ☆YHD山内社長がYHCの不適切請求問題で記者会見し再発防止策を発表、引越受注中止へ
    ☆国交省がドラレコ・デジタコ補助の申請受け付け終了、予算枠に到達
    ☆国交省が電気・ハイブリッドなど導入補助の公募開始、事業用対象に28日まで
    ☆国交省の福田大臣官房審議官(自動車局担当)、自動車の安全確保や新たな課題に対応
    ☆日通商事、鮮度流通技術展に出展

今週のユソー編集室

  • ▼先週の日本列島は、猛烈な風雨をもたらした台風が過ぎ去ったと思う間もなく、北海道を大きな地震が襲った。亡くなられた方、けがをされた方に、お悔やみとお見舞いを申し上げる。
    ▼小欄の執筆時点では、北海道地震について被害の全貌すらつかめていないが、1人でも多くの方が救助されることを願ってやまない。あらためてこの国が、災害大国であることを思い知らされる。
    ▼先ごろ示された物流施策大綱では、主要施策の一つとして、「災害に強い物流」の構築が掲げられている。その実現のためには、「強いインフラ」が不可欠であり、老朽化したインフラの更新は、もはや待ったなしの状況だ。

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