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2018年5月21日付 2702号

創立70周年を祝う記念式典を挙行、戦後日本の発展と共に輸送の使命振り返る 全ト協

坂本会長 鏡開きの模様

 全日本トラック協会(坂本克己会長)は14日、東京都千代田区のパレスホテル東京で協会創立70周年記念式典を開催。戦後から現在までの長きにわたり国民生活や経済活動を支えてきたトラック運送業界のこれまでの歩みを振り返るとともに、労働力不足をはじめとする諸課題を抱える業界の今後のあり方を見つめ直し、坂本会長の下、「ドライバーが自信と誇りを持つことのできる業界づくり」に取り組んでいくことへの思いを新たにした。

 全ト協は、前身となる日本トラック協会が1948年2月に設立され、以降、高度経済成長やバブル経済崩壊後の長引く不況、相次ぐ自然災害の発生など戦後日本の時代の変化の中で、トラックという社会に欠かすことのできない「縁の下の力持ち」を束ねる組織として、歴史を重ねてきた。

 この間、規制緩和による競争激化や軽油価格高騰、運輸事業振興助成交付金の継続問題など、トラック運送業界は何度も危機に見舞われたが、全ト協が中心となって、行政、政界、経済界、国民を巻き込む運動や要望活動を展開し、今日まで輸送の使命を全うしてきた。

 70周年記念式典冒頭、第14代会長の坂本会長は、「全ト協の歴史は日本の艱難辛苦の歴史と重なる。敗戦によって焦土と化した各地域での暮らしや商いを発展させるため、諸先輩方が、荷馬車やリヤカーで必要な物品を運び、オイルショックの時にも“トラック業界がやらねば”との熱い思いで輸送の使命を全うしてきた。これまでの諸先輩方のご労苦に対して敬意と感謝を述べたい」とあいさつ。

 阪神大震災や東日本大震災、熊本地震でも全国から救援物資輸送のトラックが出動したことで「日本のトラックここにあり」と、トラックの存在意義があらためて見直されたとの考えを強調するとともに、列席した行政・政界関係者にさらなる支援を求めた。

 今後の業界のあり方については、「現場で汗水流して働いているドライバーが、この仕事に就いて良かったと思い、自信と誇り、充実感を持ってもらえるようにすることが重要」と説明。戦国武将武田信玄の「人は城」の名言を引用し、「トラックドライバーこそ城であり、国の宝という思いで、現場の環境整備を進めていきたい」と述べた。

 来賓あいさつした石井啓一国土交通大臣は、歴代会長・役員の尽力に敬意を示した上で、トラック運送業界で深刻化している労働力不足に対し、生産性向上や人材確保、適正取引の推進などに取り組んでいく姿勢を示した。

 自民党の二階俊博幹事長は、「時代の変化に対し、トラック運送業界もこれまでと同じ調子ではうまくいかないと思う」とし、坂本会長の下、今後の業界の新たな姿を見通す時期に差し掛かっているとの考えを示した。

 来賓あいさつの後、協会幹部らによる鏡開きが行われ、粟飯原一平副会長の音頭で乾杯、歓談に入った。

長門社長が中期経営計画発表、ゆうパック15億個へ 経営資源をシフト  日本郵政

会見する長門社長

 日本郵政の長門正貢社長は15日、東京都千代田区の同本社で「中期経営経営計画2020」発表会見を開き、ゆうパックの引受個数目標を2017年度実績の8億8千万個から20年度に10億5千万個に増加させるとともに、将来目指す姿として「ラストワンマイル物流ネットワークインフラの提供」により、15億個まで伸長させ、郵便・物流事業収益の「荷物」の比率を現行の3割から5割の1兆円に拡大させると語った。

 会見冒頭、長門社長はマイナス金利の影響で、ゆうちょ銀行が苦戦を強いられ、最も厳しい3年間になるとの見通しを示し「将来を見据え、成長の種まきをテーマとした計画」と説明した上で、郵便・物流事業に関しては郵便物の漸減傾向を踏まえつつ、荷物とフィフティー・フィフティーの収益構造に転換させる方針を掲げた。

 その実現に向けて「商品・オペレーション体系の一体的見直しによる荷物分野への経営資源シフト」を重点取り組みとし、集荷担当者を荷物の配達に回すなど人員配置についても見直す。

 合わせて「ライフスタイルの変化を踏まえたサービスの見直し・高付加価値化」として『身近で差し出し、身近で受け取り』をテーマに、ゆうパックのウェブ決済、自宅玄関等の指定場所配達、配達希望時間帯の追加(午後7時~9時)、勤務先への無料転送、コンビニ・商業施設等の受け取り拠点の整備などのサービス改善に取り組む。

 このほか、eコマース市場拡大に対応したゆうパック増加への対応としてAI(人工知能)・自動運転等の新技術の積極的な活用、施設借り入れによるキャパシティー増強など、サービス基盤の強化を図っていく。

 郵便・物流事業の投資計画は局舎等工事・システム更新など1800億円を見込んでいる。

 国際物流事業に関しては、トール社の経営改善とシナジー強化による日本国内のコントラクトロジスティクスの展開を掲げている。

 日本郵政全体の成長戦略としては、幅広い分野で資本提携・M&Aを検討し、3年間で数千億円規模の投資を視野に入れ「規律ある投資」を行っていくとしている。また、新たな収益源の開拓として不動産事業で17年度実績比45億円増の330億円の売り上げを見込んでいる。

今週掲載トピック一覧

  • ☆各証券取引所上場物流企業の売上高・時価総額・ROE・ROAランキング

  • ☆日本郵便の17年度引受個数、ゆうパケット48.9%増などでゆうパックが大幅増加
    ☆SGHDが決算会見、日立物流との協創は新たなステージへ 次期業績は目標上回る見通しに
    ☆セイノーHDの田口社長が決算会見、適正運賃収受進み過去最高の決算に
    ☆トナミHDの綿貫社長が決算会見、働き方改革を中心とした新中期経営計画を発表 売上高1500億円へ
    ☆全ト協が1~3月期トラック運送業界の景況感公表、労働力不足など背景に再びマイナス圏に
    ☆日通、中国・欧州鉄道を利用した日本発着の航空・海上混載一貫輸送サービスを発売
    ☆日立物流、大日本印刷・東芝テックと協業しRFIDを活用した次世代物流サービス実用化へ
    ☆日通、ドイツ・シンガポールの2空港に大型看板広告を掲載
    ☆陸災防、フォークリフト荷役技能検定2級実技の出張試験を実施へ
    ☆山九の中国現地法人が繊維製品の輸出分野で日系企業初となる保税物流センターの認可取得
    ☆アルプス物流が埼玉県加須市内に加須営業所を開設、電子部品対応倉庫も
    ☆日貨協連、次期WebKITの検討スタート
    ☆全ト協・国交省が「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方検討会」開催、女性ドライバーに対するアンケート案など審議
    ☆各社の18年3月期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼上欄記事のとおり、全日本トラック協会が創立70周年を迎え、都内で記念式典が盛大に行われたが、70年の歳月は坂本克己会長が式典でも述べたとおり、「艱難辛苦」の歴史でもあった。
    ▼式典で配られた70年史に目を通すと、「自動車新税」「売上税」「高速道路料金値上げ」「燃料価格高騰」など、トラック運送業界に次々と降りかかる課題に対して、一丸となって総決起大会や陳情活動などを展開し、難局を乗り切ってきたことがわかる。
    ▼現在のトラック運送業界にとって、最大の課題はやはり労働力不足対策と働き方改革だろう。坂本会長の下、汗して働くドライバーが報われる業界づくりが実現することを切に願う。

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