物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2018年5月14日付 2701号

IoTなど活用してスマート物流実現 オープン型データプラットフォーム構築へ  国交省

会見する重田審議官

 国土交通省の重田雅史物流審議官は7日の会見で、内閣府の総合科学イノベーション会議が選定するSIP第2期プログラムに「スマート物流サービス」が採択されたことを報告。ヤマトホールディングスの田中従雅執行役員IT戦略担当をプログラムディレクターに、今後5年間にわたりIoT(モノのインターネット)やBD(ビッグデータ)、AI(人工知能)などを活用して、物流・商流に関するオープン型データプラットフォームの構築に向けた検討や開発、実証実験を進める計画を明らかにした。

 SIPは、「戦略的イノベーション創造プログラム」の略で、2014年度に第1期分として関係10省庁から予算を拠出し、内閣府に325億円を計上。15~17年度にも325億円を計上した上で、17年度補正予算では第2期分として同額を確保した。

 第2期には、12のプログラムが選ばれ、「スマート物流サービス」には17年度補正予算から25億円が配分されている。

 スマート物流サービスの実現に向けては、「モノの動き(物流)」と「取引の動き(商流)」をIoTやBD、AIなどを活用して「見える化」するとともに、そこから得られたデータを蓄積・解析・共有するための「物流・商流データプラットフォーム」を世界に先駆けて構築する。

 これにより、最適な生産計画やトラック共同輸配送による積載効率の飛躍的向上、宅配再配達ゼロなどを実現し、物流の生産性を大きく向上させるとしている。

 6月にも今後5年間の工程表などを盛り込んだプログラムを公表する予定で、その後①物流・商流データプラットフォームの構築②「モノの動きの見える化」技術の開発③「商品情報の見える化」技術の開発―について、それぞれワーキングチームを設置する。

 データプラットフォーム構築の意義について重田審議官は、物流の世界では現場の省力化・ロボット化など、いわば「筋肉・骨格系」の生産性向上については取り組みが進んでいるものの、「神経系」に当たるデータのやり取りは、いまだにFAXや電話などで行われていることも多く、テクノロジーの活用によりデータを幅広い関係者で共有する必要があるとの考えを強調。IoT、BD、AIなどを活用したデータ共有により、ムリ・ムダな在庫や輸送を減らすことで、消費財の「川上」から「川下」の関係者にウィンウィンをもたらすとした。

 これまでデータ共有に向けた取り組みが複数の関係者で試みられたものの、マーケットデータの流出リスクなどにより、実用レベルの実現に至っていないことに対しては、「ICT(情報通信技術)が、リスクを克服できる段階にきている」と述べ、ブロックチェーン技術(データを複数に分散管理してリスク低減を行うインターネット取引システム)などを活用して安全性を確保した上で、経済産業省や農林水産省などと連携しながら可能な限り多くの関係者からのデータ取得を目指す姿勢を示した。

 データプラットフォームについては、中立・公平性を担保した形で、民間事業者などのコンソーシアムによる運営管理を想定している。

 また、「商品情報の見える化」について重田審議官は、単価1円以下の電子タグ開発が不可欠であるとし、東大の研究チームの知見などを生かしながら、電子タグコードの国際標準化などを実現していく考えを示した。

 さらに重田審議官は、プログラムの「出口」については、「単なる研究にとどまらず、形あるものとして、国民に成果を見せる必要がある」とし、あくまで実用レベルでの活用にこだわる姿勢を強調するとともに、5年の計画期間終了を待たずに、年度ごとのパイロット事業などにも積極的に取り組むとした。

千葉にアパレル・雑貨等に適した大型マテハンシステム導入の新センター  センコー

 センコー(福田泰久社長)は紳士服・婦人服および雑貨等の企画・仕入れ・販売事業を展開するユナイテッドアローズの店舗向け物流業務を受託し、きょう14日、千葉県流山市の物流施設「DPL流山Ⅰ」内に大型マテハンシステムを導入した『流山ロジスティクスセンター』を開設する。

 新センターには、全長1.2キロのハンガーラックシステムをはじめ、トーヨーカネツソリューションズ社製の高速での入出荷作業が可能なケース自動倉庫「マルチシャトル」、椿本チエイン製のピースソーター「リニソート」を組み合わせた大型マテハンシステムを導入している。

 大型マテハンシステムの構築にあたっては2社と共同で企画・設計を行い、ユナイテッドアローズの業務特性に適用した仕様とするとともに、これらの機械化、省人化による物流センターのローコストオペレーション化が実現され、安定した商品の供給体制をユナイテッドアローズに提供することができる。

 センコーグループホールディングスでは、今年4月に「AI化プロジェクト」と「ロボティクスプロジェクト」を設置し、グループを挙げて物流センターの機械化、省人化を推進している。

 新センターはユナイテッドアローズの基幹物流センターとして、入荷・品質管理・流通加工・保管・出荷機能を有し、全国および海外の店舗に商品を供給していく。

 ユナイテッドアローズは、物流センター運営の省人化や効率的な運用を図るため、大型マテハン機器を導入した最新型の物流センターを稼働させ、従来までの国内3ヵ所の物流センターから新センターを含めた2拠点体制に再編、物流体制を一新し、センコーは2拠点のうち新センターの運営管理を行う。大手アパレル企業との取引実績や物流管理システムなどのノウハウが評価されたものとしている。

 新センターの施設規模は倉庫面積3万551平方メートル、主要設備としてハンガーラックシステム、ケース自動倉庫、ピースソーターなどを備える。

 ユナイテッドアローズでは、今回の物流センターの再編により◎人手不足による物流費の上昇◎物流費の売上高比率の上昇◎複雑化した物流運営とコスト構造の不明確化―の物流における三つの課題を解決し、効率的で安定的な物流運営に加え、今後の小売環境や物流業界の変化に対しても柔軟に対応できるキャパシティが生まれ、中長期成長に向けて大きな効果につながると考えているとコメントしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字 『40年前の「経営者考」』
    ☆ウォッチ(84) 『最近の中国通関制度改正~米中通商摩擦交渉と並行して~』

  • ☆住友倉庫が南本牧に新倉庫建設へ、独自開発のトラック予約システム導入し来年6月竣工予定
    ☆西濃運輸が新静岡支店開業、敷地は旧支店の1.9倍に
    ☆全ト協・日貨協連、4月のWebKIT成約運賃指数は11ヵ月連続で前年同期上回る
    ☆国交省が第7回運賃・料金検討会開催、トラック運行コストの共通認識醸成を
    ☆センコーが上海市に新センター稼働、3温度帯の物流ニーズに対応
    ☆東ト協の会長候補者に千原会長と浅井常任理事、30日の理事会で多数決
    ☆全流協が18年度事業報告会を開催、新会長に森ヤマト運輸会長を選任
    ☆国交省・東日本高速、外環三郷南~高谷間が6月2日開通
    ☆LEVOが低炭素型ディーゼルトラック補助の基準額など公表、6月11日公募開始
    ☆澁澤倉庫が横浜市の社有地の第2期再開発計画公表、投資額は49億円
    ☆各社の18年3月期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼運転手のいない車が止まり、待機していた人が荷物を取り出すと、再びゆっくりと動き出す。先日行われたヤマト運輸のロボネコヤマトプロジェクトの実験の一幕だ。
    ▼実験は閉鎖的な環境で行われ、無事成功したが、振り返ってみると、むしろ完全自動走行社会実現までの道のりの遠さを思い知る。日々刻々と変わる道路情報の取得や事故時の対応など、想定されるハードルは高い。
    ▼ただ、それでも自動走行は必要だと思う。人手不足対策はもちろん、中国で実験されている路車連携型が実用化されれば、高齢化社会での事故削減にも寄与するはずだ。「千里の道も一歩から」。今回の実験が、やがて大きく実を結ぶことを願う。

戻る