IoTなど活用してスマート物流実現 オープン型データプラットフォーム構築へ 国交省
国土交通省の重田雅史物流審議官は7日の会見で、内閣府の総合科学イノベーション会議が選定するSIP第2期プログラムに「スマート物流サービス」が採択されたことを報告。ヤマトホールディングスの田中従雅執行役員IT戦略担当をプログラムディレクターに、今後5年間にわたりIoT(モノのインターネット)やBD(ビッグデータ)、AI(人工知能)などを活用して、物流・商流に関するオープン型データプラットフォームの構築に向けた検討や開発、実証実験を進める計画を明らかにした。
SIPは、「戦略的イノベーション創造プログラム」の略で、2014年度に第1期分として関係10省庁から予算を拠出し、内閣府に325億円を計上。15~17年度にも325億円を計上した上で、17年度補正予算では第2期分として同額を確保した。
第2期には、12のプログラムが選ばれ、「スマート物流サービス」には17年度補正予算から25億円が配分されている。
スマート物流サービスの実現に向けては、「モノの動き(物流)」と「取引の動き(商流)」をIoTやBD、AIなどを活用して「見える化」するとともに、そこから得られたデータを蓄積・解析・共有するための「物流・商流データプラットフォーム」を世界に先駆けて構築する。
これにより、最適な生産計画やトラック共同輸配送による積載効率の飛躍的向上、宅配再配達ゼロなどを実現し、物流の生産性を大きく向上させるとしている。
6月にも今後5年間の工程表などを盛り込んだプログラムを公表する予定で、その後①物流・商流データプラットフォームの構築②「モノの動きの見える化」技術の開発③「商品情報の見える化」技術の開発―について、それぞれワーキングチームを設置する。
データプラットフォーム構築の意義について重田審議官は、物流の世界では現場の省力化・ロボット化など、いわば「筋肉・骨格系」の生産性向上については取り組みが進んでいるものの、「神経系」に当たるデータのやり取りは、いまだにFAXや電話などで行われていることも多く、テクノロジーの活用によりデータを幅広い関係者で共有する必要があるとの考えを強調。IoT、BD、AIなどを活用したデータ共有により、ムリ・ムダな在庫や輸送を減らすことで、消費財の「川上」から「川下」の関係者にウィンウィンをもたらすとした。
これまでデータ共有に向けた取り組みが複数の関係者で試みられたものの、マーケットデータの流出リスクなどにより、実用レベルの実現に至っていないことに対しては、「ICT(情報通信技術)が、リスクを克服できる段階にきている」と述べ、ブロックチェーン技術(データを複数に分散管理してリスク低減を行うインターネット取引システム)などを活用して安全性を確保した上で、経済産業省や農林水産省などと連携しながら可能な限り多くの関係者からのデータ取得を目指す姿勢を示した。
データプラットフォームについては、中立・公平性を担保した形で、民間事業者などのコンソーシアムによる運営管理を想定している。
また、「商品情報の見える化」について重田審議官は、単価1円以下の電子タグ開発が不可欠であるとし、東大の研究チームの知見などを生かしながら、電子タグコードの国際標準化などを実現していく考えを示した。
さらに重田審議官は、プログラムの「出口」については、「単なる研究にとどまらず、形あるものとして、国民に成果を見せる必要がある」とし、あくまで実用レベルでの活用にこだわる姿勢を強調するとともに、5年の計画期間終了を待たずに、年度ごとのパイロット事業などにも積極的に取り組むとした。