鉄道部門黒字を「死守」 必要な投資は継続、繁忙期の3月にはイールドマネジメント強化も JR貨物田村社長
JR貨物の田村修二社長は18日の定例記者会見で、鉄道事業部門の2年連続の黒字達成を「死守する」と述べるなど、あらためて強い意欲を示した。
田村社長は会見で、本年度の残り3ヵ月間について、閑散期に当たる1月2月は量の確保を優先し、繁忙期の3月は地域特性なども勘案しながら、特にスポット的な需要に対して割高な運賃を設定するなど、今まで列車の積載率などに応じて行ってきたイールドマネジメントを、さらに強化していく考えを示した。
荷動きについては、積合せ貨物や飲料水などで一定の動きがあると見込んでおり、昨年末のような荷主の出荷調整による荷動きの平準化も図られると予想。鉄道貨物輸送に対する需要の盛り上がりを期待するとした。
一方で、それらの増収策と併せ、本年度は人件費や修繕費等で必要な投資を行っていく方針を掲げており、増収分と同程度のコスト増が発生していることから、収入と経費のバランスを慎重に見極めながら「鉄道貨物部門の黒字を死守する」姿勢を強調。現段階での見通しについても「楽観はしていないが、3月末まできっちり仕上げていきたい」と力を込めた。
来年度以降の取り組みについては、3月に実施するダイヤ改正を基に、往復実車輸送の実現などこれまでの営業施策の深化を図ることや、「東京レールゲート」など大型物流施設整備および各地方主要拠点での同様の施設整備と鉄道貨物誘致に全力投球で臨むこと、タイなど海外への技術支援に積極的に取り組むことを挙げた。
このうち「東京レールゲート」については、昨年12月に新たな駅事務所を開設し、現在第2段階として、2年後の稼働を予定している「WEST棟」の入札や詳細設計に取り掛かっていることを説明。「各事業者に対して大まかな案内をしているが、興味を持たれている事業者は多い。約300億円を投じる“社運を賭けた”プロジェクトだが、各主要駅に同様の大型施設を整備し、鉄道貨物の増送に結び付けたい」と意欲を示した。
このほか会見に同席した犬飼新取締役営業統括部長が、鉄道利用運送(通運)事業者との間で懸案となっているオフレールステーション(ORS)の新営業所化について、「収支の改善傾向が見られないORSについて、年度内には方向性を示したい。一律に行うのではなく、現地の通運や荷主に理解を得ながら進めていく」と語った。