大綱推進プログラム、政策ツールとして最大限に活用 重田物流審議官が会見 国交省
国土交通省の重田雅史物流審議官は12月27日の定例会見で、7月に閣議決定された総合物流施策大綱(2017~20年)の具体的な施策や達成時期などを盛り込んだ推進プログラムについて、1月中にも取りまとめる計画であることを明らかにするとともに、トラックの中継輸送を改正物流効率化法の認定対象とする方向で検討を進める姿勢を示した。
重田物流審は推進プログラムについて、12月に行われた前大綱(13~17年)の政策レビューで、未達項目の目標見直しの指摘がなされたことを踏まえた内容にする必要があるとし、現在関係の各省・各局で策定作業を進めていることを説明、1月中に局長級会議で決定する計画であることを明らかにした。
また、「推進プログラムも基本的には政策の手段。物流の人手不足を乗り切った暁に見える『強い物流』のためのツール」とし、生産性向上などを通じた物流強靭化の実現に推進プログラムを最大限活用していく方針を示した。
2018年度予算については、大綱に示された六つの視点に応じて必要であると思われるものに関して新規も含めて要求を行ったとし、認められた予算のうち、物流効率化法関連の支援制度については、新たな枠組みの中で物流の効率化に取り組もうとしている通運事業者やベンチャー企業などの後押しになる「成果を生んでいる予算」であるとの考えを強調した。
一方で、モーダルシフトや宅配ロッカー関連の補助制度で一部見直しが行われたことについて、「もっともだと思う部分もある」とし、これまで行ってきたJR貨物に対する補助について「手法としていかがなものか」と述べ、モーダルシフト推進には鉄道事業者への補助のみに固執せず、幅広い関係者の知恵やパートナーシップを引き出すなど実態を見据えた手法を活用していくべきとした。
16年10月の施行から約1年3ヵ月を経た改正物流効率化法の成果については、63件の認定が行われており、5年間で250件、年間50件の目標に対し、「まずまず」と評価する一方、「件数よりも一件一件について優良性・先進性のあるプロジェクトか吟味する必要がある」と説明。認定事業者については、一件平均3~4社で「顔ぶれを見ると、“いい線”いってる」とし、異業種や同業他社など多様な組み合わせによる取り組みが進んでいることから「改正物効法がブレークスルーのツールになっている」と評価した。
また、認定63件のうち32件を占めるモーダルシフトについては、約半数が500キロメートル以下の輸送であることを説明した上で、「交通経済学の上ではコストが高くなるとされる500キロメートル未満の輸送でもモーダルシフトに対する一定の需要がある」とし、これは荷主が将来トラック運賃が上昇することを見込んだ動きであるとの分析を示した。
さらに、現在自動車局で普及に向けた実証実験などを行っているトラックの中継輸送について「物効法で拾ってもいいと思う」と述べ、改正物効法の認定対象とすることに意欲を示した。
そのほか、会見の質疑応答での発言要旨は次のとおり。
―大綱の六つの視点のうち「見える」をどうとらえるか。
物流のオペレーションや機能について世の中の理解が進み、危機意識も共有できている。運賃値上げの話が出た時に「見える化」のツールを持っていると強い。行政として具体的な数字を示すことはできないが、どうしてその値段になるかについて「見える化」していることは重要だ。今は物流が大変であることを荷主も理解しているが、一段落すればコスト削減の流れになる。「見える化」ですべてをさらけ出して、悪しき慣習は変えた方がいい。物流サイドがやる必要のないものには「ノー」と言うべき。
―物流への「一物多価」の導入は可能か。
サービスとコストの関係を見えるようにすることが重要。(BtoBなどでは)すでにサービスレベルに応じた運賃は導入されていると思う。最大の着荷主は一般消費者で、昔は規制で誘導することができたが、現在はマーケットメカニズムを基本に、上限と下限を定めるのが手法としてはいいと考えている。
―物流事業者を苦しめる商習慣は無くすことができるか。
経団連などは「協力する」と言っているが、それだけではだめ。機運醸成も大事だが、荷主の物流担当役員の考え方が変わらなければ難しい。昔の物流担当役員は発言力がなかったが、今は経営企画のエース級を充てると聞いている。今後は、各業種のトップスリー企業にフォーカスした働きかけなどを考えている。