自動車運送事業者向け、脳血管疾患対策ガイドライン策定の検討開始 健康起因事故抑止へ 国交省
国土交通省は、事業用自動車ドライバーの健康起因事故が増加傾向にあることを踏まえ、事業用自動車健康起因事故対策協議会を設置。8日に東京都千代田区の中央合同庁舎で第1回協議会を開き、「自動車運送事業者のための脳血管疾患対策ガイドライン」(仮称)の策定に向けた検討を開始した。早ければ年内にもガイドラインが策定される見込み。
2012年~16年の5年間に事業用自動車で健康起因事故を起こしたドライバーは1046人(事故報告書ベース)で、このうち脳疾患によるものが16%、心臓疾患によるものが14%を占めている。健康起因事故に起因する事故報告件数は、12年の143件に対し、16年には304件と2倍以上になっており、今後も増加することが予想されている。
こうした状況を踏まえ、昨年12月16日に公布された改正道路運送法と貨物自動車運送事業法には、「事業用自動車の運転者が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で事業用自動車を運転することを防止するために必要な医学的知見に基づく措置を講じなければならない」との内容が盛り込まれるとともに、12月2日には衆議院国土交通委員会で「脳ドック、心臓ドックなど、広く健康起因事故対策に必要なスクリーニング検査について、(略)検査の結果に応じて事業者として取るべき対応を含んだガイドラインを作成すること」との委員会決議がなされた。
協議会の設置はこうした流れを受けたもので、酒井一博大原記念労働科学研究所所長を座長に、医療関係者や桝野龍二全日本トラック協会理事長ら自動車運送事業者関連団体担当者、坂本克己大阪運輸倉庫・日本タクシー・北港観光バス会長ら自動車運送事業経営者らで構成されている。
第1回協議会では、「運転者の健康状態の把握」と「結果を踏まえた対応」からなるガイドラインの案が示された。
「運転者の健康状態の把握」では①脳血管疾患対策の必要性、正しい理解②脳血管疾患早期発見のための脳健診の活用③脳健診の結果必要となる精密検査・治療の実施―について、脳血管疾患の概要や健診受診までの基準、結果を踏まえて実施すべき対応などについて示している。「結果を踏まえた対応」では、治療状況や症状に合わせた適切な勤務形態の重要性や、健診を受けたドライバーに対する事業者・運行管理者の役割などについて説明している。
案に対して委員からは、「さらに分かりやすい内容とする必要がある」などの意見が出された。
今月下旬にも第2回協議会を開き、第1回協議会で出された意見を踏まえた修正案を示す。脳疾患対策ガイドラインを策定した後、心臓疾患についての対策ガイドライン策定に着手する計画。