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2017年8月28日付 2668号

9月1日にベトナムでクール宅急便スタート、現地企業と荷主契約 3ヵ月で3千個見込む  Yamato365

当初はホーチミン市内でのみ展開する

 ヤマトグループの東南アジア地域統括会社ヤマトアジア(リチャード・チュア・キン・セン社長)と、ベトナムの「BA SAU NAM TRADING LOGISTICS」(365エクスプレス、ディン・ヴィン・クオン代表)による合弁会社「Yamato 365 Express」(松田弘代表)は9月1日から、ベトナムでクール宅急便事業を開始する。

 多数の日系企業が進出し、中国やタイに次ぐアジアの製造拠点に発展しつつあるベトナムでは、中間所得者層の拡大などにより、日本の食材などに注目が集まると同時に、食の安全に対する意識も高まっている。反面、国内の保冷配送の仕組みやネットワークが十分整備されていないことが課題だった。

 ヤマトグループはその課題を解決するため、365グループと合弁会社を設立し、同グループが持つベトナム国内での配送ノウハウや貿易物流機能等と、ヤマトグループのクール宅急便のノウハウを組み合わせ、ベトナムにおけるクール宅急便事業の展開を通じて、保冷宅配市場の拡大や、ベトナム国民の豊かな食文化の実現に貢献していくとしている。

 ベトナムでのクール宅急便は、0~10度の冷蔵帯と、マイナス15度以下の冷凍帯を取り扱い、利用対象者は契約荷主のみ。料金は契約荷主との相対契約により決定する。事業開始時の提供エリアはホーチミン市内のみで、戦力はトラック2台とバイク5台を用意し、順次増備を図る。

 利用シーンは、ベトナム向け輸入高級生鮮食材や、ベトナム国内で生産された海産物・農産物等の小売店・レストランなどへの店舗向け冷蔵・冷凍配送を想定しており、事業開始に当たってベトナム進出企業向けにコンサルタント事業を展開する、タイソンホールディングス投資コンサルティングと契約を締結した。2017年(9~12月)の取扱個数は2千~3千個を見込んでいる。

 当初はクール宅急便のみの取り扱いとなるが、今後通常の宅急便についても取り扱いを検討していく。

 18年1月を目途に、ダナン、ニャチャン、ダラットなどの農水産品の生産地からホーチミン市内への配送体制を構築し、19年にはハノイ市内への配送エリア拡大を目指す。また、ベトナム国内での日本産品販売を検討している日本企業向けに、物流面だけでなく、365グループの機能を生かしたサポートも行っていく考え。

 22日にはホーチミン市内で記者会見を行い、ヤマトホールディングスから山内雅喜社長が出席した。

海外会社・航空輸出、国際業績2桁伸長 第1四半期好調に推移  日通

会見の模様、右から宮脇執行役員、杉山常務理事、猪野常務理事

 日本通運(齋藤充社長)は22日、2018年3月期第1四半期の海外会社・航空事業・海運事業の業績を発表した。

 海外会社(17年1~3月)の売上高は898億700万円の前年同期比11.1%増、営業利益27億3600万円の69.0%増と2桁の大幅伸長で推移している。

 地域別では、米州はアメリカ~メキシコ間の自動車関連のトラック輸送が引き続き堅調で、航空輸出の回復と海運輸出の増加などにより、売上高220億7300万円の5.2%増。欧州はオランダでの倉庫配送業務の新規獲得や既存顧客の取り扱いの増加、イタリアでのアパレル関連の輸出増、ドイツでは自動車関連、電子機器関連が堅調に推移し、フランス・イタリアでは非日系顧客の取り扱いが拡大した。売上高214億7400万円の11.2%増。

 東アジアは倉庫配送・トラック輸送が堅調で、昨年後半から復調した航空輸入・海運輸出入に加え、航空輸出も回復した。売上高268億2400万円の11.4%増。

 南アジア・オセアニアは倉庫配送が堅調で、電子部品関連や非日系顧客の医薬品関連を中心に航空輸出が復調。売上高194億3500万円の18.0%増。

 同日の記者会見で、海外会社を担当する宮脇一郎執行役員は、第2四半期についても、米州は自動車関連、欧州はアパレル関連、東アジアは自動車・電子機器関連、南アジア・オセアニアは電気製品、電子部品等が引き続き堅調に推移したと説明した。

 航空事業は売上高381億7600万円の20.4%増で、輸出は222億8500万円の34.5%増、輸入は63億5400万円の12.1%増、国内は95億3600万円の0.7%増。

 2桁の大幅伸長を示した輸出の地域別動向を見ると、米州向けは中西部・メキシコ向けを中心とした自動車関連の出荷が旺盛で、52.4%の大幅増を記録。欧州向けはドイツ向け自動車関連部品が堅調で、1.2%増。アジア向けは台湾・韓国向けの半導体関連や中国・香港向けの液晶・電子部品が堅調で、南アジア向けも電子部品、自動車関連が底堅く推移し、アジア全体では35.4%増の大幅増となった。

 輸出はアジア発の電子部品、スマートフォン関連などが底堅く、自動車関連のスポット出荷もあり、3.0%増。生鮮貨物はマグロの出荷は伸び悩んだもののサーモンや切り花が堅調で、1.7%増。

 国内は自動車関連、家電修理品が堅調で、魚介類は天然物が不漁で低調であった反面、養殖マグロが堅調。特定信書便輸送も大幅に伸長した。

 航空事業を担当する杉山千尋常務理事は業績好調の要因として、同社が現在推進しているワンストップ営業・アカウント営業の取り組みの成果が挙がってきていると説明した。

 海運事業の売上高は315億7600万円の1.4%増で、輸出は149億8200万円の0.3%増、輸入は98億7100万円の3.2%増、国内は67億2200万円の1.4%増。

 輸出は自動車関連設備、半導体関連が好調で、自動車・インフラ関連部材等の取り扱い増で増収につながった。

 輸入は、雑貨・アパレル・太陽光パネルなどが堅調に推移した。

 国内は、東京~北海道航路は東京発が飲料類、北海道発は原料糖が堅調。東京~九州・瀬戸内航路は東京・九州発ともに飲料類が堅調だった。

 海運事業を担当する猪野和則常務理事は、第1四半期から海外引越の収入区分を海運から航空に変更した影響額が7億7300万円あり、これを補正した場合、前年同期比で輸出は5.3%増、輸入は3.5%増、全体で3.9%増の伸長率になり、増収傾向にあることを説明した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(75) 『現代版シルクロード「一帯一路」は構想から具体的展開へ(その1)』
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(87) 『トラックドライバー不足再考(その5)』
    ☆四文字 『ILO条約と「労働時間」』
    ☆日中ビジネスワンポイント(166) 『上海は暑い』

  • ☆国交省自動車局の平嶋貨物課長が会見、総合物流施策大綱で示された「六つの視点」に基づく具体的な施策の推進に注力 トラックにも反映
    ☆国交省が第4回物流用ドローンポート連絡会議を開催、9月上旬にクラウドシステムの機能検証を実施
    ☆センコーが青森県に同社初の物流センター「青森物流センター」開設、ドラッグストアの店舗配送向け拠点
    ☆通運連盟が10月5日に「労働力不足に対応した物流のあり方に関するシンポジウム2017」開催、現場の生産性向上へ
    ☆厚労省が「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」を発表、トラック運転者の所定外労働理由は「手待ち」がトップ 荷主の理解不足深刻
    ☆関運局、9月13日に改正物効法の説明会を開催
    ☆SGHDが「イクボス宣言」を行う、働き方改革実現へ
    ☆スタートトゥデイとヤマト運輸がZOZOTOWN購入商品の受取先としてPUDOステーションなど選択可能に、EC業界初
    ☆関西エアポートが国際航空輸送関連事業者と協力して「KIX Pharmaコミュニティ」形成、医薬品航空輸送の認証目指す 三菱倉庫など6社が参加
    ☆社整審道路分科基本政策部会、国交大臣に今後の道路政策で建議

今週のユソー編集室

  • ▼本紙でも前号で取り上げたが、厚生労働省がこのほど発表した資料によれば、同省が2016年に監督を実施したトラック事業場のうち、83.2%に労働基準関係の法令違反が認められたという。
    ▼その他の産業の数字がないので比較はできないが、やはりその割合の高さには暗然とさせられる。15年の数字からは2.6ポイントの改善が見られているが、これはおそらく監督実施事業場の数が11.6%増えていることによるものだろう。
    ▼いずれにせよトラック運輸産業の多くの現場が法違反の状態にあるわけで、業界の自助努力はもちろん、荷主起因の法令違反の解消のために、行政の力も借りながら、一刻も早く改善していかなければならない。
    ▼道路貨物運送業はまた、過労死等の労災補償ワーストワン業種でもあるが、これについても平均年齢の高さと無関係ではないだろう。労働環境と業界イメージを改善して若年労働者の確保することが、どうしても必要だ。

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