物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2017年7月31日付 2665号

働き方改革のコスト増対応、 宅配便等値上げへ クール便や家電設置も  佐川急便

代金引換サービス「e―コレクト」代引手数料の改定

 佐川急便(荒木秀夫社長)は26日、飛脚宅配便・飛脚ラージサイズ宅配便などを含む広範囲なサービスの運賃・料金・手数料について、11月21日から値上げすると発表した。近年、社会的な課題となっている、「働き方改革」による労働環境改善に伴うコスト増加に対応するものとしており、同社では値上げと同時に①早朝・深夜の配達委託や個人宅配送の協力会社増強など配達力の強化②便数増強など幹線輸送および中継機能の強化③新入社員の初任給増額や週休3日制エリアの拡大など採用活動の強化・従業員確保―に取り組むとしている。

 トラック運送業界では、ヤマト運輸が本年9月から宅急便の基本運賃の値上げを行うと発表しており、日本通運も今月から一般貨物自動車運送事業の届出運賃の値上げを行っている。今回佐川急便が宅配便を含む各種サービスの値上げを行うことで、適正運賃収受に向けた取り組みが、一層加速化するものと見られる。

 佐川急便の値上げの内容は次のとおり。金額はいずれも税別。

 【飛脚宅配便・飛脚ラージサイズ宅配便の運賃改定(100サイズ以上のみ)】

 《改定内容》◎飛脚宅配便=全地帯一律で100サイズは60円、140サイズは230円、160サイズは180円を現行運賃に追加◎飛脚ラージサイズ宅配便=改定率は最少で1.1%、最大で33.3%、平均で17.8%値上げ。

 《改定の背景》◎集配コスト増加に伴う対応◎コンビニや宅配ロッカーなど受け取り方法の多様化への対応◎輸送品質の維持向上に伴う投資コストの増加。

 【飛脚特定信書便の運賃改定(100サイズ以上のみ)】

 《改定内容》飛脚宅配便100サイズ以上の改定に伴い、同運賃を適用する飛脚特定信書便運賃も同内容で改定。

 【スキー用具適用サイズの変更】

 《改定内容》スキー用具の受託時の適用サイズ上限を、現行140サイズから160サイズに引き上げ。

 【飛脚国際宅配便の受託時の容積重量算出基準の変更】

 《改定内容》飛脚国際宅配便の受託時の容積重量算出基準を、1キログラム当たり6千立方センチメートルから5千立方センチメートルに改定。

 【大型家具家電設置輸送の設置料金の改定】

 《改定内容》1個口出荷の場合の家電設置料金について、170~300サイズまで700円、350・400サイズが1200円、400~550サイズまで1700円、600サイズが2200円、それぞれ現行料金に追加。複数個口は1個増えるごとに1500円追加。

 《改定背景》◎設置委託費用の高騰◎物量増加に伴う一時保管場所の確保とコスト増加。

 【代金引換サービス「e―コレクト」代引手数料の改定】

 《改定内容》=上表参照=

 《改定背景》高額な代金引換サービスに関しては、取り込み詐欺などのリスクが非常に高く、ツーマン体制で対応しており、現行の手数料ではサービスの維持が難しい。

 【飛脚クール便付加料金改定】

 《改定内容》全地帯一律で、60サイズが現行150円を250円に、80サイズが現行150円を300円に、100サイズが現行250円を400円に、140サイズが現行300円を650円に、それぞれ値上げ。

 《改定背景》◎輸送品質の維持向上に伴う投資コストの増加◎取扱個数増加に伴う施設増強への対応◎100サイズ以上の取扱個数の増加など取り扱いサイズの変化◎フロン排出抑制法への対応に伴う冷凍冷蔵施設点検コストの増加。

5年間で女性ドライバー比率0.4ポイント増加、さらなる雇用促進へ  全ト協青年部会

 全日本トラック協会青年部会(山本明徹部会長)はこのほど、2~3月に部会員約5300者を対象に実施した「トラック運送業界における女性雇用促進に関する実態調査」の結果を公表。男女のドライバー数について今回調査と5年前の前回調査の両方に回答した568者での女性ドライバー比率は、前回調査に比べ0.4ポイント増加しているものの、わずか2.8%にとどまっており、女性ドライバーのさらなる活躍促進に向けた諸施策の推進が求められている。

 調査は、全国的な女性の雇用実態や課題、要望事項などを把握して女性雇用に関する今後の方向性を取りまとめ、経営改善情報委員会や関係行政などに幅広く展開するための基礎資料として活用することを目的に実施しているもので、全国の青年部会員5300者に電子メールによる依頼を行い、12.3%に当たる650者から回答を得た。

 回答した部会員のうち、女性ドライバーを雇用しているのは38.3%で、現在雇用している回答者の8割以上が今後も雇用したい(「雇用を増加させたい」34.1%、「条件が合えば雇用したい」47.4%)と考えている。

 ドライバーの男女比は、女性が2.8%と2%台にとどまっているが、保有車両数51~100台では3.2%、101台以上では3.0%と3%台に達している。

 女性ドライバーの採用方法は、「社員や知人、取引先等による紹介」が57.4%で最も多く、「人」が介在した形で女性ドライバーを採用しているケースが多いことが推察される。

 女性ドライバーの雇用上の問題については、女性が定着傾向にある回答者(199者)では、「急な欠勤の際の代替要員確保」が43.2%で最も多く、女性が定着しない傾向の回答者(83者)では「技能や体力不足等作業の限定化」が65.1%でトップ。

 業務内容に関する女性定着への取り組みについては、「宿泊を伴う長距離運行をさせない」が定着傾向回答者では25.1%、非定着傾向回答者では16.9%で、いずれもトップ。

 管理面での取り組みについても、「男女差別ない人事評価、賃金制度」が定着傾向回答者で71.4%、非定着傾向回答者で27.7%と、回答比率の幅は多いもののいずれもトップ。

 これらの調査結果から女性ドライバーに関する今後の方向性について報告書では、事業者では柔軟な勤務体系の導入検討や男女区別のない評価制度など、トラック協会では女性ドライバーの雇用・定着に関するセミナーの開催や優良事例の周知などを挙げている。

今週掲載トピック一覧

  • 夏季第2特集号
    ☆車両整備特集
     日通商事整備製作部
     SGモータース
     ヤマトオートワークス
    ☆臨海鉄道特集『発着バランス改善へ、到着誘致に力を入れる~鹿島臨海鉄道』
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(85)『トラックドライバー不足再考(その3)』

  • ☆日通、成田空港に3温度帯対応の新物流センター開設
    ☆イオンとサッポロがRORO船共同運航、コストやCO2削減へ
    ☆ヤマトHD・Creww、宅急便にしばられない新ビジネスの創出に向けてHPでアイデア募集
    ☆全ト協、社会資本整備審議会国土幹線部会のヒアリングで割引制度の継続など訴える
    ☆ヤマトシステム開発、ストレスチェック診断業務をワンストップで提供する支援サービス開始
    ☆国交省奥田自動車局長が会見、働き方改革実現に向けてトラック予約システムの導入推進など生産性向上に取り組む考え示す

今週のユソー編集室

  • ▼すでに本紙でも報じているが、政府の「働き方改革実行計画」で定められた、自動車運転者の時間外労働の上限規制について、運輸労連が法案の条文修正を目的とした、署名請願活動を展開している。
    ▼猶予期間が設けられ、しかも期間後に適用される上限時間が、一般則よりも大幅に長いという計画の理不尽さは、小欄でも何度か取り上げている。法案成立のぎりぎりまで粘ろうとする、その取り組みを応援したい。
    ▼厚生労働省などは「経済実態に即した」規制だと言い張るが、過労死認定ワースト産業という“健康実態”にこそ目を向けるべきではないか。若年労働者の確保難が伝えられる今、誰がそんな過酷な産業に、身を投じたいと思うのだろう。
    ▼政府主導の労働条件改善の動き、そして、それを背景とした運賃改定の流れ、これらを歓迎する業界関係者は多いに違いない。だからこそ、政府はいま一度原則論に立ち戻り、“実態”の改善に動いてほしい。

戻る