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2017年6月26日付 2661号

大規模倉庫の防火等の対策、ガイドライン策定へ 国交省消防庁の検討会が報告書案

第4回検討会では報告書案をまとめた

 国土交通省と消防庁は21日、東京都千代田区の中央合同庁舎2号館で「第4回埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」(座長=小林恭一東京理科大学総合研究院教授)を開催した。検討会では、今年2月に発生したアスクルの大規模倉庫火災の教訓を生かし、早期に被害を軽減するための措置などを盛り込んだガイドラインの策定などを提言する報告書案をまとめた。

 報告書は、最終となる今回の検討会で得られた意見を基に微修正し、座長一任の形でまとめる。

 報告書案の提言では、総括として◎コンベヤーや物品による防火シャッターの閉鎖障害を起こさないための対策◎事業者による火災発生時の初動対応の実効性を図る対策―など、大規模倉庫を対象とした対策の必要性を強調。火災が発生・拡大した場合でも効率的な消火活動を行うため「各消防本部の大規模倉庫を想定した体制の強化や、倉庫の実情に応じた事業者による自主的な取り組みを進めることが適当」として、次の各項目(抜粋、要約)を具体的な対策に挙げている。

 【初期火災の拡大防止を図るための方策】
 《防火シャッターの確実な作動に関する対策》
 ◎国交省が、大規模倉庫を対象に、電線のショートによる被害を防止する措置を義務付ける。
 ◎国交省が、防火シャッターの閉鎖障害を防止する基本的な維持管理指針を示し、大規模倉庫の事業者が各倉庫で自主的に維持管理計画を策定し、点検に取り組むよう指導するとともに、大規模倉庫以外の倉庫においても維持管理の参考とするために、留意事項の周知を図る。事業者は各倉庫で防火シャッターに関する「維持保全責任者」と、コンベヤー等の確認を行う「設置責任者」を定め、両者は点検結果を記録し、適切に保存する。特定行政庁は消防本部と連携して、計画に応じた適切な運営がなされているか調査する。

 《事業者による初動対応》
 ◎事業者は、実際に屋外・屋内の消火栓を使用し放水するなど、より効果の高い消火訓練を定期的に実施する。火災の発生場所や燃焼物などを具体的に想定して、模擬的な通報訓練を行う。
 【より効率的な消火活動を実現するための方策】
 《消防本部における対策の強化》
 ◎各倉庫の警防計画の策定。
 ◎大規模倉庫における消火活動の要領の策定。
 ◎広範囲・長時間活動を勘案した消防隊の効率的な活動。
 ◎外壁等の破壊および水利の補充に関する協定の締結。
 ◎住民等への適切な情報提供。
 ◎大規模火災等に対するアドバイザー制度の導入。
 《早期に被害を軽減するための措置に関するガイドライン》
 ◎消防庁は国交省と連携して事業者向けのガイドラインを策定し、各倉庫の状況に応じた取り組みの実施を促す。
 ◎2階で火災が起きた時に備え、消防隊が有効に進入できる経路として直接はしごなどで進入するための進入口や、区画された付室を有する階段・非常用エレベーターなどを設けることが有効。
 ◎倉庫外周部と全く接していない防火区画が存する場合、建物中央部での消防活動が困難になる場合があることから、エレベーターの乗降ロビーや中央車路などに連結送水管を付置する。中央車路には区画シャッターに防煙・排煙機能をもたせる。エレベーターの乗降ロビーや中央車路等がない場合は、当該部分にスプリンクラー設備を設置する。

 報告書案に対し委員からは、消防本部の対策に含まれている各倉庫の警防計画策定について、消防職員が定期的に施設を訪れ確認することが重要と述べ、事務局はこれに対して、消防庁が警防計画策定に関するマニュアルを作成し、その中にそうした指摘を盛り込んでいく考えを示した。

 会合の閉会時にあいさつした消防庁の青木信之長官は「倉庫は可燃物が多く、閉鎖空間でもあることから、火災が発生した場合は極めてやっかいな存在と認識していた。大規模倉庫が増えていく状況下で、今回の検討は重要だった」と検討会の意義を強調した上で「提言を基に国交省とも連携して、しっかりと対策を実施したい」と語った。国交省の由木文彦住宅局長は、消防庁とも連携しながら、特に防火シャッターに関する対策に取り組む意向を示し、提言では事業者の自主的な取り組みも重要とされていることを踏まえ、業界にも協力を要請していく考えを示した。

 小林座長は「コンベヤーの問題など、建築基準法や消防法からはずれた課題もあり、ガイドラインを中心に対策していくことは妥当だと思う。消防庁と国交省が知恵を出し合って、効率的な安全対策を構築してほしい」と報告書案を評価する一方「ガイドラインによる自主的な取り組みは、事業者にとって、かえって厳しい面もあるかもしれない」とも語った。

個人事業主組織化しECに当日宅配提供、アマゾン報道には無言  丸和運輸機関

 22日付の一般紙でアマゾンジャパンが個人事業者を主体とした独自の配送網を構築し、そのうち東京都心部で当日配達サービスを担うと報道された丸和運輸機関(和佐見勝社長)は同日、本紙の取材に対して「具体的な案件には答えられない」としながらも、個人事業主を組織化したビジネスモデルでEC物流のラストワンマイル配送を拡大していく考えを示した。丸和運輸機関は、本年度を初年度とする3ヵ年の経営計画で、「当日お届け110(イチイチマル)戦略」と銘打ち、アマゾンを始めとする大手ネット通販事業者に対して、東京23区を中心とした当日宅配のラストワンマイル輸送を提供する方針を掲げている。戦略の中心となるのが、個人事業主を組織化する「Quick►Ace」(クイックエース)と呼ぶ施策で、個人事業主のドライバーに対して健全な稼働日数、健全な労働時間、再投資可能な売り上げ保障など、安定した良質な仕事の提供を目指す内容。会社は燃料の割引、保険、税務申告対応、国内外の教育研修など、さまざまな組織的サポート体制を整えるとしている。

 アマゾンジャパンとの取引については、3年前からグループ会社のジャパンクイックサービスが東京都内の一部地域で配送業務を受託していることから、業務に関するノウハウは保有している。

 今回の業務拡大は、主に「クイックエース」で取り扱うものと見られているが、一方で個人事業主が想定どおりに集まらない事態も予想されるため、取り扱う個数などについては、アマゾンジャパンとの間で慎重に話し合いが行われている模様だ。また、個人事業主の労働環境を担保するため、ジャパンクイックサービスによるバックアップ体制も整備するなど、同社ではさまざまな面に配慮しながら、EC物流の取り扱い拡大を目指す姿勢を強調している。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(83) 『トラックドライバー不足再考(その1)』
    ☆四文字 『日ト協規格の「標準車両」』

  • ☆トナミ運輸、富山・石川・福井えりすぐりの食材揃えたお中元ギフト販売中
    ☆運輸労連・交通労連が17春闘の中間まとめ発表、賃上げ額・一時金ともに前年上回る内容に
    ☆厚労省が17年1~5月の労働災害発生状況まとめる、陸上貨物運送事業の死亡災害は40人で25%増加
    ☆国交省が17年度「モーダルシフト等推進事業」の第一次募集を開始、幹線集約も対象に
    ☆首都圏キット利用協組が第20回通常総会開催、会員数は16年度末で263社に拡大 17年度事業計画では会員300社を目指す
    ☆安倍晋三首相が第2回生産性向上国民運動推進協議会を開催、山梨県での事例などパイロット事業の成果について説明を受ける
    ☆経済成長フォーラムが提言で指摘、通販の「配送料無料」は消費者の選択権を制限
    ☆交通労連トラック部会の政策討論集会で日通総研の大島ユニットリーダーが講演、トラック無人隊列走行に期待を示す
    ☆佐川フィナンシャル、個人情報保護マネジメントシステムの認証取得
    ☆帝国データバンクがBCP企業意識調査、事業継続困難なリスクに28%が「物流の混乱」と回答
    ☆関運局、16年度管内トラックの行政処分は12%増加
    ☆日本郵便、フリーマーケットなどとのシステム連携による新サービス「e発送サービス」開始
    ☆ヤマト運輸・全但バス、兵庫県豊岡市内で路線バスによる「客貨混載」を開始
    ☆ヤマトHD、労働時間に関する一時金が当初より40億円増加
    ☆関運局、管内43社に鉄道での貨客混載についてアンケート 6社が興味ありと回答
    ☆関運局が管内トラック増減車状況を公表、16年度は5千台超の増車に
    ☆東ト協連が通常総会開催、新会長に石川氏
    ☆国交省が第3回「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」を開催、次期安全プランではモードごとに数値目標を設定

今週のユソー編集室

  • ▼産業能率大学がこのほど発表した、本年度新入社員の会社生活調査の結果によれば、男性の約6割、女性の約8割が「月30時間以上の残業は許容できない」と考えているという。1日平均だと残業1時間半でこの限界は突破する。
    ▼「最近の若いモノは…」と失笑していられたのは過去のこと。労働力の奪い合いが顕在化しつつある今の日本で、彼らの希望に少しでも近づくために、「働き方改革」の旗のもと、ほぼ全ての産業界が血眼になっている。
    ▼長い目で見れば、そうした努力は必ず実を結ぶはずだ。近い将来の日本では、労働者は今よりも改善された労働環境下で働いているだろう。長時間労働から抜け出せない産業界がどのような憂き目にあうのか、想像するのも恐ろしい。
    ▼あらためて月の平均残業80時間を許容してしまう、運転者の時間外労働の上限規制の不合理性を思う。国が旗を振れないのであれば、業界が自主的に改善していくしかあるまい。

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