大規模倉庫の防火等の対策、ガイドライン策定へ 国交省消防庁の検討会が報告書案
国土交通省と消防庁は21日、東京都千代田区の中央合同庁舎2号館で「第4回埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」(座長=小林恭一東京理科大学総合研究院教授)を開催した。検討会では、今年2月に発生したアスクルの大規模倉庫火災の教訓を生かし、早期に被害を軽減するための措置などを盛り込んだガイドラインの策定などを提言する報告書案をまとめた。
報告書は、最終となる今回の検討会で得られた意見を基に微修正し、座長一任の形でまとめる。
報告書案の提言では、総括として◎コンベヤーや物品による防火シャッターの閉鎖障害を起こさないための対策◎事業者による火災発生時の初動対応の実効性を図る対策―など、大規模倉庫を対象とした対策の必要性を強調。火災が発生・拡大した場合でも効率的な消火活動を行うため「各消防本部の大規模倉庫を想定した体制の強化や、倉庫の実情に応じた事業者による自主的な取り組みを進めることが適当」として、次の各項目(抜粋、要約)を具体的な対策に挙げている。
【初期火災の拡大防止を図るための方策】
《防火シャッターの確実な作動に関する対策》
◎国交省が、大規模倉庫を対象に、電線のショートによる被害を防止する措置を義務付ける。
◎国交省が、防火シャッターの閉鎖障害を防止する基本的な維持管理指針を示し、大規模倉庫の事業者が各倉庫で自主的に維持管理計画を策定し、点検に取り組むよう指導するとともに、大規模倉庫以外の倉庫においても維持管理の参考とするために、留意事項の周知を図る。事業者は各倉庫で防火シャッターに関する「維持保全責任者」と、コンベヤー等の確認を行う「設置責任者」を定め、両者は点検結果を記録し、適切に保存する。特定行政庁は消防本部と連携して、計画に応じた適切な運営がなされているか調査する。
《事業者による初動対応》
◎事業者は、実際に屋外・屋内の消火栓を使用し放水するなど、より効果の高い消火訓練を定期的に実施する。火災の発生場所や燃焼物などを具体的に想定して、模擬的な通報訓練を行う。
【より効率的な消火活動を実現するための方策】
《消防本部における対策の強化》
◎各倉庫の警防計画の策定。
◎大規模倉庫における消火活動の要領の策定。
◎広範囲・長時間活動を勘案した消防隊の効率的な活動。
◎外壁等の破壊および水利の補充に関する協定の締結。
◎住民等への適切な情報提供。
◎大規模火災等に対するアドバイザー制度の導入。
《早期に被害を軽減するための措置に関するガイドライン》
◎消防庁は国交省と連携して事業者向けのガイドラインを策定し、各倉庫の状況に応じた取り組みの実施を促す。
◎2階で火災が起きた時に備え、消防隊が有効に進入できる経路として直接はしごなどで進入するための進入口や、区画された付室を有する階段・非常用エレベーターなどを設けることが有効。
◎倉庫外周部と全く接していない防火区画が存する場合、建物中央部での消防活動が困難になる場合があることから、エレベーターの乗降ロビーや中央車路などに連結送水管を付置する。中央車路には区画シャッターに防煙・排煙機能をもたせる。エレベーターの乗降ロビーや中央車路等がない場合は、当該部分にスプリンクラー設備を設置する。
報告書案に対し委員からは、消防本部の対策に含まれている各倉庫の警防計画策定について、消防職員が定期的に施設を訪れ確認することが重要と述べ、事務局はこれに対して、消防庁が警防計画策定に関するマニュアルを作成し、その中にそうした指摘を盛り込んでいく考えを示した。
会合の閉会時にあいさつした消防庁の青木信之長官は「倉庫は可燃物が多く、閉鎖空間でもあることから、火災が発生した場合は極めてやっかいな存在と認識していた。大規模倉庫が増えていく状況下で、今回の検討は重要だった」と検討会の意義を強調した上で「提言を基に国交省とも連携して、しっかりと対策を実施したい」と語った。国交省の由木文彦住宅局長は、消防庁とも連携しながら、特に防火シャッターに関する対策に取り組む意向を示し、提言では事業者の自主的な取り組みも重要とされていることを踏まえ、業界にも協力を要請していく考えを示した。
小林座長は「コンベヤーの問題など、建築基準法や消防法からはずれた課題もあり、ガイドラインを中心に対策していくことは妥当だと思う。消防庁と国交省が知恵を出し合って、効率的な安全対策を構築してほしい」と報告書案を評価する一方「ガイドラインによる自主的な取り組みは、事業者にとって、かえって厳しい面もあるかもしれない」とも語った。