労働力不足への対応、次期物流施策大綱は生産性向上を核に 国交省重田物流審議官が会見
国土交通省の重田雅史大臣官房物流審議官は4月25日の会見で、現在策定に向けた検討が進んでいる次期総合物流施策大綱の基本的な考え方について、「今後5~10年を見据えると、生産性を飛躍的に向上させなければ物流の危機は乗り越えられない。イノベーションで生産性を上げることに尽きる」として①物流事業者と荷主・消費者との連携②トラック運転者をはじめとする物流人材の多様化・高度化③中小事業者を含めたテクノロジーの積極的活用④アジアの物流需要取り込み⑤災害対応―の視点を盛り込むことが重要であるとの考えを示すとともに、宅配便の再配達削減には消費者と通販・物流事業者とのコミュニケーションが不可欠であるとして、国交省としても消費者に対する周知・広報などで後押ししていく姿勢を強調した。
重田物流審議官は、4月20日に開かれた次期物流大綱の第4回有識者検討会で示した骨子案に対し委員から、「総花的」「危機感がメッセージとして伝わらない」などの意見が出されたことに触れた上で、連休明けの第5回検討会に向け、現在委員の意見を踏まえた素案づくりを進めていることを説明。
宅配便の労働力不足問題については、「消費者のITリテラシー(能力)が高まっており、通販・物流事業者が通信手段を活用して消費者とコミュニケーションを取ることで再配達が減る」とし、国交省としても「宅配便の1回受け取り」の重要性などについての周知に努めていくとした。
また、共同宅配ロッカーの設置については、「ロッカーだけで再配達問題の解決にはならないが、受取場所を多様化しなければ、通販利用者のニーズに対応できないのは明白」として、コンビニ店舗や運送事業者の営業所、郵便局などを含めた受取場所の多様化や事業者間でのシェアを後押ししていく考えを示した。
さらに、ヤマト運輸の総量規制問題については、「現在の宅急便は通販の取り扱いが増え、かつて想定していたCtoCのビジネスモデルとは違うものになっている。従来の宅急便が目指すサービスレベルやコスト、オペレーションに通販の荷物を載せたことが混乱を招いた」と述べ、総量規制はそうした環境変化の中での経営判断であるとの見方を示すとともに、国交省としても生産性の向上や働き方改革に関する政策メニューを通じて応援していきたいとした。
通販事業者に対しては、「アマゾンは、欧米では自前で物流を行っているが、日本には高い品質でコストパフォーマンスのいい物流サービスがあり、“使わない手はない”といった感じで活用してきた。ところが佐川急便のアマゾン撤退の時点で、このままでは難しいことに気づいた。物流とどう折り合いをつけるかを真剣に考えないと、無店舗販売は成り立たない」として、「売る人・買う人・運ぶ人」が、ぞれぞれ効率的になる方法を売る側から考えるべきとした。