労働力不足を踏まえ物流の危機訴える、次期大綱の骨子案示す 国交省
国土交通省は20日、東京都千代田区の同省で第4回総合物流施策大綱に関する有識者検討会を開催。これまで荷主や物流事業者などに実施したヒアリングや委員プレゼンテーションから得られた物流分野での課題・要望などを踏まえ、今後の物流施策が目指すべき方向性として①産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保②物流システムの強化・高度化③災害や老朽化等の物流システムを取り巻くリスクや地球環境への対応―を盛り込んだ骨子案に対し、多くの委員が了承の意向を示す一方、「物流の危機」を国民により強く訴える表現を求める意見や、大綱の計画期間最終年度である2020年度以降を見据えた内容を加えるべきとの指摘などが出された。
骨子案では、総合物流施策大綱策定の意義について、労働力不足や脆弱なインフラなどの課題により「もはや、個々の物流事業者や荷主だけでは解決できない危機的な状況にある」とした上で、「消費者も含めた企業や国民の物流に関する理解と協力を得て、この危機的な状況を克服し、今後ともわが国の物流システムに必要な機能を確保するとともに、その機能をより有効に発揮させていく必要がある」と記述。
今後の物流施策が目指すべき方向性と取り組みについては、「産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保」「物流システムの強化・高度化」「災害や老朽化等の物流システムを取り巻くリスクや地球環境への対応」の三つの柱を掲げ、それぞれに対応の方向性やこれまでの議論で得られた対応方策の例を示している。
「産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保」については①労働力不足の克服②適正な価格に対するサービス提供の確保③短納期化・小口化・多頻度化④EC市場の拡大⑤国民意識の啓発⑥都市への人口集中・地方の過疎化―の課題があるとし、対応の方向性には「労働環境の改善による労働力の強化」「労働力不足を克服するための先進的技術の利活用(IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)等の活用)」「適正運賃の収受等の取引環境の改善」などを例示。さらに、ドライバーの長時間労働抑制やパレット化実現に向けた取り組み、付帯作業のコスト明確化と負担の適正化など、これまでの委員プレゼンテーションや関係団体ヒアリングでの意見・要望、15年12月の社会資本整備審議会・交通政策審議会答申での記載を参考として示している。
「物流システムの強化・高度化」については◎日本の物流事業者の海外展開◎国際輸送のキャパシティー確保◎IoT、AI、ビッグデータの活用◎RFIDの活用◎単独での物流効率化の限界◎効率化・大型化を進めるインフラの不足◎物流高度人材の不足―などの課題があるとし、対応の方向性として、サプライチェーンの高度化に資する共通プラットフォームの構築や企業間連携の推進、インフラ機能強化、人材育成などを挙げた。
これらの骨子案に対し委員からは、「内容が“総花的”なので重点化を」「物流の課題解決に向けた国民へのメッセージを入れるべき」「20年以降の社会情勢や物流の状況をにらんだ記述を加える必要がある」「物流分野の課題解決のための財源はどうするのか」「今後の社会と物流の構造変化への対応をいつ、どのような方向で検討開始するのか今から考えておくべき」「軽油引取税の暫定税率上乗せ分を物流の労働力不足対策の原資として活用する可能性も視野に入れるべき」などの意見が出された。
これらの意見を踏まえた上で提言素案をまとめ、5月中旬に開催予定の第5回会合で示す。