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2017年4月24日付 2653号

労働力不足を踏まえ物流の危機訴える、次期大綱の骨子案示す  国交省 

第4回会合では全委員が骨子案に意見を述べた

 国土交通省は20日、東京都千代田区の同省で第4回総合物流施策大綱に関する有識者検討会を開催。これまで荷主や物流事業者などに実施したヒアリングや委員プレゼンテーションから得られた物流分野での課題・要望などを踏まえ、今後の物流施策が目指すべき方向性として①産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保②物流システムの強化・高度化③災害や老朽化等の物流システムを取り巻くリスクや地球環境への対応―を盛り込んだ骨子案に対し、多くの委員が了承の意向を示す一方、「物流の危機」を国民により強く訴える表現を求める意見や、大綱の計画期間最終年度である2020年度以降を見据えた内容を加えるべきとの指摘などが出された。

 骨子案では、総合物流施策大綱策定の意義について、労働力不足や脆弱なインフラなどの課題により「もはや、個々の物流事業者や荷主だけでは解決できない危機的な状況にある」とした上で、「消費者も含めた企業や国民の物流に関する理解と協力を得て、この危機的な状況を克服し、今後ともわが国の物流システムに必要な機能を確保するとともに、その機能をより有効に発揮させていく必要がある」と記述。

 今後の物流施策が目指すべき方向性と取り組みについては、「産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保」「物流システムの強化・高度化」「災害や老朽化等の物流システムを取り巻くリスクや地球環境への対応」の三つの柱を掲げ、それぞれに対応の方向性やこれまでの議論で得られた対応方策の例を示している。

 「産業活動と国民生活を支えるために必要な物流システムの維持・確保」については①労働力不足の克服②適正な価格に対するサービス提供の確保③短納期化・小口化・多頻度化④EC市場の拡大⑤国民意識の啓発⑥都市への人口集中・地方の過疎化―の課題があるとし、対応の方向性には「労働環境の改善による労働力の強化」「労働力不足を克服するための先進的技術の利活用(IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)等の活用)」「適正運賃の収受等の取引環境の改善」などを例示。さらに、ドライバーの長時間労働抑制やパレット化実現に向けた取り組み、付帯作業のコスト明確化と負担の適正化など、これまでの委員プレゼンテーションや関係団体ヒアリングでの意見・要望、15年12月の社会資本整備審議会・交通政策審議会答申での記載を参考として示している。

 「物流システムの強化・高度化」については◎日本の物流事業者の海外展開◎国際輸送のキャパシティー確保◎IoT、AI、ビッグデータの活用◎RFIDの活用◎単独での物流効率化の限界◎効率化・大型化を進めるインフラの不足◎物流高度人材の不足―などの課題があるとし、対応の方向性として、サプライチェーンの高度化に資する共通プラットフォームの構築や企業間連携の推進、インフラ機能強化、人材育成などを挙げた。

 これらの骨子案に対し委員からは、「内容が“総花的”なので重点化を」「物流の課題解決に向けた国民へのメッセージを入れるべき」「20年以降の社会情勢や物流の状況をにらんだ記述を加える必要がある」「物流分野の課題解決のための財源はどうするのか」「今後の社会と物流の構造変化への対応をいつ、どのような方向で検討開始するのか今から考えておくべき」「軽油引取税の暫定税率上乗せ分を物流の労働力不足対策の原資として活用する可能性も視野に入れるべき」などの意見が出された。

 これらの意見を踏まえた上で提言素案をまとめ、5月中旬に開催予定の第5回会合で示す。

社員4万7千人に対し一時金190億円支払いへ、3月業績予想を下方修正  ヤマトHD

会見する芝﨑専務執行役員(右)と大谷上席執行役員(左)

 ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)は18日、東京都中央区の東京証券取引所で記者会見し2017年3月期の連結業績予想の修正について発表した。サービス品質や社員の労働環境を維持するため、セールスドライバーを中心とした労働実態調査から新たに認識した労働時間に対する一時金の支払い190億円等240億円の費用が増加する見通しとなったため、利益を下方修正した。

 会見では芝崎健一専務執行役員、大谷友樹上席執行役員が説明にあたった。

 1月30日に公表した業績予想の修正は、売上高が1兆4600億円で変わりないものの、営業利益が社員満足を向上させる取り組みの一環として支払う一時金190億円、それに伴う社会保険等30億円、外部委託コスト等20億円の合計240億円の費用が増加する見通しとなった。このため営業利益が580億円から340億円へ、経常利益も585億円から345億円へ、親会社株主に帰属する当期純利益も340億円から190億円へと、それぞれ下方修正した。

 同グループでは、Eコマースの拡大などにより、昨年12月の宅急便の取り扱いが2億3千万個となるなど、体制構築が追い付かず、今年2月からヤマトグループフルタイマー社員8万2千人を対象に15年2月からの2年間について、各事業所の責任者が個別に面談する実態調査を実施。この結果、多くの社員が休憩時間を十分に取得できていないなど、適切な管理がされていなかった可能性のある社員が4万7千人いることが明らかとなり、休憩時間の未取得を含め、社員から申告を受けていなかった未認識の労働時間に対し、一時金を支払うこととしたもの。

 大谷上席執行役員は、時間管理の徹底が足りなかった要因として(1)Eコマースの急伸による荷物の急増、また労働需給逼迫という経営・労働環境の変化に対しサービスを維持するための体制確保が十分でなかったこと(2)業務量増加の中、休憩時間の未取得などにつながる可能性に対する認識が不足し、休憩を取得しやすい環境整備が遅れたこと―の2点を挙げた。

 同グループでは再発防止を図るため、2月1日にヤマト運輸に働き方改革室、グループ各社には働き方創造委員会をそれぞれ設置し、各社の社長を委員長に任命して、改革に取り組んでいる。ヤマト運輸では4月16日から職場への入退館の履歴を基本とした労働時間管理に一本化した。

 芝﨑専務執行役員は、今年度からは働き方改革として「労務管理の改善と徹底」「ワークライフバランスの推進」「サービスレベルの変更」「宅急便総量のコントロール」「宅急便の基本運賃の改定」などを実施し、社員がより働きやすい環境整備に邁進していくと述べた。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(80) 『為替の行方は?(その2)』]
    ☆四文字 『交通規制の「具体方策」』
    ☆日中ビジネスワンポイント(162) 『台湾10都市の旅(その3)』
    ☆積み残しの記・余禄(3)『貨車 ワム』

  • ☆全ト協、ドラコン各部門優勝者が安倍首相・石井大臣を表敬訪問
    ☆ヤマト運輸・DeNA、神奈川県藤沢市内で自動運転社会を見据えたロボネコヤマトプロジェクトの実験開始
    ☆LEVO、物流分野のCO2削減補助事業の公募開始 オープン型宅配ボックスの導入補助も
    ☆全ト協、17年度Gマーク制度申請の受付は7月1日~14日と発表
    ☆全ト協・日貨協連が16年度WebKIT稼働状況まとめを発表、荷物情報登録件数が過去最高の118万件を超える
    ☆佐川急便・北越急行、貨客混載列車の本格的運用開始
    ☆JR貨物・KWE、輸入航空貨物の鉄道コンテナ輸送でトライアル実施中
    ☆東日本高速、ETC車対象に1年間の高速道路外での給油で社会実験開始
    ☆経団連、国際スピード郵便の通関手続きや検疫規制の抜本的見直しを要望
    ☆JR貨物、GW期間中コンテナは前年を5本上回る746本運転
    ☆YHC・メルカリ、大型らくらくメルカリ便のサービス開始
    ☆ヤマト運輸労組が70年史を発行、東日本大震災での活動内容も収録
    ☆埼玉ト協が経営課題と取り組みのまとめを提示、運転手不足等6割・高齢化4割の実態が明らかに
    ☆物流連、17年度春期寄附講座始まる 本年は青学・首都大・横国・法政の4大学で開催
    ☆日通インドネシア物流、日系物流企業初の食品関連保税物流センターライセンス取得
    ☆西濃運輸が新入社員研修開始、本年度は空手道・救命講習・ウォークラリーを実施

今週のユソー編集室

  • ▼新卒新入社員が入社してから1ヵ月が経過しようとしている。毎年のことだが、考え方のジェネレーションギャップに戸惑う上司は、いまだに多いのではないだろうか。
    ▼近年は、新卒新入社員の3年離職率の高さが問題視されている。厚生労働省の資料によれば、全産業の2013年3月卒業者の3年離職率は、大卒・高卒合わせて34.5%にのぼり、3人に1人は3年以内に就職した企業を辞めたことが分かる。
    ▼同じ対象で「運輸業、郵便業」をみると、大卒・高卒合わせた3年離職率は29.5%となり、全産業より5.0ポイントも低い。してみると「運輸業、郵便業」の職場環境は、それほど悪くないのかもしれない。
    ▼産業能率大学の「2017年新入社員の理想の上司」調査によると、男性1位には松岡修三さん、女性1位には水卜麻美さんが選ばれた。「後輩を熱心に指導してくれそう」なことが、その理由だという。定着率の向上へ、参考にしてみてはいかがだろうか。

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