インタビュー ヤマト運輸労働組合 中央執行委員長 森下 明利氏
現場SDの負担限界に、「適正」と「徹底」で組合員の命を守る
今年2月の新聞報道から始まった、いわゆる「ヤマトショック」。その現場で何が起きていたのか、今後何をしていくのか、渦中のヤマト運輸労働組合・森下明利委員長に聞いた。聞き手 本紙編集委員・上原里智男
―現在の現場の状況は。
2013年ごろからネット通販関係の荷物が激増し、1人当たりの持ち出し個数が大幅に増加しています。荷物量に見合った人員が確保できていないため、常に配達に追われて昼の休憩がとれない、夜の配達が多過ぎて指定時間内に配達できないといった状況にあり、現場SDの負担は限界に達しつつあります。荷物量が増えた原因は、ネット通販だけではありません。フリーマーケットアプリの普及で個人間の売買が増えたことも原因の一つです。
毎年秋に行っている秋季交渉の過程で、次年度の総労働時間計画について労使間で協議しており、16年度は2456時間、本年度は2448時間となっています。それが近年の急増により、どうしても守れなくなってきたため、労働組合としては極めて大きな問題だと認識していました。
会社も黙って見ていたわけではなく、例えば知り合いを紹介した社員に手当を支払う、途中入社の人でもある年齢以下であれば新卒入社扱いにするなど、人材を確保するためのさまざまな手は打っているのですが、十分な人材は確保できていません。
人材不足は物流業界に限った話ではなく、ヤマト運輸の仕事はきつい部分もありますから、入ってきたパートの方が、すぐに辞めてしまうケースも多いのです。
昨年の年末時にはいくつかのセンターで、その日のうちに配達できなかった荷物が店に残るという現象が、数年ぶりに発生しました。
ヤマト運輸では年末繁忙期の前にあらかじめ荷物量を予測して必要な戦力を整えておき、状況に応じて本社や支社から現場に応援を入れることもあります。ですが昨年末は必要な戦力を確保できないまま繁忙期に突入した店があり、さらに予測量を超える荷物が到着したため、応援が入っても間に合わなくなってしまったのです。
事前の予測量と実際の荷物量がかけ離れてしまうのは、ネット通販会社が頻繁に行うキャンペーンも関係しています。ネット通販会社が「ポイント還元セール」などを展開すると、荷物量が激増してしまうため、予測が難しくなってきているのは間違いありません。
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