猶予期間後の720時間適用を国交省などへ要請、「改革の意義失う」 運輸労連・交通労連
運輸労連(難波淳介委員長)と交通労連(山口浩一委員長)は3日、政府の「働き方改革実行計画」で、自動車運転業務の時間外労働の上限規制について、「一般則施行の5年後に年960時間(月平均80時間)以内」などと決められたことを受けて、国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会の各省・団体へ、運転手不足を改善するために、より厳しい規制を適用するよう求める要請活動を行った。
両労連は要請書の冒頭で「休日労働が960時間の別枠で取り扱われ、時間外労働と休日労働を拘束時間に置き換えた場合、現行の自動車運転の業務に対する労働時間等の規制である改善基準告示と何ら変わらない水準が維持され続ける」と指摘。自動車運転従事者が、「脳・心臓疾患の労災補償支給決定件数」のワースト1になっており、長時間労働の改善が急務であることと併せ、「『働き方改革』の意義が失われてしまう」と強く警鐘を鳴らした。
その上で両労連は①一般則施行5年後の「上限規制720時間」の適用②過労死水準を根拠とした規制である「単月100時間」「2~6ヵ月平均80時間」の一般則施行5年後の適用③一般則施行後5年間の総拘束時間を年3300時間へ短縮④拘束時間・休息期間の法定化と限度時間との相関の明確化⑤労働時間管理の徹底と不適正事業者の指導強化―を要請した。
要請は、国交・厚労の両省に対して難波委員長・世永正伸運輸労連副委員長・貫正和交通労連トラック部会事務局長が、全ト協に対して山口委員長・世永副委員長・貫事務局長が、それぞれ行っており、国交省は加藤進自動車局貨物課長らが、厚労省は原口剛政策統括官付参事官らが、全ト協は福本秀爾理事長らが、それぞれ応対した。
要請場面では労働組合側が、加入者数13万4千人規模の運輸共済において、16年度の自殺による本人死亡給付の件数17件のうち、「仕事上(業務上)の悩み」を原因とするものが最も多い7件にのぼっているなど、長時間労働が自殺の原因に結び付いている可能性を指摘。要請書の内容を実行するよう求めた。今回の要請活動について世永副委員長は、本紙の取材に対し「年960時間」の算出根拠が明確化されていないとした上で、給与体系が運賃歩合となっている事業者では労使ともに労働時間の改善意識が薄く、そうした事業者の例を算出根拠としたのではないかと疑問を呈するとともに、あらためて労働環境改善に向けた取り組みの必要性を訴えた。
両労連は今後も共同歩調をとりながら、連合などを通じて労働政策審議会の場で、要請項目の実現に取り組んでいく構えとしている。