トラックの中継輸送実験結果を報告、本格実施に高い壁 国交省
国土交通省は3日、東京都千代田区の同省でトラック中継輸送モデル事業の第4回有識者検討会を開催し、2月に実施した中継輸送の実証実験結果を報告。中小トラック事業者による五つの組み合わせからなる中継輸送実験は、運行面ではおおむね問題なく実施されたが、実験参加企業からは本格実施に当たってコスト面や積載効率、運行相手企業の与信・遵法性の可視化などに課題があるとの指摘も多く、普及には数多くのハードルを乗り越える必要がある。
実験は①埼玉県~三重県(運行事業者は清水運輸とカワキタエクスプレス=ペアA)②川崎市~大阪市(魚津海陸運輸倉庫と福井高速運輸=ペアB)③川崎市・横浜市~大阪府東大阪市など(萬運輸と協伸運輸=ペアC)④埼玉県川越市・富士見市~山形県東根市・山形市(清水運輸とトヨタライン=ペアD)⑤群馬県伊勢崎市など~山形県天童市・山形市(GRトランスとティスコ運輸=ペアE)―の五つのパターンで実施した。
ペアAとDは中継拠点で積載した貨物を積み替える「貨物積替方式」、それ以外は、ドライバーが乗り換える「ドライバー交替方式」で実施した。
いずれのパターンも、運行・荷役とも問題なく実施できたが、実施後の聞き取りでは、ドライバーからデジタルタコグラフをはじめとする機器操作や貨物の品目特性による運転への影響などについて不安を感じるとの意見が寄せられた。また、他社の車両を運転することに強いストレスを感じるとの意見もあった。
一方で、拘束時間が短縮され帰宅できることなどを理由に中継輸送を歓迎する声もあった。
経営者・管理者への聞き取りでは、「与信が確立されているトラック事業者とでなければ中継輸送はできない」「信頼のある企業でなければ自社の看板の車両を運転してもらうことに抵抗がある」「トラック事業者にもさまざまな業態があり、業界を可視化できるデータが必要」「国の助成金があれば魅力的だが、予算がなくなれば赤字の仕事になり困る」「国主導で中継輸送を想定した物流ハブ拠点を整備してほしい」などの意見が出された。
「国の助成」については、昨年10月に施行された改正物流総合効率化法の計画策定経費補助(上限200万円)の活用があるが、「流通業務を一体的に実施すること」などの要件がハードルになるとの見方もある。
国交省では、実験や聞き取りの結果を踏まえ、今月中にも中継輸送に関する手順書を策定・公開し、中継輸送の普及を加速させたい考えだが、普及には実験参加企業から指摘された課題を解決する必要があり、国交省には課題解決に向けた取り組みが求められている。