新年の物流を語る会開催、生産性向上重要に 正副会長らが展望 物流連
日本物流団体連合会(工藤泰三会長)は24日、東京都千代田区の海運クラブで「新年の物流を語る会」を開催、正副会長をはじめとする幹部が、それぞれ業界の展望等について語ったが、労働力不足が顕在化する中で、各業界とも生産性向上の必要性を指摘する声が目立った。
冒頭あいさつで工藤会長は、労働人口の減少から、有効求人倍率がかつてのバブル期並みの高水準にあることを指摘し、あらためて生産性向上の重要性を指摘。「生産性向上には荷主の理解が必要。荷主に生産性向上の提案をしていくことが、物流業界が生き残るための方法」と強調した。
引き続き各副会長、委員が要旨次のとおり発言した(発言順)。
◎辻卓史全日本トラック協会副会長
本年は燃油費の動向に注視する必要がある。
2017年度は①労働環境改善・生産性向上に向けた諸対策②交通・労災事故防止③高卒新卒者の大量採用など人材確保④高速道路料金割引制度の恒久化⑤適正運賃収受や適正取引の推進⑥参入基準の厳格化と規制緩和の見直し⑦新技術を活用した物流効率化―の七つを最重点項目として取り組んでいく。
◎田村修二JR貨物社長
本年もモーダルシフトの流れは続いている。専用列車や異業種・同業種による共同モーダルシフトの例があり、今後もそうした需要を発掘していく。現在東京貨物ターミナル駅で物流施設整備を進めており、社運をかけて、コンテナを組み合わせた一貫物流サービスを提供していく。
本年度に鉄道事業部門の黒字化を達成し、引き続きイノベーションを取り入れながら、18年度に経常利益100億円を達成したい。
◎川合正矩全国通運連盟会長
労働力不足は鉄道利用運送業界でも同じ。連盟の調査では1社当たり2・1人足りないという結果が出ている。前年のパリ協定や改正物流総合効率化法など、環境と効率化の両面で、鉄道モーダルシフトに追い風が吹いている。
そうした中、連盟では①鉄道コンテナお試し輸送②31フィートコンテナ導入助成③輸送障害時の代行輸送に対する助成―などを進めている。
◎小比加恒久日本内航海運組合総連合会会長
前年の荷動きは低調だったが、本年は東京オリンピック関連のインフラ整備など、荷動きの活発化に期待している。
内航海運業界は船舶と船員の高齢化が課題。本年3月が期限だった老齢船の代替建造に関する税制は延長や一部拡大となり、効率的で環境にやさしい船舶の代替建造が進む。若年船員確保について17年度から「公的6級海技士」(航海)と「民間6級海技士」(同)の両養成課程の制度が統合されるが、効率的な養成ができると期待している。
◎入谷泰生日本長距離フェリー協会会長
前年末に石井啓一国土交通大臣から、災害時の広域応援部隊のための優先的輸送への協力要請を受け、業界を挙げて協力すると回答した。本年は海運モーダルシフトをさらに進める。前年から続いている新造船の投入も、引き続き行っていく。
◎外山俊明ANA Cargo社長
保護貿易や反グローバル主義など、国際航空貨物に影響が出そうな話がたくさんあり、注視している。サプライチェーンのニーズを敏感にとらえ、柔軟に対応していくことが必要。
特に期待しているのは自動車、ヘルスケア、eコマースの3部門。
◎伊藤豊JIFFA会長・航空貨物運送協会会長
JIFFAの会員数は1月1日現在で507社となり、目標の500社を達成した。今後も活動のグローバル化を指向し、人材の育成と業界の発展を目指していく。
国際航空貨物は、本年も円安が続くとみられるが、医薬品やeコマースなどの分野で伸長を期待したい。
テロ対策については、航空保安教育訓練支援機関として、取り組みを一層強化していく。
◎藤岡圭日本倉庫協会会長
倉庫を取り巻く物流もグローバル貿易の一端であり、昨今の急速な環境変化に対応する会員支援に力を入れていく。
改正物効法に関しては、会員事業者の認定取得を支援し、物流全体の生産性向上に努めていく。また、災害に強い物流システムの構築にも取り組んでいく。
◎工藤泰三日本船主協会会長
邦船3社が定期コンテナ船事業を統合した理由は、スロー・トレード(貿易の停滞)。生き残るための決断であり、統合効果で1千億円に近いコスト削減が実現する。今大手海運業者がやっているのは、AI(人工知能)を活用した効率的な船の運用によるイールドマネジメント(収益の最大化)。統合後にこうしたイールドマネジメントが行えるかどうかが、一番大きな問題になる。