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2017年1月30日付 2641号

新年の物流を語る会開催、生産性向上重要に 正副会長らが展望  物流連

工藤会長ら幹部が本年の展望を語った

 日本物流団体連合会(工藤泰三会長)は24日、東京都千代田区の海運クラブで「新年の物流を語る会」を開催、正副会長をはじめとする幹部が、それぞれ業界の展望等について語ったが、労働力不足が顕在化する中で、各業界とも生産性向上の必要性を指摘する声が目立った。

 冒頭あいさつで工藤会長は、労働人口の減少から、有効求人倍率がかつてのバブル期並みの高水準にあることを指摘し、あらためて生産性向上の重要性を指摘。「生産性向上には荷主の理解が必要。荷主に生産性向上の提案をしていくことが、物流業界が生き残るための方法」と強調した。

 引き続き各副会長、委員が要旨次のとおり発言した(発言順)。

 ◎辻卓史全日本トラック協会副会長

 本年は燃油費の動向に注視する必要がある。

 2017年度は①労働環境改善・生産性向上に向けた諸対策②交通・労災事故防止③高卒新卒者の大量採用など人材確保④高速道路料金割引制度の恒久化⑤適正運賃収受や適正取引の推進⑥参入基準の厳格化と規制緩和の見直し⑦新技術を活用した物流効率化―の七つを最重点項目として取り組んでいく。

 ◎田村修二JR貨物社長

 本年もモーダルシフトの流れは続いている。専用列車や異業種・同業種による共同モーダルシフトの例があり、今後もそうした需要を発掘していく。現在東京貨物ターミナル駅で物流施設整備を進めており、社運をかけて、コンテナを組み合わせた一貫物流サービスを提供していく。

 本年度に鉄道事業部門の黒字化を達成し、引き続きイノベーションを取り入れながら、18年度に経常利益100億円を達成したい。

 ◎川合正矩全国通運連盟会長

 労働力不足は鉄道利用運送業界でも同じ。連盟の調査では1社当たり2・1人足りないという結果が出ている。前年のパリ協定や改正物流総合効率化法など、環境と効率化の両面で、鉄道モーダルシフトに追い風が吹いている。

 そうした中、連盟では①鉄道コンテナお試し輸送②31フィートコンテナ導入助成③輸送障害時の代行輸送に対する助成―などを進めている。

 ◎小比加恒久日本内航海運組合総連合会会長

 前年の荷動きは低調だったが、本年は東京オリンピック関連のインフラ整備など、荷動きの活発化に期待している。

 内航海運業界は船舶と船員の高齢化が課題。本年3月が期限だった老齢船の代替建造に関する税制は延長や一部拡大となり、効率的で環境にやさしい船舶の代替建造が進む。若年船員確保について17年度から「公的6級海技士」(航海)と「民間6級海技士」(同)の両養成課程の制度が統合されるが、効率的な養成ができると期待している。

 ◎入谷泰生日本長距離フェリー協会会長

 前年末に石井啓一国土交通大臣から、災害時の広域応援部隊のための優先的輸送への協力要請を受け、業界を挙げて協力すると回答した。本年は海運モーダルシフトをさらに進める。前年から続いている新造船の投入も、引き続き行っていく。

 ◎外山俊明ANA Cargo社長

 保護貿易や反グローバル主義など、国際航空貨物に影響が出そうな話がたくさんあり、注視している。サプライチェーンのニーズを敏感にとらえ、柔軟に対応していくことが必要。

 特に期待しているのは自動車、ヘルスケア、eコマースの3部門。

 ◎伊藤豊JIFFA会長・航空貨物運送協会会長

 JIFFAの会員数は1月1日現在で507社となり、目標の500社を達成した。今後も活動のグローバル化を指向し、人材の育成と業界の発展を目指していく。

 国際航空貨物は、本年も円安が続くとみられるが、医薬品やeコマースなどの分野で伸長を期待したい。

 テロ対策については、航空保安教育訓練支援機関として、取り組みを一層強化していく。

 ◎藤岡圭日本倉庫協会会長

 倉庫を取り巻く物流もグローバル貿易の一端であり、昨今の急速な環境変化に対応する会員支援に力を入れていく。

 改正物効法に関しては、会員事業者の認定取得を支援し、物流全体の生産性向上に努めていく。また、災害に強い物流システムの構築にも取り組んでいく。

 ◎工藤泰三日本船主協会会長

 邦船3社が定期コンテナ船事業を統合した理由は、スロー・トレード(貿易の停滞)。生き残るための決断であり、統合効果で1千億円に近いコスト削減が実現する。今大手海運業者がやっているのは、AI(人工知能)を活用した効率的な船の運用によるイールドマネジメント(収益の最大化)。統合後にこうしたイールドマネジメントが行えるかどうかが、一番大きな問題になる。

日通最大規模(15万平方メートル)のマルチテナント型物流施設「Tokyo C―NEX」竣工

竣工したTokyo C―NEX

 日本通運(渡邉健二社長)は19日、同社最大規模となるマルチテナント型物流施設「Tokyo C―NEX」を竣工、23日に報道陣に公開した。

 同社の旧東京中央ターミナル跡地の東京都江東区新砂2の4の17の敷地面積5万9507平方メートルに、建物鉄筋コンクリート造・免震5階建て、延べ床面積15万709平方メートルの規模。全フロアに車両が直接アクセスできるダブルランプウェイ方式を採用。ワンフロア2万3千平方メートルを確保し高効率オペレーションを可能とし、躯体(くたい)にはりがない構造を取り入れ天井有効高5・5メートルを確保している。BCP(事業継続計画)対策として免震構造・大型非常用電源・自家給油施設を備える。

 半径15キロメートルには同社物流施設が10拠点あり、新施設を加えると延べ床面積35万3100平方メートルの倉庫群を構成することとなる。さらに、東京・隅田川コンテナ、羽田空港、東京港の拠点とも連携でき、城東エリアのシンボルタワーとして多様なニーズに対応、近隣施設から車両・人材を手配し繁閑の平準化を図るなどの対応も行っていく考え。

 加えて、1階は日通トランスポート、名鉄グループのターミナルを併設し、アロー便・名鉄便による全国配送、都内当日配送を実現し、発送締め切り時間の延長、ターミナル持ち込み費用の低減などのシナジー効果を見込む。

 2月1日に竣工式を行う。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流業界の新年会
    ☆運輸・交通両労連委員長に聞く 2017春闘展望
     運輸労連・難波委員長「問題意識を共有して」
     交通労連・山口委員長「労働側が自ら考え」
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(74) 『民進党のマニフェストを読んで驚いた(その11)』
    ☆四文字 『規制の限界「都市輸送」』

  • ☆物流連が学生向け業界セミナー開催、1300人が参加し大盛況に 工藤会長も来場
    ☆運輸労連が中央委、春闘方針など決める
    ☆国交省がインドネシアの倉庫へのJOINによる出資を認可、物流案件では初
    ☆国交省、テールゲートリフターの補助申請受付2月1日から
    ☆国交省、2016年度モーダルシフト等推進補助金は1次・2次合わせ25件に
    ☆JR貨物がグループ社長会議、鉄道事業黒字化達成し次の新しい時代へ
    ☆ヤマト運輸労組が春闘討論集会、労働環境と法律遵守できる実効性ある要求へ
    ☆日通、「WORLD BASEBALL CLASSIC」のグローバルスポンサーに
    ☆ヤマト運輸が全国SD接客応対コンテスト、優勝に兵庫主管支店の福田選手
    ☆日通、中国外運グループと提携し化学品物流を強化
    ☆国交省、南海トラフ地震を想定した災害支援物資輸送の海上輸送訓練実施へ
    ☆テルウェル東日本アメニティフォーラム、繁忙期控え見積もり・クレーム対応研修実施
    ☆建交労首都圏労使協が定例会とセミナー、労働力不足と事故防止テーマに
    ☆安全運行サポーター協議会、国交省からビッグデータ活用による事故防止推進事業の調査を受託

今週のユソー編集室

  • ▼1月19日に始まったキリンビールとアサヒビール共同による鉄道モーダルシフトでは、荷主側が物流のために生産地を変更した。背景には2014年の消費税増税に伴う物流の混乱があるという。
    ▼昨年の年末には宅配物流が苦境に立たされた。宅配各社は過去のデータなどを基にして、年末繁忙期に対応する戦力整備を行っているが、一部地域で想定以上の荷物が押し寄せ、配達の遅延などが発生した。
    ▼宅配最大手のヤマト運輸は、12月に単月過去最高となる約2億3千万個を取り扱っているが、特に後半戦で計画を大きく超える荷物がきたという。臨時戦力の確保難もあって、現場の厳しさは年々高まっているようだ。
    ▼トラック運送業界の労働力不足を表す際によく使われるのが、「いずれは運べなくなる」という言葉だ。例えば消費税が再増税される時、トラックは今まで同様暮らしを支えていけるのか。「物流が止まる日」は、案外近いのかもしれない。

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