物流を考慮した建築物設計・運用のガイドライン策定へ、第1回検討会を開催 国交省
国土交通省は16日、東京都千代田区の全日通霞が関ビルで「第1回物流を考慮した建築物の設計・運用検討会」を開催し、商業施設・オフィスビルなどの建築物で物流の円滑性などを考慮した設計・運用を促すガイドライン策定に向けた検討を開始した。ガイドラインは年度内に策定する。
国土交通省は「物流生産性革命」の旗印の下、2020年度までに物流事業の就業者1人・1時間当たりの付加価値額を2割向上させる目標を掲げており、改正物流効率化法をはじめとする政策ツールを総動員して物流事業者の努力を後押ししているが、荷主都合による手待ち時間の発生や荷役作業料の不払いなど、物流側の努力だけでは改善が難しい障壁が立ちはだかっている。中でも、百貨店など大規模小売店をはじめとする建築物では、物流が重要な役割を担う一方、物流への配慮が足りないことで、館内の物流オペレーションが円滑に行われず、生産性の向上が阻害されるケースも多い。今後、こうした状況を生み出さないためには、建築物の設計段階での物流への配慮が必要であることに加え、既存の建築物においても物流を考慮した運用を促す必要があるとの指摘が以前から物流関係者を中心に行われてきた。
こうした中、6月に示された「日本再興戦略2016」では、「都市の競争力向上と産業インフラ機能強化」のメニューに「建築物における貨物エレベーターや搬入車両に対応した天井高の確保等により建物内への貨物の搬入をしやすくするため、物流を考慮した建築物の設計・運用ガイドラインを本年度に策定する」との内容が盛り込まれた。
検討会は、年度内のガイドライン策定に向け、学識経験者、関係事業者団体、行政の担当者で組織するもので、座長は苦瀬博仁流通経済大教授が務める。関係事業者団体からは、金嶋知二全日本トラック協会引越部会副部会長、桐山裕之日本ロジスティクスシステム協会運営委員会委員、村上敏夫日本物流団体連合会理事・事務局長、山内信幸全国物流ネットワーク協会専務理事ら物流関係者のほか、三菱地所、東京建築士会、日本百貨店協会、日本ショッピングセンター協会、日本自動車工業会の担当者が参加。行政からは、国交省のほか、警察庁、経済産業省の担当官が加わっている。
第1回会合では、ガイドインが対象とする建築物の用途や規模、普及方策などについて、事務局が案を提示。
対象建築物の用途については、円滑な搬入、荷捌、館内配送などの実現により①=建築物の利用者の利便性・快適性の向上②=路上駐車等を抑制することによる良好な景観の形成など街づくりとの調和③=路上駐車等による道路交通への支障防止および見通しが阻害されないことによる安全性の向上④=①~③による運用コストの削減や建築物の資産価値向上―が期待されることを前提に、「日々、一定量の物流が発生することが想定される商業施設、オフィスビル、マンション、複合施設を対象とするのはどうか」との案が示された。
これに対し、委員からは、エリアやテナントなどの条件によって物流を取り巻く状況が大きく異なり、ガイドラインによる物流改善の効果が変わってくるなどの指摘があったことから、条件の異なる複数の建築物を対象としたアンケートを実施し、年内に開催する次回会合で結果を提示した上で、本格的な検討に入ることとした。