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2016年9月5日付 2624号

9日から旅客鉄道を活用した宅配便輸送の実証実験、東京~埼玉の拠点間輸送など  宅配・鉄道5社が参加

実証実験のイメージ、上からヤマト運輸・佐川急便・日本郵便

 ヤマト運輸(長尾裕社長)・佐川急便(荒木秀夫社長)・日本郵便(横山邦男社長)・東京地下鉄(奥義光社長)・東武鉄道(根津嘉澄社長)の5社は9~10月にかけて、旅客鉄道を活用した宅配便輸送に関する実証実験を実施する。
 
 物流に関する交通渋滞・CO2排出量削減・ドライバー不足などの解決策の一つと想定されている旅客鉄道を活用した貨物輸送に関するもので◎拠点間輸送(5社で実施)◎拠点~駅間輸送(東京地下鉄・ヤマト運輸・佐川急便で実施)―の2パターンで実施する。
 
 拠点間輸送では、東京地下鉄新木場車両基地(東京都江東区)から東京地下鉄和光車両基地(埼玉県和光市)または東武鉄道森林公園検修区(埼玉県滑川町)まで、拠点~駅間輸送では新木場車両基地から有楽町線の新富町(東京都中央区)・銀座一丁目(同)・有楽町(東京都千代田区)の各駅まで、実験専用ダイヤの回送列車の1両に模擬荷物を積載する。
 
 各作業工程における所要時間・人員数、安全性確保のための人員配置、作業効率性や安全性に資する機器、施設・設備等の必要性と規模、旅客輸送への影響等を探るのが狙い。宅配各社とも鉄道車両を利用した貨物輸送の問題点・課題を洗い出す第1段階の実証実験と位置付けており、具体的には列車への荷物積卸の所要時間や駅から地上までの所要時間・列車内養生の必要性・利用に適した荷物や機材などを検証していく。
 
 実験は合計して10回行い、9月9日・10日・10月14日・15日の4日間がヤマト運輸、9月16日・17日・10月7日・8日の4日間が佐川急便、9月30日・10月1日の2日間が日本郵便の実験日。
 
 このうちヤマト運輸では、拠点間輸送の着地を和光車両基地とし、森林公園検修区も追加する可能性がある。9日の実験は宅急便120サイズの段ボール30個程度を2台の小型のロールボックスパレットに積み込み、和光車両基地まで輸送する予定。これら発着鉄道拠点に接続する自社拠点や、駅で荷物を降ろしてからの運用について、現段階で明確なイメージはないとしている。

 佐川急便はいずれの実験でも、佐川東京ロジスティクスセンター(東京都江東区)を発地とし、約3キロメートル離れた新木場車両基地に運んで列車に積載、拠点間輸送では森林公園検修区まで列車で輸送し、そこから約3キロメートルの同社東松山センター(埼玉県東松山市)まで輸送する。拠点~駅間輸送では、対象となる三つの駅から直接配達する形をイメージしている。
 
 日本郵便は「ゆうパック」「ゆうメール」などを模した段ボールを模擬荷物として、既存の保冷ボックス(今回は常温利用)に入れ、ロールボックスパレットに搭載してトラックで輸送、鉄道拠点でボックスだけを引き抜き列車に積載する。
 
 発地は新木場車両基地から約3キロメートルの新東京郵便局(東京都江東区)で、和光車両基地を経由して同基地から約3キロメートルの東京北部郵便局(埼玉県和光市)に輸送する。
 
 東京地下鉄では、実験結果について年度内にも公表する予定としており、これらの結果を踏まえ本格実施に向けたさまざまな取り組みを進めていく考え。

マレーシアOTLグループ買収へ ASEAN越境輸送、本格的小口混載を提供  ヤマトアジア

 ヤマトグループの東南アジア地域統括会社であるヤマトアジア(本社=シンガポール、リチャード・チュア・キン・セン社長)は8月31日、マレーシアを本拠地とするクロスボーダー陸上幹線輸送事業者OTLグループとの間で、OTLグループ3社の株式取得とベトナム事業の取得に関して合意した。
 
 ヤマトグループはこれまで、国際複合輸送サービスとして、日本を中心とした航空・海上輸送サービスや各国内でのロジスティクス・小口配送を行ってきたが、今回の買収によりOTLグループが持つシンガポール・マレーシア・タイ・ラオス・カンボジア・ベトナム・中国の7ヵ国間を結ぶ約6千キロメートルの幹線輸送ネットワークを取得することととなり、ASEAN~中国間クロスボーダー陸上幹線輸送サービスを提供することが可能になる。
 同グループでは将来的に、ASEAN各国で展開している小口輸送ネットワークとロジスティクス機能を結合させ、アセアン域内で本格的な小口混載クロスボーダー輸送サービスを提供していく考え。
 
 今回買収するのは「CKE Transport Agency」(CKE、本社=マレーシア・ペナン、チア・コウ・イ社長)と「Overland Total Logistic Services(M)」(OTLMY、本社=マレーシア・ペナン、チア・コウ・イ社長)、「Overland Total Logistics(Thailand)」(OTLTH、本社=タイ・バンコク、チア・コウ・イ社長)の3社。

 ヤマトアジアがCKE株式を100%取得した上で、同社(間接保有分を含む)とCKEがOTLMYおよびOTLTHの株式の過半数を取得し、経営権を保有する。株式の取得はいずれも本年12月末を予定。
 ベトナムについては、CKEが年内にも新規設立する事業会社を取得し、継続して事業を展開していく。
 買収金額は非開示。

 OTLグループは、シンガポール~上海間の自社車両・自社社員を中心としたクロスボーダー幹線ネットワークを保有しており、各国の国境付近に保税倉庫を保有するなど自社オペレーションによる迅速な国際輸送を展開。マレーシア・タイ・ベトナムではエアサスペンショントラックを有するなど高品質な輸送にも力を入れている。GPSによる全車両位置確認やCCTVカメラによる庫内監視、コンテナの解錠の本社一括管理(E―Lockシステム)、TAPA(FSR、TSR)認証も取得するなど、独自のセキュリティーシステムを構築している。

 ヤマトグループでは今後もOTLグループの買収を進め、最終的にはOTLグループ全体を傘下に収める構え。

 今回買収する3社の概要は次のとおり。
 【CKE】▽設立=1994年▽資本金=77万リンギット(約1900万円)▽資本構成=チア・コウ・イ氏100%▽従業員=237人▽主な事業=マレーシアにおける国内輸送等。
 【OTLMY】▽設立=2001年▽資本金=50万リンギット(約1300万円)▽資本構成=ポー・イ・ペン氏30%、CKE20%、チア・コウ・イ氏20%ほか▽従業員=55人▽主な事業=マレーシアにおける国内輸送・越境陸送、倉庫等。
 【OTLTH】▽設立=2008年▽資本金=2630万バーツ(約7900万円)▽資本構成=CKE45%、OTLMY16.4%ほか▽従業員=35人▽主な事業=タイにおける国内輸送・越境陸送等。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(65)『民進党のマニフェストを読んで驚いた(その2)』
    ☆四文字『業界の抵抗「強行陳情」』

  • ☆国交省、貸し切りバスに装着義務化が進むドライブレコーダーの性能要件を固める
    ☆YCF、クロネコ輸出ファクタリングサービスで秋田県特産品の海外販路拡大を支援
    ☆国交省・物流審議官部門、2017年度予算概算要求に鮮度保持コンテナやオープン型宅配ボックスの導入支援を盛り込む
    ☆国交省・自動車局の2017年度予算概算要求、自動車運送事業の安全対策で16年度予算比24%増を要求
    ☆国交省、第3回生産性革命本部で報告 11月ダブル連結トラックの実験開始へ
    ☆JADMA、10月会員対象に通販の「配達満足度」調査実施へ 「再配達」の設問を初設定
    ☆全ト協、2016年度「引越事業者優良認定制度」(引越安心マーク)に31事業者が申請、12月に認定へ
    ☆中国・四国・九州の3運輸局、大規模災害時に備え、支援物資物流システム構築のための第1回協議会を開催
    ☆LEVO、先進環境対応トラック・バス事業で、リース利用希望事業者の募集を開始
    ☆佐川急便、栃木県と包括連携協定を締結 地域活性化と県民サービス向上を目指す
    ☆西濃運輸、農林水産大臣から感謝状 熊本地震の緊急物資輸送に対し
    ☆SBSトランスポート、60歳以上ドライバーに「脳MRI検診」を実施 受診料全額会社負担
    ☆ヤマトHD、JTBとパナソニック3社共同で、9月~10月訪日外国人向け手ぶら観光支援サービスの実証実験実施
    ☆運管試験センター、2016年度第1回運行管理者試験(貨物)の試験問題・正答を発表 受験者は3万6千人
    ☆通運連盟、「鉄道コンテナお試しキャンペーン」好調で予算超過の見込み
    ☆佐川急便、全国37ヵ所で幹線輸送安全パトロールを実施 足回り重点の車両点検・アルコール検知器使用の中間点呼など
    ☆JR貨物、台風9、10号の影響受け北海道で運休多発 当面の対応策を発表
    ☆全ト協・日貨経連、8月WebKIT速報 荷物情報登録件数が3ヵ月連続増加に
    ☆シンガポール政府一行がコラボデリバリー吉祥寺店を視察、共同集配送事業に高い関心示す
    ☆JPI、「2016パッケージングコンテスト」でヤマサキが経済産業大臣賞

今週のユソー編集室

  • ▼9月1日は「防災の日」だ。93年前の1923年に発生した関東大震災にちなんだもので、地震や台風など災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備するため、1960年に制定された。
    ▼本年もこの前後の期間、各自治体等でさまざまな訓練が行われる。東日本大震災を経験して、各人のこうした訓練に臨む姿勢も格段に緊張感を増していたはずだが、先日発生した熊本地震では、物流面を見ても、いまだ多くの課題が残っていることが明らかになった。
    ▼災害と言えば、何も地震だけに限った話ではない。先日北日本を襲った台風では、高齢者のグループホームが濁流に飲み込まれ、9人もの方が亡くなるという痛ましい出来事が起きている。
    ▼近年自治体が宅配事業者と包括連携協定を結ぶ事例が増えているが、そこには必ず災害時の輸送支援という文言が盛り込まれている。こうした取り組みが実を結ぶことを、切に願わずにはいられない。

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