熊本地震における支援物資輸送ついての物流業者の一連の動きに対し「高い評価と感謝」 国交省の羽尾物流審議官
国土交通省の羽尾一郎物流審議官は5月30日、交通運輸記者会の記者団と会見し、熊本地震における支援物資輸送についての物流事業者の一連の動きに対し、「高く評価し、感謝する」と述べるとともに、5月2日に成立し、13日に公布された改正物流効率化法については秋の施行を目指し、現在政省令の整備などを進めていることを明らかにした。
羽尾審議官はまず、熊本地震での支援物資輸送について、日本通運とヤマト運輸がいち早く確保した九州内の物流施設を第1次物資拠点として、いわゆる「プッシュ型輸送」が初めて行われたことを説明。トラック・鉄道・海運・航空など全輸送モードで幹線輸送を行い、現地では、佐川急便が大量のトラックを投入してフィーダー輸送を実施することで、食料260万食などが被災地に届けられたとして、物流業界挙げての支援物資輸送に対し、「高く評価し、感謝したい」と述べた。
また、「輸送、保管、仕分など、物流のプロのノウハウが災害時の施設の活用にとって、いかに重要であるかを実感した」とし、一連のプロセスを通じて浮かび上がった課題点については、物流事業者や自治体からの報告などを通じて対応策などを取りまとめ、今後発生が予想されている首都直下型地震などに役立てていくとした。
物効法については、2005年に施行され、15年度末までに289件の特定流通業務施設が認定されたことなどを報告。輸送網の集約化やCO2排出削減に一定の効果を果たしたとの考えを示すとともに、5月13日に公布された改正物効法では、労働力不足対策の視点が柱になっていることを説明し、2者以上が連携した①モーダルシフト推進②地域内配送共同化③輸送網集約事業―の取り組みを通じて、物流の効率化・省力化を図っていくとした。
モーダルシフト推進については、2012年度に187億トンキロとなっている貨物鉄道による輸送を20年度までに221億トンキロに引き上げる目標を掲げている。
また、羽尾物流審議官は、改正物効法の条文に、「効率的な輸送手段の選択」との記載が盛り込まれたことに触れ、「法律上明確にモーダルシフトに相当する文言が入ったのは、画期的なこと」とし、多くの関係者に理解を求めながら、ドライバー不足対策に高い効果が期待されているモーダルシフトを強力に推進していくとの姿勢を強調した。
改正物効法の施行時期については、公布から6ヵ月以内と定められており、現在政省令の策定や基本方針の整備などを進めていることを説明、秋ごろの施行を目指しているとした。また、倉庫税制についても、改正物効法施行に合わせて昨年12月の政府与党税調大綱で示された新倉庫税制に移行する。
これにより、流通加工も行う総合物流保管施設にトラック営業所の併設や予約システムの導入など輸送網集約化を進め、トラックの手待ち時間を改善していくとし、年間30事例(20年度までに150事例)の創出を目指す。
増加する外国人観光客などを対象に、空港や鉄道駅、港湾で荷物を預かり、宿泊場所などに届ける「手ぶら観光」については、5月末時点で89ヵ所にカウンターが設置されており、物流事業者は佐川急便やヤマト運輸など6社が参画している。16年度末までに新たに80ヵ所のカウンター設置を目指す。