労働力不足改善へ 「生産性革命」で20年度までに物流就業者1人1時間当たりの付加価値額2割向上を目指す 国交省
国土交通省は18日、東京都千代田区の同省で「物流問題調査検討会」の第7回会合を開き、「物流生産性革命」の指標として、「就業者1人1時間当たりの付加価値額(企業の生産活動によって新たに生み出される価値)を、2020年度までに11年度比で2割向上させる」との案を了承。2日に成立し13日に公布された改正物流効率化法などを活用し、さまざまな政策を通じて、物流業界で深刻化する労働力不足の改善につなげるとともに、「稼げる」業界への変貌を目指す。
国交省では、16年を「生産性革命元年」と位置付け、省を挙げて「社会のベース」「産業別」「未来型」の三つの分野の生産性向上に取り組んでおり、労働力不足が深刻化する物流分野についても「オールジャパンで取り組む『物流生産性革命』の推進」がプロジェクトの一つに掲げられている。
また、昨年3月には「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」を策定し、今後取り組むべき具体的な施策を示すとともに、毎年フォローアップを行うことを決めた。
さらに、昨年末に取りまとめられた社会資本整備審議会・交通政策審議会答申でも、「わが国の物流は、危機的な状況に直面している」と指摘し、物流の目指すべき将来像実現に向けた具体的施策のあり方として、モーダルシフト促進やトラック輸送効率化、就業環境の改善と定着率向上など、労働力不足対策としての役割が期待される施策がメニューとして盛り込まれている。
物流生産性革命の推進については、「成長加速物流」と「暮らし向上物流」を組み合わせ、物流事業(トラック・内航海運・貨物鉄道事業の合計)の就業者1人1時間当たりの付加価値額を将来的に全産業並みに引き上げることを目指して、20年度までに11年度比で2割程度向上させる目標が案として掲げられた。
「成長加速物流」では、14年度に4割程度となっているトラックの積載効率を20年度までに50%に引き上げ、自動隊列走行を20年以降のできるだけ早期に実現することを目指す。
また、16年度中に物流を考慮した建築物の設計・運用の促進に向けガイドラインを策定する。
鉄道によるコンテナ輸送については、16年度中に「低床貨車」の実証実験を行うとともに、休日の利用拡大などを通じて20年度までに平均積載率を80%に向上させる。
「暮らし向上物流」では、オープン型ロッカーの設置を通じた受け取りやすい宅配便の実現や、共同集配・貨客混載による過疎地での物流サービスの利便性向上などを図る。また、小型無人機(ドローン)についても、早ければ18年ごろまでに荷物配達を実施する。
このほか、道路局関連施策として、輸送モード間の接続(物流モーダルコネクト)やダブル連結トラックによる省人化(本年度新東名高速で実験開始予定)、特殊車両通行許可の迅速化などを行う。
「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」については、改正物流効率化法の成立に基づき、「荷役・手待ち時間に係る商慣行等の見直し」「共同輸配送の促進」「過疎地用における新たな宅配システムの構築」などについての追記を決めた。