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2016年5月23日付 2610号

労働力不足改善へ 「生産性革命」で20年度までに物流就業者1人1時間当たりの付加価値額2割向上を目指す 国交省

 国土交通省は18日、東京都千代田区の同省で「物流問題調査検討会」の第7回会合を開き、「物流生産性革命」の指標として、「就業者1人1時間当たりの付加価値額(企業の生産活動によって新たに生み出される価値)を、2020年度までに11年度比で2割向上させる」との案を了承。2日に成立し13日に公布された改正物流効率化法などを活用し、さまざまな政策を通じて、物流業界で深刻化する労働力不足の改善につなげるとともに、「稼げる」業界への変貌を目指す。

 国交省では、16年を「生産性革命元年」と位置付け、省を挙げて「社会のベース」「産業別」「未来型」の三つの分野の生産性向上に取り組んでおり、労働力不足が深刻化する物流分野についても「オールジャパンで取り組む『物流生産性革命』の推進」がプロジェクトの一つに掲げられている。

 また、昨年3月には「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」を策定し、今後取り組むべき具体的な施策を示すとともに、毎年フォローアップを行うことを決めた。

 さらに、昨年末に取りまとめられた社会資本整備審議会・交通政策審議会答申でも、「わが国の物流は、危機的な状況に直面している」と指摘し、物流の目指すべき将来像実現に向けた具体的施策のあり方として、モーダルシフト促進やトラック輸送効率化、就業環境の改善と定着率向上など、労働力不足対策としての役割が期待される施策がメニューとして盛り込まれている。

 物流生産性革命の推進については、「成長加速物流」と「暮らし向上物流」を組み合わせ、物流事業(トラック・内航海運・貨物鉄道事業の合計)の就業者1人1時間当たりの付加価値額を将来的に全産業並みに引き上げることを目指して、20年度までに11年度比で2割程度向上させる目標が案として掲げられた。

 「成長加速物流」では、14年度に4割程度となっているトラックの積載効率を20年度までに50%に引き上げ、自動隊列走行を20年以降のできるだけ早期に実現することを目指す。

 また、16年度中に物流を考慮した建築物の設計・運用の促進に向けガイドラインを策定する。

 鉄道によるコンテナ輸送については、16年度中に「低床貨車」の実証実験を行うとともに、休日の利用拡大などを通じて20年度までに平均積載率を80%に向上させる。

 「暮らし向上物流」では、オープン型ロッカーの設置を通じた受け取りやすい宅配便の実現や、共同集配・貨客混載による過疎地での物流サービスの利便性向上などを図る。また、小型無人機(ドローン)についても、早ければ18年ごろまでに荷物配達を実施する。

 このほか、道路局関連施策として、輸送モード間の接続(物流モーダルコネクト)やダブル連結トラックによる省人化(本年度新東名高速で実験開始予定)、特殊車両通行許可の迅速化などを行う。

 「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」については、改正物流効率化法の成立に基づき、「荷役・手待ち時間に係る商慣行等の見直し」「共同輸配送の促進」「過疎地用における新たな宅配システムの構築」などについての追記を決めた。

マルチテナント型施設のブランド名を「レールゲート」に決定 JR貨物

東京レールゲートEASTの完成予想図

 JR貨物(田村修二社長)は18日、東京都品川区の同社東京貨物ターミナル駅構内に計画しているマルチテナント型大型物流施設2棟について、名称を「東京レールゲートWEST(発表時の仮称はエフ・プラザ東京M棟)」「東京レールゲートEAST(同エフ・プラザ東京N棟)」に決定するとともに、「レールゲート」の名称をブランド化し、同様のマルチテナント型物流施設の全国展開を検討していくと発表した。併せて「東京レールゲート」プロジェクトの第1弾として行われる新駅事務所および立体駐車場の実施設計・施工業者を決定するための入札手続きを開始した。

 このプロジェクトは、東京貨タ駅構内に、延べ床面積約6万1千平方メートルの「WEST」と、同約16万1千平方メートルの「EAST」の二つのマルチテナント型施設(どちらも地上5階建て)を建設する内容。「WEST」はJR貨物が開発し2018年1月着工・19年8月竣工を予定、「EAST」はJR貨物と三井不動産が開発し19年10月着工・21年10月竣工を予定している。正式な入居者の募集は、着工時ごろから開始する。

 昨年9月に概要を公表し、ブランド名の社内公募を行っていた。145件の応募の中から社内選考委員会で決定した「レールゲート」の名称選定の理由は、日本を代表する海と空の玄関口である東京港国際コンテナターミナルと羽田空港に隣接し、同社の基幹駅である東京貨タ駅構内に立地している点をアピールするもの、としている。

 同社では今後、「レールゲート」ブランド名によるマルチテナント型施設の全国展開について、検討を進めていく考え。

 同社ではこれに先立って行われる新駅事務所および立体駐車場の整備について、官報公告の上でWTOによる国際競争入札の手続きを進めており、7月に落札者を決定し17年12月の竣工を予定している。

 事務所棟は鉄骨造り地上5階建て、延べ床面積約7700平方メートル、駐車場は鉄骨造1層2段、延べ床面積約4千平方メートルの規模。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集、2016年度日通グループ 全国安全衛生大会

  • ☆ヤマトHD、15年度の宅急便商品別実績公表 クール宅急便が2.9%増に 海外は後発地域で減少
    ☆全ト協、トラック運送業の4~6月期景況感 見通しさらに悪化
    ☆JR貨物田村社長、熊本地震への対応まとめ 影響は限定的だが景気動向に懸念
    ☆警察庁、準中型免許改正道交法 来年3月に施行へ向けパブコメ
    ☆エコモ財団、16年度グリーン経営認証「リーダー研修会」全国10ヵ所で開催へ
    ☆全流協が社員総会・事業報告会開く、社会と調和の端末物流実現へ
    ☆全流協懇親会、瀬戸会長あいさつ 「生産性革命」元年に協力へ
    ☆セイノーHD田口社長、物流業界で進む再編 M&A前向きに検討
    ☆ヤマト運輸・岩手県、県産品の販路拡大支援など包括連携協定を締結
    ☆JRF・RC、「鉄道貨物振興奨励賞」論文および「住田物流奨励賞」の募集開始
    ☆日通、海外会社の営業利益100億円見込む ハラール物流をさらに強化へ
    ☆センコーグループHD、来年4月に本店を東京都江東区に移転
    ☆自民党倉庫議連が総会、日倉協・日冷倉協から税制・予算措置を要望などヒアリング
    ☆物流各社の16年度3月期決算

今週のユソー編集室

  • ▼今年1月1日付の本紙1面トップには、大きく「連携」の文字を入れている。トラックドライバーの不足感が強まっていく中で、重要なキーワードになっていく言葉と考えたからだ。
    ▼国土交通省は18日に開いた物流問題調査検討会で、2016年を「物流生産性革命元年」と位置付け、20年度までに物流事業に就業する1人1時間当たりの付加価値額を、11年度比で2割向上させるという目標を掲げた。
    ▼ちなみに現状のトラック運送業の付加価値額は、全産業平均の半分以下だという。10年間かけて20%向上させるという目標を「高い」とみるか「低い」とみるかは人それぞれだろうが、改善度が数値によって見える化されることは意義深い。
    ▼物流の未来を創るためにも、目標の必達を期したいところだが、そのためにもトラック運送事業者間はもちろん、行政や業種業態を問わない荷主との「連携」が、今後とも大きくクローズアップされていくことになるだろう。

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