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2016年5月16日付 2609号

共同ロッカー設置で宅配便再配達削減へ 22年までに5千台以上の設置を目指す  ヤマトHD・ヤマト運輸

会見したヤマトホールディングス山内社長(左端)らヤマト関係者とネオポスト関係者(右3人) なし

 ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)とヤマト運輸(長尾裕社長)は11日、ECの拡大で急増する宅配便の再配達への対応策として、フランスでECの発送・宅配ソリューションサービスなどを手掛けるネオポストおよび傘下のネオポストシッピングと複数の物流事業者が共同利用できるオープン型宅配ロッカー事業を行う合弁会社「Packcity Japan」(パックシティージャパン)を設立。「社会的課題」になりつつある宅配便の再配達削減に向け、2022年までに5千台以上のオープン型宅配ロッカー設置を目指す。
 11日に都内で会見した山内社長は、ECの拡大に対応した物流ネットワークの構築は急務で、中でも不在配達への対応は社会的課題となっているが、個別の企業では解決が難しいと説明。企業や業界の垣根を超えて連携し、この社会的課題を解決するには、「オープン」がキーワードになるとし、今後設置を進めるオープン型宅配ロッカーを通じて、物流ネットワークが「日本を良くする社会インフラ」としての役割を高めることにつながるとした。

 長尾社長は、年間36億個の宅配貨物のうち、約2割が再配達となっている現状を説明した上で、「受け取りたくても受け取ることができない」消費者にとって一度で確実に受け取ることができるオープン型ロッカーは、新たな利便性を提供すると強調。「だれでも」「どこでも」「いつでも」利用することができるオープン型ロッカーの設置と、ヤマト運輸が宅急便事業40年間で蓄積してきたビッグデータなどの組み合わせにより、物流事業者のみならず、消費者やEC事業者にも新たな価値を提供するとの考えを示した。

 来賓あいさつした国土交通省の羽尾一郎物流審議官は、労働力不足が深刻化する物流業界にあって宅配便の再配達により年間9万人分の労働力が浪費されていると指摘。再配達削減という「社会的使命」を果たすには、「既存の枠組みを捨て、緩やかなコンソーシアム(共同体)を作る必要がある」とし、「オープン型宅配ロッカーはコンソーシアムの具体例として高く評価できる」と述べた。

 オープン型宅配ロッカー=写真下=は「PUDO(プドー)ステーション」(Pick Up&Drop Off Station)と名付けられ、駅や学校、商業施設などに設置が進められる。5月10日にはJR東日本と首都圏の池袋・川口・蕨・大井町・鶴見・藤沢・平塚・豊田・下総中山・幕張・東所沢の各駅への設置を発表。駅以外も含め17年度までに千台を設置し、22年度までに5千台以上の設置を目指す。
 プドーステーションの維持・管理・運用などを行う合弁会社ピックシティージャパンは、資本金7億5千万円で、出資比率はネオポストシッピング51%、ヤマト運輸49%。事業開始は7月1日を予定し、社長はネオポストのジャン・ロラン・リュケ氏、副社長はヤマトの阿部珠樹氏が務める。


 ロッカーは、S・M・Lの3サイズの格納スペースが用意され、物流事業者には縦の1列単位またはロッカー1台単位でレンタルされる。レンタル料金は非公表で、ピックシティージャパンでは3年目以降での黒字化を見込む。
 EC購入者などの宅配利用者は、商品購入時などにウェブサイト上で希望のプドーステーションを指定。宅配事業者がプドーステーションに荷物を配達し、利用者はスマートフォンなどで受信した2つの4桁パスワードをタッチパネルで入力してパネル上に署名を行うと自動的に扉が開き、荷物を受け取ることができる。

 宅配時の不在による再配達依頼の場合にも同様の手続きでプドーステーションでの受け取りが可能になる。
 レンタルは当面、物流事業者を対象にするが、今後の利用動向などを勘案した上で、EC事業者などにも開放していく方針。

新中期経営計画の目標売上高を発表、18年度までに8千億円に引き上げ SGとのシナジー効果は500億円を想定  日立物流

 日立物流の中谷康夫社長は12日に東京都江東区の同本社で開いた2015年度決算・中期経営計画説明会で、2016年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「価値協創2018―Value Creation 2018―」の内容を明らかにし、18年度までに売上高を8千億円に引き上げるとの目標を掲げるとともに、3月に発表したSGホールディングス・佐川急便との提携によるシナジー効果は、売上高ベースで500億円程度を想定していることを示した。一方で、佐川急便との経営統合については、「統合ありきではない」とし、協業の効果についての検証を1~2年程度行った後に、検討を深めるとの考えを示した。

 中谷社長は、新中期経営計画の目指す姿として、「3PL事業の徹底強化とシェア拡大」「フォワーディング事業強化」などを挙げ、「クロスボーダー輸送・インターモーダル強化」については、SGグループとの提携を成長エンジンの軸に据える考えを強調。具体的には、アジアを中心としたフォワーディング事業・クロスボーダー輸送での連携を進めるとともに、SGグループの持つマルチデリバリーサービスなどの機能を日立物流のサービスと組み合わせ、デリバリー事業受託や3PLの拡販などを進める。

 これにより、16年3月期に6804億円だった売上高を18年度に8千億円まで引き上げる目標を掲げ、このうち500億円をSGグループとの協業による上乗せ分と見込む。

 このほか、海外でのM&Aやスマートロジスティクスに関する研究・開発、新型デジタルタコグラフ導入をはじめとする安全強化などに3年間で約1400億円を投じ、事業基盤を強化する方針を示した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字『どうなるのか「車両形態」』
    ☆ウォッチ「最近のベトナム経済と物流」

  • ☆SGHDの栗和田会長が今後の方向性を示す、グループ内外で連携強化して成長を図る
    ☆国交省が要件緩和でパブリックコメントを開始、一定の要件を満たした場合にGマーク未取得でもIT点呼が可能に
    ☆ヤマトHDの山内社長が講演、「ヤマトの強みはSD」創業100周年以降は情報でも価値を生み出す企業へ
    ☆トナミHDの綿貫社長が会見、組織改正やシステム整備による総合営業体制強化へ
    ☆全ト協、常に渋滞見据えた安全運転を呼び掛けるポスターを作成 相次ぐ追突多重事故を受け
    ☆JR東日本、ヤマト運輸と日本郵政と連携し100駅に受取ロッカー設置を発表
    ☆日本郵便・ジオシス、ネットモールQoo10でコンビニ等受取サービス導入を発表 4万5千ヵ所で受け取りが可能に
    ☆長距離フェリー協会、15年度輸送実績まとめ トラック航送台数は116万台で横ばいに
    ☆全ト協・日貨協連、WebKIT成約運賃指数まとめ 4月では過去最高の前同比1ポイント増加の116
    ☆全ト協・日貨協連、4月WebKIT速報まとめ 荷物情報23.2%増加で成約件数も10.2%増加
    ☆C&FロジHD、16~18年度中期経営計画発表 売上高1060億円を目標にグループ一丸となり基盤固めを推進へ
    ☆KWE、中国重慶の合併会社が中国の越境輸入EC専門保税倉庫運営を開始
    ☆日立物流東日本、水戸プラットフォームの「Ⅰ期」施設が稼働 来年には「Ⅱ期」も稼働予定
    ☆政府が「交通政策白書」で説明、地域支える持続可能な物流システムの実践的なノウハウ展開へ
    ☆経産省、流通・物流分野の情報利活用の研究会報告書を公表 30年への方向性示す
    ☆センコーが「成田ファッションⅡ」を稼働、4万平方メートルの大型拠点
    ☆近鉄エクスプレスが中期経営計画発表会見、世界で戦えるフォワーダーを目指す
    ☆丸運の市原社長が会見、赤字事業を整理し実力見合った成績に
    ☆各社の16年3月期決算

今週のユソー編集室

  • ▼夜遅く帰宅すると、郵便受けに宅配の不在連絡票が入っている。営業時間は終わっているし、ネットで再配達の指示を行うのも面倒だ。誰もが一度はそうした場面を経験しているのではないだろうか。
    ▼ヤマト運輸は11日に会見を開き、フランス企業との合弁で「オープン型宅配ロッカー」の設置に関する具体的な展開を発表した。時を同じくして日本郵便も宅配ロッカー「はこぽす」の設置場所拡大を発表している。
    ▼宅配ロッカーの設置に関しては、ヤマト運輸も日本郵便も「顧客利便性の向上」を目的にあげる。1人暮らしをしている女性の中には、できれば男性の配達員との対面は避けたい人もいるだろう。
    ▼利便性向上を主眼とする以上、やはり関係者が連携・協力して宅配ロッカーの普及に取り組んでもらいたい。基本的にどの事業者でも利用できるオープン型が望ましいのはもちろんだ。「だれでも」「いつでも」「どこでも」受け取れる日が、待ち遠しい。

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