共同ロッカー設置で宅配便再配達削減へ 22年までに5千台以上の設置を目指す ヤマトHD・ヤマト運輸
ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)とヤマト運輸(長尾裕社長)は11日、ECの拡大で急増する宅配便の再配達への対応策として、フランスでECの発送・宅配ソリューションサービスなどを手掛けるネオポストおよび傘下のネオポストシッピングと複数の物流事業者が共同利用できるオープン型宅配ロッカー事業を行う合弁会社「Packcity Japan」(パックシティージャパン)を設立。「社会的課題」になりつつある宅配便の再配達削減に向け、2022年までに5千台以上のオープン型宅配ロッカー設置を目指す。
11日に都内で会見した山内社長は、ECの拡大に対応した物流ネットワークの構築は急務で、中でも不在配達への対応は社会的課題となっているが、個別の企業では解決が難しいと説明。企業や業界の垣根を超えて連携し、この社会的課題を解決するには、「オープン」がキーワードになるとし、今後設置を進めるオープン型宅配ロッカーを通じて、物流ネットワークが「日本を良くする社会インフラ」としての役割を高めることにつながるとした。
長尾社長は、年間36億個の宅配貨物のうち、約2割が再配達となっている現状を説明した上で、「受け取りたくても受け取ることができない」消費者にとって一度で確実に受け取ることができるオープン型ロッカーは、新たな利便性を提供すると強調。「だれでも」「どこでも」「いつでも」利用することができるオープン型ロッカーの設置と、ヤマト運輸が宅急便事業40年間で蓄積してきたビッグデータなどの組み合わせにより、物流事業者のみならず、消費者やEC事業者にも新たな価値を提供するとの考えを示した。
来賓あいさつした国土交通省の羽尾一郎物流審議官は、労働力不足が深刻化する物流業界にあって宅配便の再配達により年間9万人分の労働力が浪費されていると指摘。再配達削減という「社会的使命」を果たすには、「既存の枠組みを捨て、緩やかなコンソーシアム(共同体)を作る必要がある」とし、「オープン型宅配ロッカーはコンソーシアムの具体例として高く評価できる」と述べた。
オープン型宅配ロッカー=写真下=は「PUDO(プドー)ステーション」(Pick Up&Drop Off Station)と名付けられ、駅や学校、商業施設などに設置が進められる。5月10日にはJR東日本と首都圏の池袋・川口・蕨・大井町・鶴見・藤沢・平塚・豊田・下総中山・幕張・東所沢の各駅への設置を発表。駅以外も含め17年度までに千台を設置し、22年度までに5千台以上の設置を目指す。
プドーステーションの維持・管理・運用などを行う合弁会社ピックシティージャパンは、資本金7億5千万円で、出資比率はネオポストシッピング51%、ヤマト運輸49%。事業開始は7月1日を予定し、社長はネオポストのジャン・ロラン・リュケ氏、副社長はヤマトの阿部珠樹氏が務める。
ロッカーは、S・M・Lの3サイズの格納スペースが用意され、物流事業者には縦の1列単位またはロッカー1台単位でレンタルされる。レンタル料金は非公表で、ピックシティージャパンでは3年目以降での黒字化を見込む。
EC購入者などの宅配利用者は、商品購入時などにウェブサイト上で希望のプドーステーションを指定。宅配事業者がプドーステーションに荷物を配達し、利用者はスマートフォンなどで受信した2つの4桁パスワードをタッチパネルで入力してパネル上に署名を行うと自動的に扉が開き、荷物を受け取ることができる。
宅配時の不在による再配達依頼の場合にも同様の手続きでプドーステーションでの受け取りが可能になる。
レンタルは当面、物流事業者を対象にするが、今後の利用動向などを勘案した上で、EC事業者などにも開放していく方針。