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2016年4月4日付 2604号

日立物流と佐川急便が提携 相互の機能を補完しニーズに一元対応 アジア圏で存在感を発揮

左から荒木社長、町田社長、中谷社長、齊藤副社長

 SGホールディングス(町田公志社長)と佐川急便(荒木秀夫社長)、日立物流(中谷康夫社長)は3月30日、佐川急便と日立物流の間で経営統合を視野に入れた戦略的資本業務提携契約を締結、同日都内で3社の社長および日立製作所の齊藤裕代表執行役執行役副社長が出席して記者会見を行った。
 デリバリー事業に強みを持ちtoC向け配送機能を有する佐川急便と、BtoB市場で先進的な3PL物流を手掛ける日立物流が相互に機能を補完し合うことで、多様化する顧客ニーズに一元的に対応できる体制を構築するほか、特にアジア圏での事業拡大を図るなど海外事業を強化する。

 SGHDは日立製作所から日立物流株式3234万9700株(議決権所有割合29.0%)を約875億円で取得し、日立物流はSGHDから佐川急便株式1065万5240株(同20.0%)を約663億円で取得する。株式異動は5月19日(日立物流株式の譲渡)と同20日(佐川急便株式の譲渡)を予定。異動後の日立物流に関する日立製作所の議決権所有割合は30.01%となり、筆頭株主の地位は維持する。

 業務提携の内容は、①相互の顧客基盤を活用した営業連携による提案力の強化および事業拡大②車両集中管理やセンターの共同活用による稼働率向上と効率性の追求③両社のIT・LT(Logistics Technology)技術を駆使した最先端物流への取り組み④アジアを中心としたグローバル事業の強化(フォワーディング事業やクロスボーダー輸送の連携等)⑤リソース(不動産事業・システム事業等)の相互活用と連携による周辺事業の強化―の5項目。

 SGHDと日立物流の両社は、顧客ニーズに一元対応できる体制を構築するとともに、両社が実業を展開しているアジア圏を中心とした海外での事業強化を図る。このほか佐川急便が全国425ヵ所に設置している営業所を、昼間時間帯の通過型倉庫やミルクラン輸送の拠点として日立物流に提供することや、路線便の相互活用、先進的省人化設備とターミナル機能を有する次世代型物流センターの設置、配車ビッグデータの人工知能解析による物量予測・最適配車の実現など、さまざまな構想が明らかになったが、これらの実現時期は示されなかった。

 会見では提携先を決定した要因として「われわれの強みを生かせるのが日立物流と判断した(荒木社長)」「佐川急便とはすでに実業ベースの積み上げがあり、グローバル展開の強い意志も共有できた(中谷社長)」ことを挙げた。資本提携を選択した理由に関しては「本提携に対する覚悟を示したもの(町田社長)」「協業の成果や投資の回収を互いに見える形にするため。世界に挑戦するためにはより大きな経営基盤が必要で、資本提携はその第1歩(中谷社長)」として、両者共その意義を強調した。

経営統合はシナジー確認後

 海外事業に対するプラス効果では「現在海外事業売上高が2700億円程度で、このうちアジアが500~600億円程度。主戦場のアジアでは100~200億円程度は伸ばすことができると思う。外資系大手のインテグレーターとは違う形でアジアにおいて存在感を示したいと考えており、これを実現できる可能性は高いと思う(中谷社長)」「現状海外売上高は700億円程度。早く1千億円規模に拡大させていきたいと考えており、いろいろなチャンスを増やしていきたい(町田社長)」とした。

 一方で経営統合に関しては「現段階でスキームは想定していない。まずはシナジーを追求していく。統合には2~3年かかるかもしれないが、スピード感をもってやりたい(町田社長)」「しかるべきタイミングで検討する(中谷社長)」として、両者共今後の検討課題とする考えを示した。

 佐川急便と日立物流の2015年3月期の業績は次のとおり。

 【佐川急便】▽売上高7284億2700万円(前年同期比0.02%増)▽営業利益300億7600万円(6.8%増)▽経常利益313億3300万円(5.3%増)▽当期純利益187億8300万円(48.8%増)。

 【日立物流】▽売上高6785億7300万円(8.5%増)▽営業利益214億6500万円(37.7%増)▽親会社株主に帰属する当期利益132億5千万円(148.2%増)。

日本通運が新経営計画2018『新・世界日通。』を発表、「利益にこだわる」前々・前計画の総仕上げ

新計画を発表する渡邉社長

 日本通運(渡邉健二社長)は3月31日、2016~18年度を期間とする新中期経営計画「日通グループ経営計画2018―新・世界日通。」を発表した。「前々計画2012・前計画2015」の“総仕上げ”となる3ヵ年の経営計画と位置付け“利益にこだわるグループ経営”を推進していく。

 最終年度の数値目標は、売上高2兆1500億円、営業利益750億円、当期純利益450億円、国際関連事業売上高8600億円、ROA(総資産利益率)2.8%、投資計画(3ヵ年)2千億円を設定。

 国内会社の事業別、海外会社のエリア別で作成していたセグメントを「ロジスティクス」「警備輸送」「重量品建設」「物流サポート」の各項目に変更し、ロジスティクスは日本、米州、欧州、東アジア、南アジア・オセアニアの5極に分類。物流サポートは日通商事、日通総合研究所、日通キャピタル、日通不動産、キャリアロード、日通自動車学校等の子会社を対象とする。

 基本方針として「国内事業の収益性をさらに向上させ、真のグローバルロジスティクス企業となるべく、注力する事業領域と成長地域へのBtoBに特化した集中投資を着実に実行する」を掲げ、エリア・機能戦略の2大柱で構成。

 エリア戦略では、日本を世界の一極と位置付け、「成長性」と「収益性」の両立を目指し◎地域特性に適応した事業展開◎国内事業の強化と新規事業軸の構築―に取り組む。海外は日通グループの成長を牽引していくため◎地域特性に適応した事業展開◎強みを持つ事業の海外展開強化―を項目に挙げている。

 機能戦略では、◎営業力の徹底強化◎コア事業の強化と高度化◎グループ経営の強化◎経営基盤の強靭(きょうじん)化◎グループCSR経営のさらなる強化―に取り組む。
 同日、記者会見した渡邉社長は総仕上げとの表現について、「ペリカン便の事業譲渡後、設備・人員等の大きな問題を抱えたが、(経営体質の)リニューアルに取り組み一定の方向性を得たと見ている。前経営計画の目標に対して、それなりのところに来ていると認識しており、このリニューアルから次のステップを見据えるために、利益を確保できる体質を作り上げる総仕上げだとの考え」と語った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(55)『消費税増税 凍結の布石か(その2)』

  • ☆日通、4月1日付組織改正で航空支店を各ブロック所管に ワンストップ営業体制へ
    ☆全ト協が自動車局長通達受けテロ対策通知、終業後のドアロック徹底など要請
    ☆宅配大手2社中心に自治体との連携協定締結の動き加速
    ☆国交省、共同輸配送促進に向けたマッチングシステムの15年度成約は7件 鉄道・船舶はゼロ
    ☆国交省がわが国物流システムの国際標準化検討会開く、第1回は小口保冷がテーマ
    ☆NEXCO各社がETC2.0車載器の購入で1台1万円を補助、業務用車両を対象に先着45万台 
    ☆山九、6年ぶりに技術・開発展示会を開催 開発品67点を紹介
    ☆全ト協、本年度事業計画 取引環境改善等諸対策推進等の承認など最重点施策に7項目
    ☆三井不動産がロジスティクス事業強化へ、新たに5棟の開発を発表
    ☆東ト協、16年度事業計画案を承認も創立50周年記念事業を一部見直し
    ☆東ト協連が運賃動向に関するアンケート調査結果を公表、希望に比べ運賃『低い』が依然として8割超
    ☆国交省、持続可能な物流ネットワーク 15年度実施の5地区のモデル事業を報告
    ☆全国通運杉野社長が16年度の抱負語る、元請け事業をさらに強化し冷凍冷蔵輸送実現へ
    ☆三菱倉庫が3ヵ年の新中計策定、投資計画は600億円予定
    ☆国交省が第6回物流問題調査検討会で指標設定の議論スタート、物流の生産性向上へ
    ☆国交省、SOLAS条約改正に伴う海コン安全輸送ガイドラインの一部内容を改訂へ
    ☆国交省自動車局の平井安全政策課長が会見、春の全国交通安全を前に運行管理の再徹底など要請

今週のユソー編集室

  • ▼先週は、佐川急便と日立物流の資本業務提携というビッグニュースが飛び込んできた。もちろん本紙でも上欄のとおり、1面トップで報じている。
    ▼記者会見では日立物流の中谷社長が、「1社で多様化する顧客ニーズに全て対応するのは難しい」と提携の背景を語っている。提携や連携の重要性は、物流のキーワードとして、今後ますますクローズアップされてくるだろう。
    ▼今回の件ではないが、提携会見ではたまに関係者間の微妙な認識のズレを感じることがある。それが提携の成否を占う材料になるわけではないが、やはりそうした場合は往々にして成果を上げるのに苦労しているように思う。それだけ提携と言うのは難しい作業なのだろう。
    ▼かつてとある労働組合の委員長が「心合わせ」の重要性を説いていたことを思い出す。なかなか聞き慣れない言葉ではあるが、連携の重要性が叫ばれる今だからこそ、「心合わせ」の大切さを感じないではいられない。

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