第11回鉄道利用運送推進全国大会開催、モーダルシフトの推進へ全力 お試し輸送活用例紹介等 通運連盟
全国通運連盟(川合正矩会長)は10日、東京都千代田区のパレスホテル東京で、第11回鉄道利用運送推進全国大会を開催した。
トラックのドライバー不足で鉄道貨物輸送への期待は高まっており、通運連盟が鉄道貨物輸送拡大のため運賃の一部を補助する「鉄道コンテナお試しキャンペーン」も、近年大幅に利用が増加している。大会ではキャンペーンを利用した新規荷物獲得事例の発表や、国のモーダルシフト施策の説明を受けるとともに、次年度の事業計画に反映させる重点取り組み事項を、大会決議の形で採択した。
大会には行政・JR貨物・利用運送事業者・荷主企業関係者らが出席。冒頭あいさつした川合会長は「通運業界最大の課題は、地球温暖化対策やトラック運転手不足を踏まえた鉄道モーダルシフトの促進。交通政策審議会の答申でも、今後の物流の方向性として生産性革命の実現がうたわれており、さらなるモーダルシフトの推進が最も重要な施策の一つと位置付けられている」と述べ、モーダルシフトの重要性を指摘した上で「そのためにも顧客に選ばれる高品質な輸送サービスの提供が必要」と強調。環境優位性など強みの発揮と、輸送障害時の対応など弱みの克服、鉄道コンテナ輸送の認知度向上などに全力で取り組んでいく考えを示した。
来賓からは、羽尾一郎国土交通省物流審議官、田村修二JR貨物社長があいさつ。
このうち羽尾審議官は、改正物流総合効率化法の成立・施行等を通じて、国としても鉄道モーダルシフトの推進に力を入れていく姿勢を示しながら、JR貨物の完全民営化に向けた動きにも言及。「現在JR貨物と鉄道利用運送事業者の間で、さまざまな問題が発生していると聞いているが、株式上場が現実味を帯びてくれば、さらに多くの課題が発生するだろう。将来の鉄道貨物輸送のあり方を念頭に置き、関係者が話し合いを重ねていくことが重要になる」と指摘した。
田村社長は「『鉄道コンテナお試しキャンペーン』の大幅な利用増加などで、モーダルシフトの流れは実感している。来年度には鉄道事業部門の黒字化に全力を尽くす」と語る一方、懸案となっているオフレールステーション(ORS)問題について「収支改善に協力いただき感謝している、黒字化の目途がついたORSは存続させ、難しいORSは他の手段で鉄道貨物輸送を継続いただくよう、早急に詰めていく」と言及。青函トンネルの付加金問題については「4月実施に向けて、引き続き理解を得られるよう頑張りたい」として、引き続き協議に臨むよう求めていく考えを示した。
大会ではその後、国土交通省の坂巻健太大臣官房参事官(物流政策)が「鉄道利用促進に向けた施策」について講演。「鉄道コンテナお試しキャンペーン」を利用した新規荷物獲得事例の紹介として①佐藤嘉高日東工業物流部長・清水孝洋日本通運多治見支店長②瀬戸保夫日建リース工業物流事業本部執行役員部長・保坂武志ヤマト運輸通運支店長―の二つの事例を4人が説明。さらに特別講演として、永山啓樹日産自動車技術企画部主管が「日産自動車の最先端技術」を紹介した。
最後に採択された大会決議では◎「鉄道コンテナお試しキャンペーン」の積極的活用◎31フィート等大型高規格コンテナと集配車両の導入促進◎輸送障害時のトラック代行輸送等のさらなる改善◎荷物事故の防止に向けた効果的な養生資材の開発普及や荷物の適切な積付◎モーダルシフトの担い手となる人材の育成◎多様な媒体を活用した費用対効果の高い新たな広報宣伝活動の展開◎実効性ある行財政施策の拡充に向けた働きかけ―などに取り組んでいくとした。