連携した効率化を支援 労働力不足対策にシフト、物効法新ステージへ 改正法案を閣議決定、国会審議へ
2日に閣議決定された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(物流効率化法改正案)では、モーダルシフトや共同配送、倉庫へのトラック営業所併設などの取り組みを2者以上で連携して実施する場合、認定された計画に対して補助金や税制特例、事業開始手続きの簡素化などの支援が行われる。
現行の物流効率化法は創設から約10年で270件を超える認定が行われ、大規模で高機能な倉庫施設の整備と効率的な物流の実現に一定の役割を果たしてきた。改正物流効率化法では、物流業界で深刻化する労働力不足への対策としての役割を前面に押し出し、複数の関係者による物流効率化を後押しする枠組みに改める。
①鉄道・船舶へのモーダルシフト②地域内配送共同化③輸送機能と保管機能の連携―が認定対象となる事業イメージとして示されており、これらの取り組みには補助金などの予算措置や税制上の特例、事業開始手続きの簡素化などの支援が行われる。
モーダルシフトについては、交通基本計画で2020年度までに12年度比で鉄道・船舶とも各34億トンキロをシフトする目標が掲げられており、改正物流効率化法を通じた支援により目標達成を目指す。地域内配送共同化については、積載率や運行頻度の改善などにより無駄の少ない配送を行うモデル的な取り組みを20年度までに100事例創出する。
輸送機能と保管機能の連携については、倉庫にトラック営業所を併設して回送距離を削減したり、トラック荷役の予約システムを導入して手待ち時間を削減するような事例を年間30事例、20年度までに150事例創出することを目指す。
支援措置については、昨年末に閣議決定された16年度予算案に、「モーダルシフト・共同輸配送の促進」で3800万円を盛り込んだほか、エネルギー対策特別会計で①鉄道・海上輸送への転換促進②31フィートコンテナの導入③都市鉄道等の旅客鉄道を利用した新たな物流システム構築④共同輸配送設備の導入―などに37億円の内数を計上しており、国会での成立後これらの予算を活用していく。
税制特例については、倉庫事業者が保有する倉庫・付属施設について、「所得税・法人税の割増償却を5年間10%」「固定資産税等の課税標準を5年間倉庫2分の1、付属設備4分の3」、都市鉄道の旅客列車などを利用した貨物輸送に関しては、貨物用鉄道車両の課税標準を5年間3分の2(中小鉄軌道事業者は5年間5分の3)、貨物搬送装置の課税標準を5年間5分の3とすることが昨年決定された16年度税制改正大綱に盛り込まれている。
旅客鉄道による貨物輸送は、都市部の旅客鉄道の回送列車・貨物専用車両などを活用した貨物輸送を想定しており、すでに大都市の民鉄・地下鉄事業者が実施に向けた検討に入っているものとみられる。
事業開始の手続き簡素化については、自社貨物に加えて連携する他社の貨物輸送を請け負うような場合に、他社と同様の事業許可が行われたとみなすもの。例えば、利用運送事業の許可事業者とトラック事業の許可事業者の組み合わせでは、計画の認定によって、それぞれがトラック事業と利用運送事業の届出をしたとみなされ、相互の貨物を運ぶことが可能になる。みなし許可は、改正物流効率化法の認定計画以外にも有効。
改正物流効率化法は、公布後6ヵ月以内に施行のスケジュールとなっており、今国会で成立すれば年内に施行される見込み。改正法施行までは、現行の物流効率化法の要件で申請・計画認定が行われる。また、現行法で定められている設備要件の改正法への適用の有無などは今後省令で決める。