自動運転の記録機能、ドライブレコーダーの有効・必要性を提言 シンポジウム「ドラプリ2015」
「車の自動運転社会が到来すると、航空機のフライトレコーダーに相当する機能が必要となり、その役割をドライブレコーダーが担うことになる」。
自動走行の実現可能性が高まる中で、万一の事故に備えた記録システムとしてのドラレコの将来展望を探るシンポジウム『ドラプリ2015「ドライブレコーダーと自動運転(高度運転支援)」』(ドライブレコーダー協議会・神奈川大学工学研究所共催)が1日、東京都千代田区の日本大学駿河台校舎で開かれ会員事業者・産学官関係者など約160人が参加、「トラック隊列走行」の早期実現の可能性や、映像記録の有効性についての指摘・提言が行われた。
シンポジウム冒頭にあいさつした松浦春樹神奈川大教授は、事故予防の「プロアクティブ」に対し、原因を究明する「リプロアクティブ」のミッションをドラレコは担っていると述べ、専門各分野で意見を交わし、議論を深堀りしてほしいと語った。
国土交通省の久保田秀暢自動車局技術政策課国際業務室長による基調講演「自動運転に関する国内外の動向」に続き、ITS Japanの内村孝彦理事、NTTデータアイの宮嵜拓郎特別参与、審調社の森澤三郎課長代理、明治大学の中山幸二法科大学院教授がそれぞれ自動運転の最新動向や、事故発生時の立証責任の方向性などを講演。このうち、内村理事は「トラック隊列走行は、早期実現の可能性を感じる」との見解を述べ、トラックの幹線輸送分野での実現の可能性を示唆した。
一方、宮嵜特別参与は自動運転により事故がなくなるとの「安全神話」に警鐘を鳴らし、運転者・所有者、自動車製作者に責任がどの程度になるかを確定させる必要性を指摘。交通事故解析士である森澤課長代理は、電子制御システムに起因する自動車事故事例を披露し、運転状況の記録の重要性を訴えた。中山教授は手動・自動が混在する段階を見据えた「未来の法構造」を提唱した。
自動運転技術は、「一部自動」のレベルワンから「完全自動」のレベル4までのステップに区分され、政府では2020年前半までに「監視型自動」のレベル3実現を目指している。その実現性については、ASV(先進安全自動車)等ですでに実用化されている技術・システムや、近い将来に開発が見込まれる技術を積み上げていくことで可能と見込まれ、高速道路やルート走行など、一定の制約を設けた条件付きの場合は早い段階で技術的にはクリアできるものと見られている。国交省では16年度予算概算要求の新規項目「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業」で複数台のトラックの縦列走行に向けた研究開発を要求している。
一方で、無人走行であっても事故が発生した場合の所有者責任や製造者責任、対人事故を避けられない状況下での究極の選択等、新たな法的・道義的問題を整理・整備していく必要があるとされている。なお、ドラレコ専門の同シンポジウムは今回で7回目を数え、国交省はじめ5団体が協賛、今回から自動車事故対策機構が加わった。