「賢い物流管理」実現へ 物流効率化と過積載撲滅を一体的に進める施策を合同小委で提示国交省
国土交通省は5日に開かれた、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会物流小委員会と交通政策審議会交通体系分科会物流部会物流体系小委員会の合同会議の場で、「ITを活用した『賢い物流管理』について(案)」を公表し、ETC2.0を活用した施策と、自動重量計測装置WIM(Weight―in―motion)を活用した施策を組み合わせ、物流効率化と過積載の取り締まり強化を一体的に進める考えを示した。
「ETC2.0」を活用した施策では①装着車への特車通行許可の簡素化②トラック運行支援サービス③大型車誘導区間の「ラスト1マイル」の追加―の3点を挙げている。
特車通行許可では現在、申請した個別の輸送経路のみ通行可能なことに加え、定期的に更新手続きが必要となっているのに対し、ETC2.0装着車を対象に、国が指定した大型車誘導区間を走行する場合、一つの申請で輸送経路を自由に選択できるようにする。更新手続きについてもETC2.0で得られる経路データやWIMで得られる重量データを照合し、違反がない場合は自動更新できるようにする。国交省では今月中にもパブリックコメントを募集した上で実施に踏み切る構え。
運行管理支援については、ETC2.0で得られるリアルタイム位置情報と急制動等で判断できる危険箇所情報を、事業者に提供する形で社会実験を行うこととしており、今月中にも事業者の公募を開始する。公募対象は物流事業者に加え、国交省のデータを加工して提供する事業者、バス事業者、レンタカー事業者なども含む。
大型誘導区間の追加では、現在誘導区間から目的地である物流拠点までの「ラスト1マイル」がつながっていない部分があるため、まずは国際競争力強化の観点から2015年度内に国際戦略・拠点港湾との「ラスト1マイル」を選定・追加し、16年度以降物流効率化や環境保全の観点から、重要港湾・工業団地・トラックターミナルなどへのさらなる「ラスト1マイル」について、順次検討・追加していく。
WIMを活用した施策については、現在40ヵ所に設置されている同装置の計測により、直近2年間の過積載車両が12年度比で約3割も増加していることを背景としたもの。施策は①増設とイエローカード(警告・是正指導)の見直し②道路管理者ネットワークの構築③トラックと荷主情報のマッチング―の3点。
増設とイエローカードについては、新技術を採用し測定誤差を改善させたWIMを本年度から順次増設するほか、現在軸重と月間の違反回数で2段階に設定されているイエローカードゾーンについて、段階の細分化を図るとともに、レッドカード(告発・許可取り消し)の発出条件についても、現行のイエローカード4回を3回以下に引き下げるなど厳罰化を視野に入れ、16年度から段階的に見直していく。
道路管理者ネットワークでは、現在各高速会社でばらつきがみられる特車基準等について統一化を図るとともに、違反情報の共有化、基地取り締まり時のWIM情報の活用、基地取り締まりの強化を行うもの。いずれも16年度から順次実施していく方針で、特車基準の統一化のみ前倒しの実施を検討する。
荷主情報とのマッチングについては、過積載運行に関して荷主にも責任をもたせることを意図したもので、16年度から◎基地取締りの違反者に荷主名など荷主に関する情報を聴取◎荷主も関与した特車許可申請の仕組みの検討―を順次実施していく。さらに工事現場など運送元に関する情報を活用した防止策についても、幅広く検討していく考え。
これらの施策にメリハリをきかせ、20年度目途に過積載半減を目指していく。
委員からはWIMの増設方針について質問が挙がり、これについて国交省側は通行量の多いところに増設していく考えを示したものの、具体的な設置基準や増設箇所数については検討中とした。
合同会議ではこのほか、関係者からのヒアリングとして、国土技術政策総合研究所の牧野浩志ITS研究室長が「路車協調システムの動向」について、ITS Japanの内村孝彦理事が「自動運転技術の動向」について、日本通運の中野喜正業務部専任部長が「『オペレーション支援システム』活用による運行・作業実績の可視化と安全・エコドライブ運転の推進」について、それぞれ説明した。
このうち中野専任部長は、データ・テック製のドライブレコーダー一体型デジタル式運行記録計を用いて開発したオペレーション支援システムの導入により、動態管理や燃費管理・積荷状況把握などといった運行管理面に加え、運転行動評価や危険挙動把握など安全運転面、勤務日報など勤怠管理面で改善が図られたことを説明。
今後は作業計画や実績管理など作業操配機能の追加や、稼働率・実車率・燃費情報・一車別収支データの活用による、さらなる効率化を予定していることなどを明らかにした。