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2015年11月2日付 2585号

10~12月出荷見通しは水面近くまで回復するも運賃上昇基調はやや一服感  日通総研短観

 日通総合研究所(宮近清文社長)は10月27日、企業物流短期動向調査「日通総研短観」9月分調査を発表、10~12月見通しの『荷動き指数』は水面近くまで回復すると分析している。また、運賃・料金は上昇基調にやや一服感がみられる中で、トラックはドライバー不足の顕在化を背景に上昇圧力は依然として強いとコメントしている。

 製造業・卸売業2500事業所を対象に、四半期ごとに足元の出荷動向をアンケートしているもので、「増加」の回答割合から「減少」の回答割合を差し引いた指数でデータ分析している。今回の回答率は41.4%。

 要旨次のとおり。
 国内向け出荷量『荷動き指数』は、7~9月実績では、前期(4~6月)実績より5ポイント上昇してマイナス6となった。また、10~12月見通しでは4ポイント上昇してマイナス2と見込まれ、緩やかな改善が続いている。
 10~12月見通しの輸送機関別『利用動向指数』は、国内航空以外の輸送機関で改善方向に動くものの、引き続き全輸送機関でマイナスとなる。ただし、一般トラック・特別積合せトラック・宅配便・鉄道コンテナでは水面近くまで戻しつつある。
 輸出入貨物量『荷動き指数』は、外貿コンテナの輸入で小幅に上昇する一方、その他の輸送機関では悪化する見込みで、引き続き全輸送機関でマイナスになるとみられる。

宅配の再配達削減に関する報告書について長尾社長がコメント、他社とのリソース共有も  ヤマト運輸

 ヤマト運輸の長尾裕社長は10月26日、同社全国安全大会の競技中に記者団と会見し、国土交通省が10月中旬に発表した宅配の再配達削減に関する報告書や、楽天の「楽びん!」など各社が提供している新たな宅配サービス、労働力不足対策などについてコメントした。

 宅配の再配達削減に関する報告書については「問題提起していただいたことはポジティブに捉えている」と評価した上で「これからが大事。どうやって実効を上げていくのか、さまざまなトライアルをしていかないといけない。IT(情報技術)で受け手の希望する時間帯を明確化する仕組みや、自宅以外でも受け取れるような仕組みづくりを、国とも協力しながら進めていきたい」と語り、さらに「そうした仕組みづくりはヤマト運輸だけが背負うわけではない。日本郵便などもネットワークを持っており、お互いのリソースを活用しながら世の中に対してより良い仕組みを提供したい」と述べ、再配達削減に向けて他の宅配便事業者と協力していく可能性を示唆した。
 報告書で触れられているポイントの付与については「誰がポイントの原資を負担するのか明確でない」と実現性を疑問視しながらも「受け手側の努力には何からのインセンティブが必要かもしれない」と今後検討していく考えを示した。一方で「その場合でも原資の問題はある。やはり必要なコストについては、しっかり負担していただく世の中に変えていくべき」と語り、“送料無料”が広く普及していることに対して疑問を投げ掛けた。

 24時間配達や最短20分以内配達などを掲げる新たな宅配サービスについては「EC(電子商取引)の拡大により特異なニーズが地域を限定して存在している。そうしたニーズに宅急便のネットワークが応えていく必要があるのかは疑問だ。ただヤマトグループとしては、宅急便とは別部隊でそうしたニーズに応えていく可能性はある」と語り、ヤマト運輸以外での新サービス提供に含みを持たせるとともに、新たな宅配サービスが既存のサービスと競合関係に陥る可能性を否定した。

 労働力不足に関しては集配業務で女性活用を進めることや、高齢者に対する職域の開放を行っていくとともに「従来の業界の働き方や雇用のあり方を抜本的に見直す必要がある」として、長時間労働の改善を進めながら、今まで高校を対象に行っていたSD確保の働きかけを大学にも拡大させることや、大卒者であっても採用地域内にとどまるキャリアプランの構築を検討していく考えをみせた。
 一方で「幹線輸送を担う大型免許保有者の確保が大きな課題」と指摘し、高速道路の自動運転技術の早期実用化など「従来とは違う幹線輸送のあり方を考えていかなければならない」と強調した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(47)『「不況は供給力不足のため」という新説』

  • ☆東ト協 事故防止に向けた活動として警視庁と協定締結、交通安全キャンペーンを展開「いっしょに安全!」
    ☆全ト協 第47回全国トラックドライバーコンテスト表彰式開催、日通グループが3部門で優勝
    ☆ヤマト運輸・ヤマト運輸労組 第5回ヤマト運輸全国大会開催、関西支社が総合優勝、女性ドライバー部門新設も
    ☆日通 メキシコ向け航空混載サービスをバージョンアップ、グアダラハラ向け輸送を充実
    ☆千葉適正化実施機関 評議委員会を開催、巡回指導等適正化事業のAB評価大幅増加、着実な指導効果
    ☆ヤマト運輸・YHC 島根県と移住・定住支援・地域活性化など「包括的業務提携協定」締結
    ☆日通東京輸送協組 第44回通常総会開催、組合員相互の協力体制が重要
    ☆佐川急便 「スマート納品24」発売、深夜・早朝納品など24時間納品に特化
    ☆日通商事 フレーム伸縮装置を装備したエクステンダブルセミトーラを東京モーターショーに出展
    ☆日立物流 スマートロジスティクスを加速、無人搬送ピッキング等の新技術の標準装備進める
    ☆ヤマトHD 第2四半期決算、メール便廃止の影響で想定上回る減少に
    ☆SGHD 中期経営計画目標達成に向け「王手」
    ☆日通 ワンビジアーカイブスを子会社化へ
    ☆YAW 設備管理サービスの一環として物流設備フロン点検サービス提供、順次個別サービス発売予定
    ☆自工会 東京モーターショー開幕
    ☆丸運 市原社長が決算内容にコメント「今後は収益増大を」

今週のユソー編集室

  • ▼日本気象協会は現在、「天気予報で物流を変える」取り組みを行っている。食品業界を対象に天気予報から高精度の需要予測を行い、在庫圧縮や返品等で不要に発生するCO2の排出削減を目指す内容だ。
    ▼経済産業省の補助事業でもあるこの取り組みには、メーカー・卸売・小売など25社・団体が参加している。取り組み初年度となる昨年度は「冷やし中華つゆ」と「豆腐」に的を絞り、不要CO2排出量の削減が実現できたという。
    ▼2年目になる本年度は、対象地域や商品を拡大するとともに、人工知能技術等を利用した需要予測の精度向上に取り組んでいる。ちなみに「冷やし中華つゆ」では昨年の成果をもとに生産量を調整した結果、この夏2割の在庫圧縮を実現したそうだ。
    ▼こうした高精度な重要予測の提供は、効率的な輸送を行いたい物流事業者にとっても、ありがたいに違いない。予測精度のさらなる向上と、一刻も早い社会全体への普及促進を望みたい。

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