物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2015年9月28日付 2580号

首都圏の高速料金案でパブコメ募集-ETC2.0で新割引、大口・多頻度は継続  高速各社

 首都高速・東日本高速・中日本高速等は18日、首都高速の大口・多頻度割引を当面継続することや首都圏の高速道路で発着地が同一ならば経路に関わらず料金を統一することなどを盛り込んだ「首都圏の新たな高速道路料金の具体案」を公表。30日までパブリックコメントを募集している。来年4月からの首都圏での高速料金制度についての案をまとめたもので、「料金体系の整理・統一」と「起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現」を柱としている。

 料金体系に関しては、圏央道の内側について、首都高速や圏央道、第三京浜など、これまで異なっていた料金水準を高速道路の大都市近郊区間水準に統一。また、発着地が同一ならば経路によらず最短経路での料金を基本とする。これにより、渋滞の激しい都心部などから周辺の外環道・圏央道などへの誘導を図り、交通流の適正化を図る。なお、現在均一料金となっている首都高速や中央道・外環道の一部区間については、物流への影響などを配慮して上限料金を設定するとしている。また、第三京浜など現在料金水準が低い区間については、高速道路の普通区間料金を目安に水準を設定する。

 首都高速の大口・多頻度割引については、当面継続するとともに、中央環状線の内側を通過しない交通に対しては拡充を行う。さらに、圏央道については、「ETC2.0」を搭載した車両を対象に料金の引き下げや大口・多頻度割引の導入を行う。具体的には「ETC2.0」搭載車両について、料金水準を約2割引きとし、圏央道利用分を大口・多頻度割引の「割引対象一般有料道路」の範囲に加える。「ETC2.0」は従来のETCに比べ車載器価格が高いため、関係機関と調整の上、購入助成を行うことも検討するとしている。

 車種区分については、首都高速(2車種)、京葉道路(3車種)、その他(5車種)などで異なっていたが、5車種に整理・統一する。これにより、現在普通車の2倍となっている首都高速の大型車料金は1.65倍と差が縮まるが、特大車では2.75倍(2020年までは2.14倍)に広がる。

インドの貨物鉄道運営支援プロジェクトを受託、初の主体的海外案件参画に  JR貨物

 JR貨物(田村修二社長)はこのほど、日本工営と共同で、JICA(独立行政法人国際協力機構)が公示した「インド国貨物専用鉄道運営・維持管理支援プロジェクト」事業を受託した。同社は鉄道貨物輸送に関するノウハウを積極的に海外に輸出することを目的に、2014年1月に専門部署として「海外事業室」を設立。調査・コンサルティング・研修等の業務について部分的な受託を行ってきたが、主体となって海外技術移転プロジェクトに参画するのは、これが初のケースとしている。

 インドは現在、国内を縦横断する貨物専用鉄道(DFC=Dedicated Freight Corridor)として、デリー~ムンバイ間を結び主に海上コンテナ貨物を取り扱う「西回廊」と、ルディアナ~ソンナガール間を結び主に石炭を輸送する「東回廊」の2路線の建設を進めており、両路線は18年に部分開業を予定している。

 このうち西回廊は、日印共同プロジェクトである「デリー~ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)」の中核的な物流インフラと位置付けられ、日本政府の円借款支援としてJICAが事業を展開、軌道工事や信号設備工事等は日本企業が受注している。DFCの運営については、インド政府によって設立された「DFCCIL(Dedicated Freight Corridor Corporation India Limited)」が行うが、JICAはDFCCILとの間でDFCの効率的な運営・維持管理・貨物輸送能力向上を実現するため、新たに技術協力プロジェクトとして、日本の技術・ノウハウに基づく支援と技術移転を実施することで合意し、コンサルタントを選定するための公示を実施。JR貨物はインドでの鉄道コンサルティング経験が豊富な日本工営と共同でこれに応募し、受託したもの。

 プロジェクトで実施される支援・技術移転業務の内容は、次の7項目。
 ①DFCCILの事業計画へのアドバイス
 ②DFCCILの組織および業務運営体制(要員体制)へのアドバイス
 ③DFCCILの設備維持管理計画へのアドバイス
 ④貨物駅、接続駅における駅業務の効率化についてのアドバイス
 ⑤コールドチェーン、サプライチェーンマネジメントに鉄道貨物輸送を対応させるための設備や制度の整備についてのアドバイス
 ⑥鉄道貨物輸送の管理と利便性向上のためのITシステム導入についてのアドバイス
 ⑦日本の技術・ノウハウの移転を行うための日本国内研修の実施

 プロジェクト実施期間は15年9月から約1年間。このほか世界銀行から融資を受けて行われるDFCの東回廊についても、一定の支援を行っていく。

 田村社長は今回のインドのプロジェクト受託について「インド以外にも東南アジア諸国から貨物鉄道に関するさまざまな話がきている。このインドのプロジェクトを契機に、海外とのかかわりをもっと増やしていきたい」と語った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(44)『個人消費低迷の要因』
    ☆ウオッチ『天津危険化学品倉庫爆発事故を考える』
    ☆日中ビジネスワンポイント『中国の青島・曲阜・泰山の旅』(2)

  • ☆ヤマト運輸が総務省に意見提出、郵政政策部会の答申案に反対の見解示す
    ☆セイノーHD、インドネシア・サリムグループと合弁会社2社設立
    ☆交通労連が定期大会、組織拡大さらに注力
    ☆三井倉庫HD、埼玉・加須にヘルスケア専用施設竣工
    ☆国交省、SAS・脳疾患等対象としたスクリーニング検査普及へ協議会設置
    ☆日通の8月国際事業実績、海外会社全地域で増収し米州・東アジアは2桁の増加に
    ☆濱関運局長が会見、10年迎えた物流効率化法は一定のニーズある
    ☆センコー、タイ・レムチャバン物流センター開設
    ☆カンダ、20年目迎えた小集団活動「ダッシュ21」開催し小山協同センターが最優秀賞獲得
    ☆物流連、大規模建築物対象とした荷捌施設設計方法等の提言を国交省・羽尾物流審に提出
    ☆試験センター、第1回運管試験で貨物の合格率が大幅に低下
    ☆交運労協、新生・議員懇談会を設立
    ☆トナミ労組が定期大会、沖田副委員長を新任
    ☆JR貨物、不動産関連3社を統合
    ☆東京都、高齢者への悪質商法の注意喚起でヤマト運輸などが協力
    ☆日本水産、来春竣工予定の汎用型冷蔵倉庫・大阪舞洲物流センターの施設概要を発表
    ☆日通総研、倉庫作業分析ツール「ろじたん」記念セミナー開催
    ☆三菱倉庫、飛島配送センターの増築部分が竣工
    ☆JR貨物・田村社長がORS問題でコメント、収支改善を強調
    ☆日通総研、15年度見通し改訂版で総輸送量0.2%減に

今週のユソー編集室

  • ▼総務省の情報通信審議会政策部会はこのほど「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」の答申案をまとめた。
    ▼内容を簡単にまとめると「ユニバーサルサービスの提供を義務付けられている日本郵便は、現状約2割の郵便局の黒字で、約8割の郵便局の赤字をカバーしている。人口減少など将来を考えると、ユニバーサルサービスの確保に向けて、国の支援を検討する必要がある」となる。
    ▼答申案はご丁寧にも1873億円というユニバーサルコストの試算額まで記載している。これは「赤字郵便局を廃止できた場合に節約できたであろう費用のこと」だという。このうちどの程度の額を支援すべきかについては触れていない。
    ▼現状黒字の企業に国が支援する理由が「将来的な不安」というのでは根拠が薄弱ではないだろうか。ユニバーサルサービスの提供で得られる利益が考慮されていないのも、不可解に思えるのだ。

戻る