国交省自動車局長に行政処分基準の弾力的運用など労働時間規制のあり方で要望 全ト協
関越自動車道でのバス事故を契機に行政処分基準等が改正され、著しい乗務時間違反の場合、「事業停止30日」となるなど処分が強化されたことで長距離輸送事業者等では大きな問題となっているが、全日本トラック協会(星野良三会長)は9日、国土交通省の藤井直樹自動車局長に対し「労働時間規制の在り方について」要望した。
長距離輸送の実態調査から、荷主からの厳しい時間指定等により、労働関係法令への対応に苦慮する事業者がいることが明らかとなったため、行政処分基準の弾力的運用等行政における各種基準の見直しや契約書面化のさらなる推進、長時間労働抑制への取り組みなどを求めた。同日、大髙一夫副会長らが国土交通省を訪れ、宮城直樹大臣官房審議官に要望書を提出した。
全ト協では長距離輸送事業者が労働関係法令を適切に遵守できるよう、労働時間規制のあり方や労働力確保対策などの労働政策について検討することを目的に、物流政策委員会の下に「労働政策小委員会」を設置して実態調査を行い、その結果を踏まえ要望をまとめた。
要望事項はまず、「行政における各種基準の見直し」として、急な輸送条件の変更、荷主都合の手待ち時間や契約にない等附帯作業による遅延、渋滞・悪天候などの外的要因により、やむを得ず「貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」を遵守できないケースもあるとして、こうした場合には弾力的に行政処分基準の運用を図るよう求めた。
また一運行144時間以内とされている期間の制限について、出先で休日をとり十分な休息がとれることから、休日に当たる部分の時間数を差し引いて144時間以内とするよう見直しを要望。さらに中継輸送は労働時間短縮や不規則な就業形態の解消などさまざまなメリットがあるとして、中小企業においてもその導入が促進されるよう制度面を含め環境整備を図るよう求めた。
一方、「契約の書面化の更なる推進」として、国土交通・厚生労働・経済産業省等関係行政機関が一体となって、適正な運送条件の設定に向け、さらなる書面化の推進を図り、実効性のあるものとするため、荷主・元請け事業者に対し積極的に指導を行うよう要望。また「長時間労働抑制への取り組み」として、取引環境・労働時間改善協議会の取り組みの実効性をあげるよう、特段の指導方とともに、積極的な荷主勧告制度の発動など荷主に対する監督指導の徹底などを求めた。その上で、トラック運送事業者の自助努力だけでは長時間労働改善が困難な場合には、悪質・重大な乗務時間等告示の遵守違反に係る30日間の事業停止処分の発動要件を緩和することについて検討するよう求めた。
このほか関連する要望事項として①高速道路料金の引き下げ、割引制度の拡充②高速道路のサービス・パーキングエリアや道の駅等における大型車の駐車スペースの整備・拡充③フェリーの便数増加、利用枠の拡大-を求めた。