物流の労働力不足踏まえ新規項目盛り込む 国交省の2016年度予算概算要求
国土交通省が27日に示した2016年度予算概算要求・税制改正要望では、物流審議官部門を中心にトラックドライバー不足などを踏まえた新規項目が複数盛り込まれている。国交省の16年度予算概算要求の一般会計総額は15年度当初予算比15%増の6兆6791億円。
物流審議官部門では、一般会計のほか、モーダルシフトの促進に向け、エネルギー対策特別会計(エネ特)を活用して31フィートコンテナ・大型荷役機械への導入支援(補助率2分の1)を継続するほか、15年度予算で作成を進めている40フィート背高海上コンテナ対応低床貨車の走行実証実験を16年度に実施する。また、新たに都市をはじめとする旅客鉄道を活用した貨物輸送についても補助を行うこととし、エネ特で「都市鉄道等の旅客鉄道を利用した新たな物流システム構築に係る導入経費補助」を要求している。
これは、現在京都府内で京福電鉄とヤマト運輸が行っている旅客車両による貨物運送の取り組みを大都市を含めた他の地域にも広げることなどが狙いで、道路渋滞の激しい大都市圏での旅客回送列車への貨物積載などを想定している。垂直式・階段式搬送機や牽引車、フォークリフト、荷物用車両を補助対象とし、補助率は3分の1。
一般会計では、これまでのモーダルシフトや共同輸配送に関する運行経費に加え、事業計画の策定経費も補助対象とし5800万円(15年度予算額は3800万円)を要求している。対象となるのは、モーダルシフトなどの大量輸送機関への転換やトラックの幹線輸送・地域内集配共同化などの輸送効率化、コンテナのラウンドユースなど。省力化対策では、新規で「円滑で効率的な物流を考慮した建築物の設計・運用の促進方策の検討」と「物流高度人材の育成方策の検討」を盛り込んだ。
物流を考慮した建築物のあり方については、日本物流団体連合会の提言などを踏まえ、天井の高さや駐車スペースの不足、動線の段差など円滑な物流を阻害する大規模商業施設などの建築物について、実態を把握するとともに、建築主や建築士などの関係者に物流を考慮した設計・運用を促すためのガイドラインの策定に向けた検討を行う。
物流高度人材の育成については、アジア諸国でわが国物流企業が欧米企業との競争力を高めるため、提案力強化などに向けたニーズの把握やモデルカリキュラム作成に向けた検討を行う。
物流施設のグリーン化では、これまでの営業倉庫・公共トラックターミナルへの省エネ設備導入と冷凍冷蔵倉庫への省エネ型自然冷媒機器導入に加え、新たに来年度発売予定の燃料電池フォークリフト導入なども補助対象とする。燃料電池フォークリフトに対する補助率はエンジン車との差額の3分の1。
鉄道局関係では、青函トンネルの貨物列車共用走行区間の調査関連で15年度予算比7倍超の20億7千万円を要求している。これは、新幹線の旅客営業列車が走行する前に線路上に落下物がないかを確認する車両や貨物列車の進入を防ぐ信号装置の開発などに充てられる計画。
税制でも特例措置創設要望
物流審議官部門では、税制改正でもトラックドライバーをはじめとした物流分野での労働力不足に対応した新たな特例措置の創設などを要望している。新規要望となった「新たな物流効率化のための計画に基づき取得した事業用資産に係る特例措置の創設等」では、物流事業者が物流総合効率化法の認定を受け取得した事業用資産などについて、一定の条件を満たすものに税制特例を設けることを求めている。
このうち、「輸送と保管の連携が図られた倉庫の整備促進」では、トラック営業所などの輸送拠点と倉庫の併設やトラック予約システム導入など、ドライバーの手待ち時間削減などにつながるものについて①所得税・法人税の割増償却5年間10%②倉庫の固定資産税・都市計画税の課税標準5年間2分の1③トラック予約システムなどの付属設備の固定資産税の課税標準5年間4分の3―とすることを要望。
また、概算要求にも盛り込んだ都市などの旅客鉄道を利用した貨物輸送についても、貨物用鉄道車両・貨物搬送装置に関する固定資産税課税標準5年間5分の3とすることも求めた。さらに、モーダルシフト促進に向けトップリフターの固定資産税の課税標準5年間5分の3も要望している。