長時間労働の是正へ、トラックの取引環境・労働時間改善の地方協議会がまずは東京・新潟で発足 国交省
トラックの取引環境・労働時間改善に向けた具体的協議スタート―。
国土交通省は、トラック輸送での手待ち時間解消など取引環境・労働時間改善に向けた協議会を今月から来月にかけて各都道府県に設置し、検討を本格化させる構えだが、その先陣を切って14日、東京都と新潟県で第1回会合が開かれた。協議会は、5月に本省で中央協議会が設置されたことを受け、各地域の実態に即した取引環境・労働時間改善に向けた調査・検討などを行うために都道府県単位で設置されるもので、今月中に多くの都道府県で第1回会合が開かれる。
14日に東京都新宿区の東京貨物運送健康保険組合会館で第1回会合が開かれた東京地方協議会は、本省や他の道府県同様に昨年度まで開催していたトラック輸送適正取引パートナーシップ会議を改組する形で発足。パートナーシップ会議時代から委員だったトラック事業者(団体)、荷主企業(団体)、労働組合などの代表者に、東京労働局長ら労働行政担当官も加わり、中小企業での月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%の猶予が切れる直前の2018年度まで4年間にわたり調査・検討や実証実験、ガイドラインの策定・普及などの取り組みを行う。第1回会合では、協議会運営や労働基準法の一部改正法案の説明などに加え、9月に実施予定のアンケート実施内容案について審議。
アンケートは、トラックでの長時間労働の実態を把握するため、各都道府県各100人のドライバーを対象に1週間の労働時間や作業内容などを調査する方針が中央協議会で示されたが、東京都はトラックの稼働台数が多いことなどを踏まえ、対象を150人とする案が示され承認された。また、東京労働局からは、昨年管内で道路貨物運送業216事業場を監督指導したところ、83.8%で法令違反が認められたことが報告され、「道路貨物運送業は、交通事情や荷主および配送先の事情により運行が左右されるため、総じて自動車運転者の長時間労働が常態化する傾向にあり、過労死・過労自殺など過重労働に起因する労働災害も少なくない」との分析が示された。
こうした説明に対し委員からは、
「国内貨物輸送量は減っているが、季節などによる波動が大きく、期末などにはトラックのドライバー不足が顕著になる。労働力人口の減少などにより、ドライバー不足の深刻化が叫ばれるが、このままでは給与が低く労働時間が長いトラック産業には人が入ってこない。手待ち時間の解消など荷主の理解で改善できることがある」(米田易憲東京都交通運輸産業労働組合協議会議長)
「われわれトラック事業者は、社会インフラとしての役割を担っているが、輸送契約については商取引ということで行政は介入できない。公共輸送機関として育てるならば、労働時間短縮などに向けた荷主との協議に行政の後押しは必要。このままの状況が続けば、今後の東京の輸送がどうなるのか自信が持てない」(天野智義天野運送代表取締役)
「ドライバー不足に直面しているが、作業員の確保にも苦労しており、工場内のロジスティクスを減らす努力もしている」(髙橋哲也キリングループロジスティクス東日本支社営業部長)
「全サプライヤーにウェブ上で納期確定を行う仕組みを提供し、事前の納期調整を行うことで、待機時間の短縮を図っている」(池田和幸アスクルECR本部統括部長)
「トラックドライバーは長時間労働だが、時間外手当がなければ家族を養えない実態にある。労働時間を減らすには、まず実質賃金を上げる必要がある」(早乙女湯一連合東京副事務局長)
「トラックの手待ち時間解消に向けた活動を10年前から行っており、現在も『プラスマイナス15分』をKPIの目標として掲げ取り組んでいる」(久野雅人ブリヂストン物流取締役)
などの意見が出された。