バスによる宅急便輸送、岩手県盛岡~宮古間で貨客混載がスタート ヤマト運輸・岩手県北自動車

バスで宅急便を運ぶ「ヒトものバス」発車―。
ヤマト運輸(長尾裕社長)は3日、岩手県北自動車が岩手県盛岡市・宮古市間で運行する都市間路線バス「106急行バス」を活用して宅急便輸送を行う「貨客混載」を開始。過疎化により集配のさらなる効率化が求められる物流事業者と乗客の減少に悩むバス事業者が手を組んだ公共交通ネットワーク維持に向けた取り組みとして全国の関係者が注目する中、「ヒトものバス」と名付けられた専用バスが発車した。
3日に盛岡駅前で開かれた出発式でヤマト運輸の長尾社長は、中山間地域では高齢化や過疎化が進み、生活を支える公共交通ネットワークの維持がより重要性を増しているとの考えを示した上で、物流事業者とバス事業者は生活インフラとしていかに生産性を高めるかが共通の課題になっていると強調。これまでトラックで輸送していた宅急便の一部を岩手県北バスに乗せ換えることで、長期的なネットワーク維持や生産性向上、CO2削減などにつなげていきたいとした。
また、ヤマト運輸では「一番身近で一番愛される企業」を目指し、全国約4千ヵ所の宅急便センターで地域に根差したサービスを展開しており、高齢者の見守りサービスなどを行う「プロジェクトG」を推進していると説明。岩手県内でも、高齢者の見守りや買い物支援などを行う「まごころ宅急便」を展開しているが、バスを活用した貨客混載によって地域住民が今後も安心して暮らしてもらえるよう、岩手県北自動車と取り組んでいきたいと述べた。
岩手県北自動車の松本順社長は、昨年ヤマト運輸側から貨客混載の打診があったことを明らかにした上で、木川眞ヤマトホールディングス前社長が「互いに妥協しても地域の社会インフラのため実現しよう」と力強く語った逸話を披露。結果的に「できることを広げ、できないことを狭めた」ことで人と宅急便の融合というユニークな取り組みが実現したと語った。また、座席を取り外して専用の荷物スペースを設ける本格的な貨客混載バスは、「私の知る限り本邦初」とし、「市民の方がこのバスを見たときにヤマト運輸と岩手県北自動車の取り組みを思い出してもらえれば幸い」と述べた。さらに、貨客混載バスは地方創生モデルとしても重要であるとし、「乗客と荷物を運ぶことに誇りを持って臨みたい」と抱負を示した。
今後各地に波及の可能性大
「ヒトものバス」は、高速バスや貸し切りバスなどに用いられる全長12メートルクラスの大型バスの後部座席3列分相当を荷台スペースとして改造。運転席側に観音開きの専用扉があり、ここから荷物の積込などを行うことができる。当面は専用ボックスによる輸送を行うが、パレットを用いた輸送にも対応する。旅客スペースは、通路を挟んで2人掛け座席が左右に並び8列で座席定員32人。
バスは盛岡駅から国道106号を走る「106急行バス」として旅客の営業運行を行うが、その前にヤマト運輸の盛岡西営業所で北上市の物流ターミナルからトラックで運ばれた宮古市内の重茂(おもえ)半島向け貨物を積み込む。94キロメートルを2時間15分かけて宮古駅まで旅客営業を行った後、ヤマト運輸の宮古営業所に向かい貨物を重茂半島行きの路線バスに乗せ換える。宮古営業所から約18キロメートル離れた重茂半島まで路線バスで貨客混載を行った後、岩手県北自動車の重茂車庫でヤマト運輸のSDに宅急便貨物を引き渡す。盛岡西営業所から重茂半島までは、100キロメートルを超える貨客混載が行われ、バスとトラックそれぞれに輸送を行う場合に比べ、路線バスの生産性と物流の効率が大きく向上するほか、CO2削減にも寄与する。
ヤマト運輸では今後の展開について、「まごころ宅急便」と貨客混載を組み合わせたサービスの開発を検討しており、高齢化や過疎化が進む中山間地域などにおける課題解決と地域活性化に取り組んでいくとしている。また、岩手県北自動車を擁する「みちのりホールディングス」は、福島県・栃木県・茨城県でもグループ会社がバス運行などを行っているが、ホールディングスの社長も兼務する岩手県北自動車の松本社長は、他地域でもヤマト運輸と組んで貨客混載を行う方針を出発式で語っており、こうした取り組みが今後各地で行われる可能性が高い。