物流政策立案に向けて三つの小委員会を設置 社整審・交政審
社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会と交通政策審議会交通体系分科会物流部会は、物流の課題点や対応策などに関する具体的な検討を行うため、物流に関する小委員会を設置。5月29日に東京都千代田区の国土交通省で第1回合同会議を開き、荷主・物流関係者からモーダルシフトやトラック効率化などに関するヒアリングを行った。この中で、荷主としてプレゼンテーションを行ったイオングローバルSCM事業本部の坪井康彦運営管理部部長は、メーカーなど異業種との取り組みにより鉄道貨物でのコンテナ輸送が6年間で15倍に増えたことを明らかにした。
社整審と交政審は、太田昭宏国土交通大臣から今後の物流政策の基本的な方向性に関する諮問を受けたことを踏まえ、交政審に「物流部会」を設置、4月30日に社整審道路分科会基本政策部会と第1回合同会議を開いて、「ワンステージ上」の検討をスタートさせた。
小委員会は、今後の物流政策の基本的方向性に関するより具体的な検討を行うため設置されたもので、社整審道路分科会基本政策部会に「物流小委員会」、交整審交通体系分科会物流部会に「物流体系小委員会」と「物流サービス小委員会」が置かれた。「物流体系小委員会」は、中期的な物流政策、広域物流、災害対応、新技術などを扱い、「物流サービス小委員会」では、地域物流を中心に検討を行う。「物流小委員会」は、「物流体系小委員会」と「物流サービス小委員会」と合同で、全てのテーマを扱う。
5月29日に開かれた会議は、「物流小委員会」と「物流体系小委員会」の合同開催で、両小委員会とも根本敏則一橋大大学院教授が座長を務めた。
会議の冒頭、国交省の羽尾一郎物流審議官は、4月の合同会議では、モード間の連携やデータに基づく政策立案、民間の協調体制構築など幅広い意見が出たことを説明した上で、「物流を取り巻く状況が大きく変動する中、物流の公共性・社会性を認識しながら、物流政策の立案を行う必要性を感じた」とし、小委員会では専門的・集中的な議論が行われることを期待したいと述べた。
あいさつの後、トヨタ自動車の熊沢洋一生産部品物流部長、イオングローバルSCMの坪井部長、井本商運の葛西直樹営業部営業課長、味の素の魚住和宏物流企画部専任部長、全国物流ネットワーク協会(全流協)の山内信幸専務理事がプレゼンテーションを行った。
熊沢部長は、名古屋・岩手間での31コンテナを活用した鉄道貨物輸送の例を紹介。2006年に船舶から鉄道に切り替え、現在では、リードタイムと環境面で船舶に比べ優位にある鉄道貨物輸送が同区間全体の約6割の輸送を担っていることなどを説明し、平時の定時性の高さや荷傷みの少ない輸送品質の高さを評価した。一方で、異常発生時などのリスク対応や量変動への柔軟な対応、31コンテナ取扱駅の拡大などの課題があると指摘した。
イオングローバルSCMの坪井部長は、イオン単独でモーダルシフトを行っていた08年度には12フィートコンテナ換算で2400個だった鉄道貨物輸送が、メーカーとのラウンド輸送などの取り組みにより12年度以降大幅に増加し、昨年度は3万6694個となったことを報告。定期的に「イオン鉄道輸送研究会」を開催してメーカーを交えた鉄道貨物輸送拡大に向けた検討などを行うことで、共同専用列車の運行や31フィートコンテナの往復利用につなげているとし、企業間連携が鉄道貨物輸送拡大の“カギ”となることを強調した。
ISO海コンの標準化急務
井本商運の葛西部長は、同社が国際コンテナを国内各港間で輸送する内航フィーダーの56%を担っていることを紹介した上で、今後は国内コンテナを取り込んでいく戦略を掲げていることを説明。国際コンテナに使用されるISO規格コンテナを活用した「海コン便」サービスの展開を計画しているが、国内物流ではISO規格が標準化されていないことや京浜港での外貿コンテナ優先着岸による内航船の沖待ちなどの課題があると指摘し、改善を求めた。
味の素の魚住専任部長は、東日本大震災を契機に進めている船舶へのモーダルシフトについて、工場の最寄りの川崎港から関西までの輸送で、集荷時間の繰り上げなどにより、鉄道・トラックと変わらない到着時間を実現したことなどを紹介するとともに、船舶輸送に関する荷主へのPR不足や船員不足などの課題があると指摘した。
全流協の山内専務理事は、トラックの効率化について、エコアライアンスによる2社提携モデルやジャパン・トランズ・ラインによる3社提携モデルなどについて紹介。労働力不足が深刻化する中、片荷を解消して往復実車輸送とするニーズは今後も増加するとみられ、ITなどを活用しマッチングを進める必要があるとした。