物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2015年5月18日付 2564号

コンテナラウンドユース推進へ 経産省が報告書公表

 経済産業省は12日、「コンテナラウンドユース推進に関する報告書」を公表した。輸入で使用した海上コンテナから貨物を降ろした後、空の海上コンテナを港に返却することなく輸出に使用したり、インランドデポ等活用し国内輸送で使用するコンテナラウンドユース(CRU)の取り組みを推進するため、CRUの規模拡大や効率的運用方法の普及などに向け、情報発信の強化やマッチング率向上への新たな手法の検討、さらに将来的に全国的な組織体制の構築を目指すことなどの方策を提案している。同報告書は昨年11月に設置した「コンテナラウンドユース推進協議会設立準備委員会」(委員長=増井忠幸東京都市大学名誉教授)がまとめたもの。

 輸出入における海上コンテナの陸上輸送では空コンテナ輸送で非効率な状況が生じているが、CRU推進により空コンテナの無駄な輸送をなくすことができる。CO2排出量削減や輸送の効率化・コストの削減、港湾周辺での渋滞緩和さらにトラックドライバー不足への対応などの効果があり、荷主、輸送事業者、自治体等でさまざまな取り組みが行われている。

 報告書ではCRUの取り組み推進に当たっての課題を抽出し、CRUの規模拡大、効率的運用方法の普及、既存施設・設備の活用および整備といった解決方策の方向性を整理。その上で、取り組みを推進していくための方策を次のとおり(概要)提案している。
 ①CRU周知のための催事開催や自治体との連携、2013年に作成された『コンテナラウンドユース推進の手引き』の改訂など「情報発信の強化」
 ②NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)の活用、輸出入・空コンテナを車両とマッチングできるシステムの開発支援などマッチンング機会を増やすための「情報共有手段の向上」
 ③海上コンテナの国内貨物輸送への利用推進等「マッチング率向上に向けた新たな手法の検討」
 ④CRU取り組み拡大にはコンテナの保管・補修機能や洗浄設備を持つICD(インランドコンテナデポ)の活用が重要であり、ICDに関する情報集約と提供、さらにICDの設備整備等といった「ICD情報の集約、機能充実」

 そしてCRUの取り組み拡大に向けた支援・推進として、新規に取り組みを行う事業者向けのガイドライン(仮称)策定、負担軽減のための実施に当たっての取り決め事項のモデル作成などを挙げている。さらに輸出・輸入企業がともに複数によるCRU実施の仕組みづくりに向けた検討の積極的推進とともに、将来的に全国的な組織体制構築を目指すべきと提案している。

関東運輸を子会社化し低温物流に本格参入  セイノーホールディングス

 セイノーホールディングスの田口義隆社長は、13日に名古屋市内で行った決算会見で、低温物流を手掛ける関東運輸(本社・前橋市)を子会社化し、セイノーグループとして今後伸長が見込まれる低温物流に本格参入する方針を説明。今後は、関東運輸のノウハウを全国展開し、3~5年後までに低温物流の取り扱いを3倍程度まで拡大するビジョンを示した。

 関東運輸は、北関東地域を中心にチルド輸送を手掛け、全国へのチルド配送に対応するネットワークを持つ。2014年3月期の売上高は203億3500万円。セイノーホールディングスは、投資事業有限責任組合との折半出資による投資目的会社を通じて、関東運輸の全株式を取得することを13日に開いた取締役会で決め、同日付で株式譲渡契約を締結した。投資事業有限責任組合は、日本政策投資銀行を単独の有限責任組合員とし、刈田・アンドカンパニーなどが運営。今後、事業の進捗(しんちょく)や成長性などを勘案した上で、関東運輸を100%子会社化する可能性もあるとしている。

 セイノーグループでは、昨年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「JUMP UP 70」の達成に向けた取り組みをグループ全体で進めているが、低温物流への参入でセイノーホールディングスが掲げる「第2次総合物流商社」の実現に向けた新たな機能が加わり、輸送サービスの高度化や業績の拡大、企業価値の向上につながると判断した。

 また、説明会で田口社長は、2015年3月期の1株当たり年間配当を10円増配の21円とすることを説明するとともに、16年3月期以降は中間配当を実施すると発表した。この理由について田口社長は、これまでは輸送オペレーション高度化に注力してきたが、ある程度目途がついてきたため、今後は、長期保有の株主への還元を主眼に、配当性向30%を目安として配当を行っていく資本政策に踏み切ったとした。

 同社はこれまで、期末に年間11円の配当を行ってきたが、16年3月期では中間配当11円を予想。業績をみながら、期末および年間配当を確定することとし、17年3月期以降も11円を年間配当の「下限」として、配当性向30%を目途とした配当を実施する方針も明らかにしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウオッチ『中国通関制度改革の動向~「区域通関一体化」による抜本的効率化に向けて~』
    ☆四文字『戦後の混乱「配給制度」』

  • ☆日通、自社一貫輸送でメキシコ中央高原向けのダイレクト海上混載開始
    ☆日立物流・中谷社長が会見、新規3PLセンター立ち上げコストはプロジェクト・マネジメント推進本部で管理
    ☆トナミHD・綿貫社長が会見、新中計目標達成へB3PL事業を改革
    ☆東京納品代行、ファッション物流に特化したセンターを成田に開設
    ☆日通、冷蔵・定温の医薬品国際航空輸送商品を新発売
    ☆WebKITの4月成約運賃指数は4月としては過去最高に
    ☆佐川急便、宅配の受領時に「電子サイン」導入
    ☆三井倉庫HDが中計「MOVE2015」発表、売上高2800億円目指す
    ☆三井倉庫HD、アパレル関連物流を展開するデンマーク企業の香港法人を買収
    ☆丸運・市原社長が会見、利益率3%など目指し今期中に中計策定
    ☆全流協が定時総会、災害ロジ体制推進など五つの課題に注力
    ☆SBSゼンツウが第3回生活物流部ドラコン開催、優勝は矢嶋選手(松戸営業所)
    ☆SBSロジコム、二子玉川ライズ第2期エリアの館内物流業務を受託
    ☆山九、台湾の物流会社株式を取得
    ☆厚労省が14年の労災発生状況まとめる、陸運は荷役作業中の死亡災害が大幅増加
    ☆各社の15年3月期決算

今週のユソー編集室

  • ▼物流業をはじめ、労働集約産業の未来に暗い影を落としている労働力不足の問題。だがこの問題をてこにして、ほかのさまざまな問題が解決に向けて動き始めている。
    ▼例えば労働環境の改善や適正運賃収受、手待ち時間など商慣行の改善、荷役の効率化なども挙げられるだろう。国交省では宅配荷物の再配達削減に向けた検討会を立ち上げると言うが、これも労働力不足への対応が発端だ。
    ▼長い間なかば放置に近い状態にあった問題に光が当てられ、物流そのものが人手をあまり必要としない形に改められようとしている。こうした動きは間違いなく歓迎すべきことで、労働集約型の解消までは難しいだろうが、成果を期待したい。
    ▼先日DHLが発表したレポートでは、ITの進展による物流効率化で、今後10年間で世界的に220兆円の利益が生まれるという。金額の大きさはもちろん、省力化を期待する上でも、今後ITの重要性はさらに高まっていくだろう。

戻る